- 劣後債のデメリットについて知りたい
- 劣後債の発行目的がわからない
- 劣後債の途中売却が可能か知りたい
劣後債は、一般的な社債と比べて高い利回りを期待できる一方で、いくつかのリスクにも注意する必要がある。
本記事では、劣後債のデメリットに焦点を当て、具体的なリスクや発行の目的、途中売却の可否について解説する。
劣後債の購入を検討している人は、ぜひ参考にしていただきたい。
また、劣後債だけでなく、一般的な債券のメリット・デメリットを知りたい方はこちらを参考にしてほしい。
劣後債の主なデメリット
劣後債に投資する際は、下記のデメリットについて理解しておきたい。
- 元本が割れるリスクがある
- 流動性が低い
- 元本や利息を受け取れない可能性がある
それぞれくわしく解説していこう。
元本が割れるリスクがある
劣後債は、発行体が破綻した際の弁済順位が普通の社債に比べて低い債券である。
万が一、発行体が破綻すると、企業側は手元にある資金をもとに弁済を行う。最も優先されるのは普通社債で、劣後債はその次となる。
株式よりは優先されるものの、普通社債への弁済を行った後の残余財産によっては、元本が戻ってこない、もしくは毀損して戻ってくる可能性がある。
「債券」と聞くと安全性が高いイメージを抱くかもしれないが、発行体が破綻したときのリスクについてはよく理解しておく必要がある。
流動性が低い
劣後債へ投資する際は、流動性リスクについても知っておこう。
劣後債は株式に比べて市場で出回る取引量が少なく、売却したいときに売却できない可能性がある。
また、売却ができたとしても低い価格での約定となることもあるため、譲渡損が出てしまうケースも想定される。
特に、市場環境や発行体の財務状況が悪化したときは、なかなか買い手がつかないケースも少なくない。
場合によっては、取引が成立しないこともあるため、途中で売却を検討している人は注意が必要だ。
利息を受け取れない可能性がある
劣後債は、通常の社債のように定期的に利払いが行われる。
ただし、発行体の財務状況が悪化したときなどは利払いが行われないリスクがあるため、あらかじめ留意しておきたい。
また、劣後債には繰上償還の条件が定められており、満期前に早期償還されるケースもある。
繰上償還後は当然利息を受け取ることができないので、本来満期まで受け取れる見込みだった利息よりも少なくなってしまうこととなる。
運用計画を立てる際は、予定通り利息を受け取れないケースがあることを理解しておこう。
デメリットがある劣後債はなぜ発行されるのか?
「これだけデメリットがあるのに、企業はなぜ劣後債を発行するのだろう」と感じる人もいるだろう。
企業が劣後債を発行するのには、主に次のような理由がある。
- 自己資本を増強するため
- 多様な資金調達を行うため
- 資本コストを抑えられるため
それぞれくわしく解説していこう。
自己資本を増強するため
企業が劣後債を発行する理由として、自己資本の増強が挙げられる。
劣後債は銀行などの金融機関が多く発行しているが、金融機関の劣後債については一定条件のもと自己資本に組み入れることが認められている。
自己資本の増強は株式の発行でも行えるものの、むやみに株式を発行することで株式の価値を損ねてしまいかねない。
そこで、劣後債を発行することによって、株式の価値を守りつつ、自己資本の増強ができるというわけである。
財務の安全性を保つことが求められる金融機関にとって、資本強化が行えるのは大きなメリットといえる。
多様な資金調達を行うため
企業の資金調達というと、一般的には金融機関からの借り入れや株式・普通社債の発行などが挙げられる。
そこに劣後債の発行という新たな選択肢を持つことで、資金調達の手段を多様化できるメリットがある。
たとえば、金融機関からの借り入れのみに資金調達を頼っていると、金利が上昇することによって借り入れコストが膨らんでしまうリスクがある。
しかし、金融機関からの借り入れの他に、普通社債や株式、劣後債の発行などあらゆる資金調達の手段を持つことで、金利動向の変化によるリスクを低減することができる。
また、資金調達の手段を1つに頼っていると、資金繰りが悪化したときに十分な金額を調達できないリスクもある。
その点、劣後債を含めて複数の資金調達手段を持っていると、さまざまな方向から資金を調達することが可能だ。
資本コストを抑えられるため
企業が資金調達を行う際は、それにかかるコストについても考慮する必要がある。
資金調達に成功しても、多くのコストがかかってしまっては効率が良いとはいえないためだ。
その点、劣後債は普通社債に比べて、長期の満期を設定することができ、短期的な借り入れを減らせるメリットがある。
これによって、一時的な借り入れにかかる金利コストを抑えることができる。
また、劣後債の金利は発行体の信用力に基づいて決定されるため、信用力が高い企業については低い金利で劣後債を発行できる可能性がある。
資金調達には株式の発行という選択肢もあるが、コストの観点から見ると、劣後債の方が資本コストを抑えやすいといえる。
劣後債のデメリットが大きいと感じたら途中売却は可能なのか?
