※本コラムは2023年6月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ピアラはダイレクトマーケティンを強みとするデータ可視化と事業戦略の柔軟な対応力で成長を続けてきました。
代表取締役の飛鳥貴雄氏へ、戦略の変遷や今後の成長戦略を教えていただきました。
株式会社ピアラを一言で言うと
ダイレクトマーケティングに特化したKPI保証型企業です。
創業の経緯
当社の創業は2004年で現在20期目になります。
創業前は外資系のインナーウェアメーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパンでマーケティングや通販の室長を担当していました。特に、通販事業の立ち上げから黒字化、そしてスケールまでに取り組んできました。
そしてこの経験から、当初はアパレル業界での独立を志向しました。ただ、在庫や店舗運営のリスクを考え、マーケティング専業の会社として立ち上げたのが当社の始まりです。
通販という領域は、売れるか売れないかという単純な結果で評価をいただける分野でもあります。
前職まででこの点に気づいていたこともあり、創業から10年ほどは“通販総合支援”としてダイレクトマーケティング領域に特化していきました。
そのためにはデータが非常に重要になりますので、データの分析を行いながらこれを核としてオフライン・オンライン、リアル・デジタル、そしてCRMという全方位でお客様育成の力をつけてきました。
戦略の変遷
その過程でよりデータの重要性に気づいた我々は、2016年から第2創業期に突入しました。
この時期には、マーケティングオートメーションツールを導入したデータ活用型のマーケティング、およびヘルスケア&ビューティ業界への特化を進めました。
当業界はデータの過去学習をマーケティングに活かすことができる、つまり効果の再現性が高いという特徴があったことが理由です。
また、この特性を活かしクライアントのKPIを保証する成果報酬型のビジネスモデルを確立し、2018年の東証マザーズ市場への上場を経てさらに事業を拡大させていきました。
しかし2020年以降、このヘルスケア&ビューティ業界のD to C領域が大きく変化しています。
特に、広告費の上昇や個人情報保護法の影響、そして景表法や薬機法に絡む表示規制の強化など、多くの課題が浮上しました。
つまり、クリック単価が上昇するだけでなく、効果効能を伝える術も限られ差別化が難しくなり、そもそもクリックをしていただくことさえ難しくなったのです。
中でも日用品やコスメなど比較的単価の安い商品を扱うヘルスケア&ビューティ業界では、このコスト上昇の影響が現れやすく、通販事業者は軒並み減収減益の状況となりました。
消費者の態度変容を促すには平均でも5回程度のアプローチが必要とされていますが、その全てにコストをかけていては採算が合いません。
そこで我々はPRや口コミ、インフルエンサーによる拡散など、お金をかけずとも情報が伝達していく伝える方法も含めたマーケティング全体の最適化を図ることを新たな戦略としました。
2021年から通販DXサービスとしてこれを展開し、ブランド価値創造企業としての転換を進めてきました。
事業内容について
このような事業環境の変革を受け、現在当社は「通販DX事業」「マーケティングDX事業」「自社事業」の3つに注力し、これらを通じてあらゆる業界における企業のマーケティング活動を支援しています。
第2創業期以降特化してきたヘルスケア&ビューティ業界におけるKPI保証サービスですが、2020年以降の外部環境の変化を受け、通販DXという新たな事業形態に移行しました。
これは、購買行動の「認知・喚起」から「興味・理解・醸成」、そして「比較検討・検索」までの全ての領域をカバーする一気通貫のマーケティングサービスです。
広告単価が上昇する中、TVCMやインフルエンサー企画タイアップ、記事広告など各領域におけるマーケティング施策のデータを相関分析し、その効果を可視化することでお客様のサービスや商品の売上に直接貢献することを目的としています。
また自社だけでなく他社の運営するデータも統合し、効果検証のPDCAサイクルを早めています。
この「ナレシェア」と呼ばれる取り組みは、新規顧客の獲得に貢献しています。
また、CRM領域でも購買データに限らない総合的な分析を軸としており、これらを大手事業者と比較して圧倒的な低コストで提供しています。
マーケティングDXサービスでは、創業来蓄積してきたデータ、および第2創業期以降のヘルスケア&ビューティ業界におけるコンサルティング力を活かし、同業界の店舗型企業、および異業種の企業に対してもマーケティング支援を行っています。
