※本コラムは2023年7月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社フーバーブレインは2018年以降の第2創業期を経て、更なる成長を実現する体制確立を確実に進めてきました。
代表取締役社長の輿水英行氏へ、基盤事業の特徴、および中長期的な同社の拡大を支える3つのエンジンについて伺いました。
株式会社フーバーブレインを一言で言うと
働き方改革を応援するセキュリティ企業です。
会社の沿革
当社は2001年に株式会社アークンという名前で設立され、セキュリティ分野に特化した事業展開を行ってきました。
入口・出口を保護するネットワークセキュリティと、エンドポイントと呼ばれ、ネットワークに接続されたパソコンなどの機器を守る領域の双方に取り組み、ネットワークセキュリティに関してはイスラエルの会社から提供された製品の販売代理店を担ってきました。
一方、エンドポイントセキュリティについては独自のソフトウェアを開発し、特に2013年から2015年にかけて、売上が好調となったUTM(Unified Threat Management)分野の成長を背景に、2015年に東証マザーズに上場しました。
しかし、上場時の代表者は会社の将来的な成長に対して懸念を抱いており、その改善を図るために2018年にかけて経営陣の大幅な入れ替えが行われました。
このタイミングで社名も現在の株式会社フーバーブレインへと変更し、翌年には新たに働き方改革支援製品を販売開始するなど、新たな展望のもとで現経営体制が構築されていきました。
足元では、「TEAM」「CHALLENGE」「PASSION」「COMMITMENT」「TRANSPARENCY」という5つの要素を重視し、貪欲に誠実にチャレンジを続けていくという企業文化の再構築に注力しています。
過去には3期連続で赤字を計上していた当社も、前期に営業黒字化に成功しました。現在はさらなる成長に向けて、新たな領域への進出を含む変化に積極的に挑戦し、チーム全体で会社を大きくしていこうという姿勢を持っています。
代表就任の経緯
私自身は会計と投資の分野にバックグランドを持っており、20代の頃は外資系の監査法人、アーサーアンダーセン会計事務所で企業監査を行っていました。
また、投資会社であるカーギルジャパンでは、オルタナティブインベストメントに特化した投資部門に約15年間従事していました。
ここでは、不稼働資産に投資し、その潜在価値を引き出して収益を生み出す手法を用いていました。
その後独立しコンサルタントとして活動していた時に、当社の上場時の代表者と出会い、会社を再び成長企業にしてくれないかという話を持ちかけられました。
その際、私は当社に対し、まだ眠っている潜在価値があると感じそれを顕在化させるチャンスがあると考えたのです。
そこで、2018年6月に取締役として参画し、同年10月の現職就任後は当社の成長に向けた新たな可能性を追求しています。
事業概要と特徴
当社は、「働き方改革を応援するセキュリティ企業」として事業展開を行っています。
セキュリティ分野を中心にしつつも、これだけではなく、生産性向上など幅広い分野に取り組み、従業員と会社の双方にとって充実した働き方を実現することを目指しています。
セグメントは「ITツール事業」、及び「ITサービス事業」に分かれております。
前者はセキュリティツール及び働き方改革ツールを提供し、特にセキュリティツールは創業からのコア事業となります。
後者はITツールの提供に伴う保守・役務のほか、GHインテグレーション社およびアド・トップ社の子会社2社による受託開発・SESと採用支援・人材紹介を提供しています。
ITツール事業について
コア事業となるセキュリティツールですが、大きく「従前製商品群」と「Cato SASE Cloud」に分けられ、それぞれベース事業・成長エンジンとして異なる事業フェーズを歩んでいます。
従前製商品群のうち、特にエンドポイントのソフトウェアに関しては、データベースに特徴があります。
ルーマニアのBitdefender社のセキュリティデータベースと、当社が日本で登録しているデータベースを組み合わせることで、日本企業に特化した世界標準のセキュリティ製品を提供しています。
例えば最近では”Emotet”というウイルスが流行ったのですが、アジアで流行するものと、それ以外の地域で流行るものが必ずしも同じとは言えません。
そのため、国内単体のデータベースだけでは不十分な部分を補完した上で、日本企業に適したセキュリティ対策の提供に繋げています。
また、中小企業の販売網や社内のサポートチームによるフレキシブルな対応も差別化要因となっており、顧客のニーズに柔軟かつ的確に対応しています。
ITサービス事業について
