※本コラムは2023年8月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社エクスモーションはソフトウェアの品質改善を支援する会社として実績を築いてきました。
今後の業界動向や中長期戦略について、代表取締役社長の渡辺博之氏に伺いました。
株式会社エクスモーションを一言で言うと
ソフトウェアファースト時代に不可欠なソフトウェア開発の”技術参謀”
製品の売却後も、ソフトウェアのアップデートにより製品価値を上げて稼いでいくという製造業の新しいビジネスモデルの実現に向けた戦略を、ソフトウェアファーストと呼んでいます。
このビジネスモデルが増加する新しい時代にソフトウェア開発は不可欠ですが、メーカーが自分たちだけで成し遂げるのは難しいです。
そのため、当社がそのような方々の側についてご支援いたします。
創業の経緯
私は以前、ソフトウェアの開発請負会社にエンジニアとして勤務しておりました。
社会の発展とともに機械も着々と機能が進化していく中、当時から最も重要になるのはソフトウェアだと考えていました。
同時に、今後はソフトウェアの作り方が社会の課題になるのではないかと感じていました。
しかし、在籍していた企業の規模が非常に大きかったこともあり、ソフトウェアによって製品価値を向上させることに特化して事業を進めるという方針にはなりませんでした。
私自身、この領域に特化して取り組みたいという強い意向がありましたので、独立して新たな会社を設立することを決意しました。
そして、機械の中で動くソフトウェアを作る方々を支援していく会社として、株式会社エクスモーションを2008年に設立しました。
ターニングポイント
当社の転機は自動車産業におけるソフトウェアの複雑化という外部環境の変化にあります。
当初から特定の業界を想定していた訳ではありませんでしたが、ソフトウェア開発の事業を展開していく中で、最も相性が良いのが自動車産業だと認識しました。
自動車が、ソフトウェアを組み込むことで商品価値を上げることに最も適していたのです。
我々が想定していたソフトウェアによる機械の高度化を自動車産業が具体化し、そしてこれが複雑化していくにつれて、当社への仕事のオファーも増えていきました。
上場のきっかけ
当社は設立時から上場を狙っていたわけではありません。
当初抱いていた課題感が自動車産業を中心に顕在化し始めてきたときに、事業の規模を大きくする必要性を実感しました。
そのため、世の中の人に広く当社をご理解、ご支持いただくことで、事業規模の拡大を図るために上場を決意しました。
事業の概要
当社ではコンサルティング事業と教育・人材育成事業を手掛けています。
コンサルティング事業では自動車産業を中心に、コンサルタントによる課題の直接解決を行っています。
教育・人材育成事業では、トレーナーによる短期集中型のトレーニングや、学習教材、ナレッジの提供によるオンライン学習を行っています。
コンサルティング事業の強み
当社にはソフトウェア開発に情熱を注ぐ、能力の高い人材が集まっています。
そのため、高度化・複雑化していくソフトウェアに適切に対応していく素養があります。
特に、当社はソフトウェア開発の「質」にこだわるエンジニアを多数抱えています。
このように、ソフトウェアへの熱意、能力、こだわりを持つエンジニアが多数在籍していることが当社の強みとなっています。
AI戦略について
当社はコンサルティングサービスを提供していますが、解決すべき課題が急増する中、直線的に人材を増やして支援するにはやはり限界があります。
つまり、人を介さずに支援していく手段が求められているのです。
そこで、人間に変わる手段として生成AIなどの技術を用いた効率的な支援を図ることが今後の課題になります。
今後の業界動向
販売した製品や機械にすでに組み込まれているソフトウェアをアップデートすることで、製品やサービス提供後でも価値を継続的に上げ、それによってマネタイズするビジネスモデルが増えていくと考えています。
例えば、トヨタのKINTOというサービスでは、車の購入後でも様々なオプションを購入することで、車のハードウェアやソフトウェアをアップデートして車の性能や価値を上げています。
自動車のみならず、様々な製品・機械においてもこのような事業モデルは増えていくでしょう。
そして、このような事業モデルの基盤となっているのが、当社が提供する高品質なソフトウェア開発の現場支援です。