新たな市場としては、人材、金融、不動産、医療などが対象です。
これらの業界は高額商材を扱う分マーケティングの効果検証が荒い部分があり、これまでヘルスケア&ビューティ業界で細かなテストを重ねてきた我々の知見を大いに活かすことができます。
自社事業においては、マーケティング支援事業とのシナジー効果を見込んだ「エンタメDXサービス」、「P2C事業」および新規事業展開を進めています。
特にP2C事業は、第一弾の取り組みとして伊藤忠商事と業務提携をし、韓国コスメブランド「TONYMOLY」の国内展開をスタートさせております。
事業の強みと差別化ポイント
当社の強みは、特に創業期からの10年間ダイレクトマーケティングに従事してきたという点にあります。
全ての数字を可視化し、その結果までをトレースしてきたことが核となり、2020年以降の厳しい環境変化の中でも現在のように事業体を変化させられたと思います。
繰り返しになりますが、これにより企業はブランディングからLTV向上までを一気通貫で最適化することが可能になります。
また、結果の検証だけでなく事前分析にも相応の労力を割いています。
ある消費者の検索行動やSNS上の発言などをデータとして捉え、それを基にロジカルにマーケティング戦略を立てており、ここまで細かくそして網羅的にマーケティングの本質を支援する目線を持っているところは他にないと自負しております。
中長期の成長イメージとそのための施策
ブランド価値創造企業を目指し、マーケティング力という自社資産を活かした循環成長サイクルを戦略の柱としていきます。
現在の当社の強みである通販DX事業を強化しつつ、マーケティングDX事業では、通販DX事業で強化された各サービスを業界別にブラッシュアップし、さらに自社事業としてP2C事業を発展させることで高収益モデルを実現してまいります。
まず、通販DX事業では、”PIALA Intelligence”や”LINEマーケティングDX(PIALINE)”などのSaaSツールを積み上げで展開し、継続率の向上と当社が関わる施策の領域拡大による単価アップを図ってまいります。
全てのデータを我々に公開することに対するお客様側の心理的障壁は我々の課題となります。
一方、マーケティングの可視化に対するお客様のニーズは非常に高まっているため、まだ判明されていないマーケティングにおける相関関係の解明や正確な数値指標の確立を意識し、当社の提供価値を高めることで対策していきます。
次に、マーケティングDX事業では、先に申し上げたヘルスケア&ビューティ業界の店舗企業、そして不動産や金融、人材などの他業界に展開してまいります。
潜在的なターゲットとしては合計で約33万社超あり、既に昨年末から300%成長を遂げておりますがまだ拡大の余地は残されています。
我々がヘルスケア&ビューティ業界で培った精緻なマーケティングアプローチは、足元で業界ごとの学習を進めており、さらにその再現性を高めています。
加えて、自社もしくはM&Aによる他社メディアも活用し、通販DX事業にならぶ当社の二軸事業の一つとして成長させてまいります。
P2C事業は、2024年以降を投資回収フェーズと見込み、自社全体の収益性向上に貢献させてまいります。
また、企業の支援ではなく自社事業として取り組むことでマーケティング戦略のベストプラクティスを蓄積し、これを通販DXやマーケティングDX領域へ再び活用することで、冒頭で申し上げた循環成長サイクルを生み出してまいります。
さらに、このサイクルを人的資源の循環にも活用し、人材の成長を促すことで、人材と各事業の成長が相互に関係し合いながら実現されていく体制を一層強化してまいります。
投資家の皆様へメッセージ
現在のマーケティング業界では広告業の統廃合が進んでいます。このような中、大量の費用をかける広告手法ではなく、相関分析やデータの活用などより企業の本業に効果的なマーケティング手法に取り組む当社の価値は高まっています。
また、マーケティング業界は長期的に見ると厳しい状況に直面する可能性がありますが、同時に変革のチャンスも生まれやすいと考えています。
投資家の皆様には、当社のマーケティング力とこれを軸にした自社事業の成長に、ぜひご注目していただきたいと思います。
本社所在地:東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー 13F
設立:2004年3月24日
資本金:850百万円(2022年3月末時点)
上場市場:東証プライム (2018年12月11日上場)
証券コード:7044