当事業領域における一番のボトルネックはIT人材の不足です。
子会社のGHIは韓国でIT教育と日本語教育を提供しており、我々は技術と語学の両方に堪能な人材を日本に派遣しています。
韓国にはスキルを持ち海外で働くことを志向するIT人材がまだまだ豊富におりますし、国としてもこのような人材を積極的に海外に派遣する姿勢を持っています。
このような国際的なパイプラインを活用できることが、当事業の成長だけでなく自社開発においても大きなメリットとなっています。
また、アド・トップはタレントマッチングプラットフォームの開発に取り組むHRテック企業で、同社の持つHRノウハウが独自の採用支援・人材紹介においての優位性となっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
現在の主力事業であるセキュリティツールの従前製商品群とITエンジニアサービスを基盤としつつ、2つの新たな事業とM&Aという3つのエンジンで更なる成長を実現していきます。
業績目標としては、2025年3月期に連結営業利益5億円の達成を目指しています。
1つ目の成長エンジンは、セキュリティツール「Cato SASE Cloud」です。
イスラエルのユニコーン企業でありますCato Networks社と提携し、2020年より総代理店として取り扱いを開始した結果、前期(2023年3月期)には成長期へと突入しました。
そして足元では、年商10兆円を超える規模の会社を含む大企業を中心に受注が非常に好調です。
この「Cato SASE Cloud」は、SD-WAN(Network as a Service)とSSE(Security as a Service)が統合するSASEという考え方が普及する中で、国内企業に求められる需要に応える製品となっています。
引き続き大企業からの受注を伸ばしつつ、さらに長期的には、中小企業にもSASEの考え方が浸透することで、当製品の需要がより一層高まると考えています。
この際には、既存基盤事業にて我々が保有する中小企業販売網を活用し、製品を拡販するチャンスが増えると認識しています。
2つ目の成長エンジンは、2019年より販売を開始した、働き方改革ツール「Eye “247” Work Smart」です。
具体的には、大企業向けの機能追加とパートナー企業とのコラボレーションにより、ユーザー規模の拡大を目指しています。
セキュリティ企業がセキュリティ目線で開発した製品であるという点が、当製品の差別化ポイントだと考えています。
これは信頼度にも繋がりますし、用途としても、純粋な内部不正対策や、労務管理・経営管理の領域、そして生産性向上など多岐に対応するものとして提供できます。
一方、このような複合的な機能を求める企業としては、我々が持つ販売網よりも少し規模が大きめの顧客層であります。そのため、今後は新たな層へのアプローチを強化し、これらのニーズに対応していく予定です。
アド・トップの買収にはこの展開を見越した部分もあり、事業間を超えてシナジーを生み出しながら、2025年3月期には利益貢献フェーズへと移行していく計画です。
そしてM&A・投資が3つ目の成長エンジンです。7月設立の投資会社であるフーバー・インベストメント株式会社を通じて、成長を加速させる取り組みを進めています。
当社はセキュリティ分野が軸となっておりますが、中長期的にはメディア・広告、そして教育を含むHR領域を強化していきたいと考えています。
セキュリティに対する意識は以前と比べて大きく変わっています。
セキュリティインシデントのリスクは個人にも身近なものとなり、企業や組織が被害に遭う件数も増えています。
また、これらはセキュリティの穴を突いて引き起こされることが通常で、「機密情報はないから」「会社の規模が小さいから」などといった理由でこれまで対策をしていなかった中小企業にも、その必要性が生まれているのです。
そのため、今後も業界の成長は期待できますし、その中で当社のセキュリティ製品がこれらのリスクに対応することで、事業の成長に貢献していくと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
さらなる成長を実現するため、2018年以降に進めてきた事業のベース固めが完了し、現状はその土台が整ったという状況です。
これからしっかりと結果を出していきますので、今後の変革に投資していただき、我々の成長を支えていただけますと幸いです。
本社所在地:東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート22F
設立:2001年5月8日
資本金:796,631,200円(2023年3月31日時点)
上場市場:東証グロース(2015年12月18日上場)
証券コード:3927