劣後債へ投資する際に、満期まで保有するとなるとハードルが高く感じる人も多いだろう。
「途中で売却ができるなら投資してみてもいい」と考える人もいるかもしれない。
実際、劣後債は途中で売却することが可能だが、その際は次のような注意点を理解しておきたい。
- 市場価格で売却される
- 売却が成立しないことがある
- 事前に流動性を確認しておく
それぞれくわしく解説していこう。
市場価格で売却される
劣後債は満期よりも前に途中で売却することが可能だが、その際は市場価格で売却されることとなる。
そのため、マーケット環境によっては元本よりも低くなることもある。
市場価格が低くなる要因のひとつに、金利動向が挙げられる。
債券価格は金利と反比例の関係にあるため、もし購入時よりも金利が上がっていると、債券価格が下がる要因となる。
債券は満期時は原則元本がそのまま戻ってくるが、途中で売却する場合は譲渡損が出ることもあるため、あらかじめ留意しておこう。
ただし、反対に金利が下がっていれば、債券価格が上がっている可能性もある。
その場合は、途中で売却することで譲渡益を得ることも可能だ。
この通り、債券の市場価格は金利動向と深い関係にあるため、劣後債に投資する際は金利に関するニュースについても必ずチェックするようにしよう。
売却が成立しないことがある
劣後債は、途中で売却することが可能だ。しかし、中には売却が成立しないケースもある。
金融市場での取引は、「売りたい」、「買いたい」という需要と供給の一致によって取引が成り立つ。
そのため、「劣後債を売りたい」と思っても、買い手が見つからなければ売却することができない。
たとえば、「現在の金利情勢に比べて劣後債の利回りが低い」「発行体の財務状況が良くない」という場合には、なかなか買い手が見つからないケースもある。
あらかじめ途中で売却することを予定していると、運用計画に変更が生じてしまうこともあるだろう。
基本的には、満期まで保有することを前提に運用計画を立てることがおすすめだ。
事前に流動性を確認しておく
劣後債の途中売却は、流動性と深く関わりがある。途中売却による譲渡損を防ぐためには、事前に流動性についてよく調べておく必要がある。
劣後債の流動性は完全に把握することが難しいものの、債券の発行規模などではかることができる。
発行規模が大きい劣後債であれば、ある程度流動性は担保されるといえるだろう。
ただし、発行量が多くても、市場での需要が少なければ必ずしも流動性があるとは限らない。
あくまで目安のひとつとして捉えておくとよいだろう。
また、劣後債は一般の社債に比べてリスクが高いため、財務状況が悪い企業や知名度が低い企業は敬遠される傾向にある。
しかし、発行体の信用力や知名度が高い場合は、市場でも売却されやすい。
その他にも、過去に発行した劣後債の取引量や、格付けなどをもとに流動性について確認しておくことがおすすめだ。
デメリットだけではない!劣後債の主なメリット
いくつかのデメリットがある劣後債だが、投資には次のようなメリットもある。
- ・利回りが高い傾向にある
- ・外貨建ては為替差益も狙える
- ・投資対象の幅が広がる
それぞれくわしく解説していこう。
利回りが高い傾向にある
劣後債は、弁済順位が普通社債に劣る仕組みから、比較的利回りが高い傾向にある。
そのため、「債券に投資したいけど、利回り水準が物足りない」という人に向いている。
特に、円貨建ての債券は金融緩和の影響で未だ低金利環境にある。
マイナス金利政策の解除によって金利動向が上昇しているとはいえ、十分な利回りがあるとはいえない状況だ。
そのような環境下において、円貨建ての劣後債は、円建てで投資できる債券の中では比較的利回りを得やすい。
「為替リスクを避けながら利回りを得たい」という人にも向いているといえるだろう。
外貨建ては為替差益も狙える
劣後債の中には、米ドル建てやユーロ建てなど外貨建てで発行されるものもある。