これまでの当社の需要は直線的に伸びていましたが、今後はこのようなビジネスモデルの変革に伴い急速に需要が増加していく見込みです。
また、このようにソフトウェアの高度化を前提とした新しいビジネスが広まることで、ソフトウェア開発の人材不足や開発の効率化が課題となるでしょう。
さらに、ネットと繋がるソフトウェアの開発といった、新しい領域の知識の幅がエンジニアに求められます。
そのため、今後は人材の量、知識の幅、開発の効率性という質の3つすべてを同時に上げていかなければいけません。
多くの企業はソフトウェア開発者を集めたり、クラウドができる開発者を集めることで人材の量と知識の幅を補うことはできますが、これでは効率性は解決できません。
我々の支援はまさにこの効率性を解決するものであり、その点においても当社への需要は今後とも増加すると考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社は成長戦略として、ソフトウェアファーストのためのソリューション強化、フラッグシップ戦略、シナジー効果による事業のスケーリングを進めています。
フラッグシップ戦略では、自動車産業のDX支援で得られたノウハウや実績を基に、他産業分野へ支援を拡大していきます。
また、シナジー効果による事業のスケーリングにも関わりますが、コンサルティングで培ったノウハウを育成やナレッジ提供サービスとして事業展開を進めています。
自動車DX事業では、大手自動車メーカーと一緒に事業を進めています。
最先端の技術を活用した専門的なノウハウを伝えるために、多数のエンジニアを派遣するコンサルティング型のビジネスモデルです。
その分コストは非常に高くなる傾向にあり、同様のモデルを自動車メーカー以外の顧客に展開するのは費用面から難しい部分があります。
そのため、自動車DX領域で培ったノウハウを、いかに価格を抑えた形で展開していくか、が非常に重要になります。
一つの解決策として、当社ではナレッジ提供サービスを行っています。
基本的な要点はコンテンツにしているので、それを見て学んでもらいます。
ただし、実際に現場で行うコンサルティングとオンライン育成の間にはギャップがあるという課題もあります。
そのため、対話しながらアドバイスができるように、先程もお伝えした生成AIを用いた事業の展開にも着手しています。
業務提携やM&Aについて
また、今後の戦略としてはM&A・業務提携による事業拡大も進めていきます。
当社は70人ほどが在籍する会社ですので、できることは限られてきます。
また、その70人で多くのことをやりきろうとすると、我々の専門外の領域にも手をつける必要が生まれ、結果として我々の強みが薄れてしまう可能性もあります。
そのため、我々にしかできない強みをより一層磨きつつ、必要なことがあれば他社と手を組んで成長していきます。
このような考えを元に業務提携やM&Aを実施して、事業変革を推進してまいります。
注目していただきたいポイント
当社は労働集約型のコンサルティングビジネスを展開していますので、投資家の皆様の中には、コンサルタントの数を増やさないと事業成長につながらない、と考える方もいらっしゃると思います。
需要が旺盛な分、人を増やして売り上げるという戦略には正しい部分もあると思います。
しかし、やはり継続的に人材を増やしていけるわけではありませんので、将来的に考えて自分たちの事業形態を見直す必要があると思います。
そのため、コンサルタントがお客様企業に行かなくてもできる事業や、頭数を増やさなくてもビジネスができるような座組を我々は目指しています。
具体的には、M&Aや業務提携を通して規模を増やし、かつ生成AIやコンテンツ販売によって、フロー型だけでなくストック型の事業展開を図っています。
このような事業の規模や質の変化を見ていただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
今後、ソフトウェア市場は堅調に成長していきます。
そのため、当社も直線的ではなく指数関数的に成長するために、内部で様々な事業変革を図っています。
投資家の皆様には、今後のその成果に期待していただければと思います。
本社所在地:東京都品川区大崎2-11-1 大崎ウィズタワー23階
設立:2008年9月1日
資本金:450,660千円(2023年5月31日現在)
上場市場:東証グロース(2018年7月26日上場)
証券コード:4394