外貨建ての劣後債は、満期もしくは途中売却時の為替レートが円安に進行していれば、為替差益を得られる可能性がある。
また、保有通貨を分散できるので、ポートフォリオで外貨建て資産を増やしたい人にとってもひとつの選択肢となるだろう。
投資対象の幅が広がる
これまで株式や投資信託を中心に投資していた人にとって、劣後債は新たな投資対象となる。
「保有資産を分散したいけど、どこに投資すればいいか分からない」「投資先が重複しており、値動きが異なる資産に分散したい」という人は、劣後債に投資することでポートフォリオをガラリと変更することが可能だ。
リスク分散の観点から、ポートフォリオに加えることを検討してみてもよいだろう。
メリット・デメリットを踏まえた劣後債投資の戦略を立てるなら誰に相談するべき?
劣後債へ投資する際は、メリット・デメリットをよく理解したうえで投資戦略を立てる必要がある。
きちんと商品性を理解して運用計画を立てるためには、金融のプロである専門家へ相談することがおすすめだ。
ここからは、投資家へ相談する必要性やおすすめの相談先について紹介していこう。
劣後債投資は専門家への相談が必要不可欠
劣後債は一般社債よりもリスクが高く、商品性も複雑な傾向にある。
そのため、投資する際はきちんとリスクや特性を理解したうえで投資戦略を立てることが重要だ。
より自分の投資意向に合った劣後債を選定するためには、金融のプロである専門家へ相談することがおすすめだ。
劣後債について相談できる先として、次のような選択肢が挙げられる。
- 証券会社
- 銀行
- 信託銀行
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
IFAとは、特定の金融機関に所属しないことが特徴の金融アドバイザーである。
営業ノルマを抱えておらず、金融機関の営業方針などに影響されないため、顧客目線でのアドバイスをくれるメリットがある。
「劣後債についてプロの意見を聞きたい」「劣後債投資が自分に合っているか教えてほしい」という人は、IFAへの相談を検討してみよう。
IFAへ相談してみよう
劣後債は直接証券会社で購入することもできるが、IFAへ相談することでより中立的なアドバイスがもらえるメリットがある。
証券会社も顧客の投資経験や意向を踏まえたうえでアドバイスを行っているが、「営業トークなのか判断がつかない」と感じるケースも少なくない。
その点、IFAは営業ノルマがなく、金融機関の営業方針に左右される心配もない。
顧客の意向をしっかりとヒアリングしたうえでアドバイスをくれるので、初めて劣後債に投資する人でも安心だ。
また、IFAは劣後債投資だけでなく、他の金融商品の売買仲介、ポートフォリオの管理、運用計画の立案など幅広く相談ができる。
お金に関することがワンストップで済むのも嬉しいポイントだ。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」の利用がおすすめ
IFAには、それぞれ得意とする分野がある。自分のニーズとマッチしたIFAを探すためには、IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用することがおすすめだ。
「資産運用ナビ」では、簡単ないくつかの質問に答えるだけで、相性の良いIFAを紹介してもらえる。
投資経験や資産の状況、投資意向などを踏まえたうえでIFAをピックアップしてくれるので、手軽に相談先を探すことが可能だ。
検索サービスは無料で何度でも利用できるので、ぜひ気軽に活用してみよう。
劣後債のデメリットを理解したうえで投資しよう
劣後債には、元本割れリスクや流動性リスクによるデメリットがあるが、その分高い利回りを狙えるメリットも存在する。
大切なのは、メリット・デメリットのどちらも理解したうえで投資することだ。
自分に合った投資戦略を立てるためには、IFAへの相談がおすすめである。
ぜひ「資産運用ナビ」を活用して、資産運用のパートナーとなるような相談先を探してみよう。