※本コラムは2023年8月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ポケトークやオートメモなど、かつてない製品を開発してきたソースネクスト株式会社。
会社の沿革や事業内容について、代表取締役会長の松田憲幸氏に伺いました。
ソースネクスト株式会社を一言で言うと
他社がやらないことをする会社です。
私は常にお客様を驚かせたいという気持ちがあります。
これを原動力に他社がやらないことをすることが、結果的に次の常識を作ることにつながると考えています。
創業の経緯
私は1996年に当社を設立しました。
1995年にWindows95が発売されたため、設立当初はWindowsソフトをいかに提供できるかの勝負だと考えており、これをできる限り集めて販売するビジネスを展開しました。
店頭で商品を販売しながら、お客様に需要のあるソフトを直接教えていただき、商品を揃えていきました。
これは、私自身が前職でエンジニアとしてWindowsのアプリケーションに関する業務に携わっていたことに起因しています。
ターニングポイント
当社のターニングポイントは大きく分けると3つあります。
まずは店頭でのソフトウェア販売台数が1位になったことです。
かつてパソコンソフトは高価でした。そこで、当社は2003年にソフトウェアの価格を1980円に統一しました。
それにより当社のソフトウェア販売台数が日本で一番となりました。
これと同時に販売形態を変更しました。それまでは流通業者を通じて販売していましたが、2003年以降は量販店に直接製品を卸し始め、当社自体が流通の役割も担うようになりました。
次に、東証マザーズへの上場です。
2006年に、当社は更新料0円のセキュリティソフトを世界で初めて販売しました。この製品がお客様からのご好評をいただき、売上高100億円突破を経て東証マザーズに上場することができました。
さらに、2008年に東証一部に上場、2012年には当社の支社をアメリカに設立し、私はアメリカへ移住しました。
移住することでアメリカの様々なコンテンツを集めやすくなると考えました。また、シリコンバレーの優秀な経営者の経営手法を学びたいという気持ちもありました。
さらに、シリコンバレーに住むことでグローバルな製品を作りたいという願望もありました。
そして、ポケトークの販売です。
移住してからグローバルな製品とは何かを考え続け、2017年にグローバルプロダクトとしてポケトークが誕生しました。
その後、2022年には当事業を切り離してポケトーク株式会社を設立し、現在は「翻訳機」販売金額シェアで99.3%(2023年6月)と圧倒的なポジションを確立しています。
事業概要
設立当初、当社はWindows用のソフトやパソコンソフトの開発・販売を行っていました。
その後2003年からは流通分野への進出、2017年からはソフトウェアだけでなく、ハードウェアにも事業を拡大しました。
これにより、ポケトークや360度webカメラシリーズのKAIGIO CAM360といった様々なハードウェアを開発してきました。
製品企画・開発における強み
製品開発には3つの重要な要素があると考えています。
1つ目が驚きの有無です。ポケトークのような世界初や日本初の製品には驚きがあります。このような驚きを重要視しています。
2つ目が製品の使いやすさです。使いやすさがなければ製品は広まりません。例えば、ポケトークの使い勝手が良くなければ、100万もの台数は売れていないと考えています。
3つ目がリーズナブルな価格設定です。価格設定は企画をする上での最大のポイントです。
これらは創業時から変わらない我々のコンセプトであり、これら3つのうちどれか1つでも欠けると、その製品は売れないと感じています。
足元では、法人向けのビジネスシリーズ「ポケトーク for BUSINESS」の販売が非常に好調です。
すでに今年の3月の提供を開始している「同時通訳」の他、「カンファレンス」、「ムービー翻訳」も年内には提供開始予定で、今後も当社の強みを生かしながら新機能を開発し、魅力的な製品を提供していきます。
ソフトバンク社との業務提携について
当社はポケトークの事業に関して、2023年7月25日にソフトバンクと業務提携契約を締結しました。
本提携のポイントは3つです。
これまでポケトークはハードウェアとして流通してきましたが、今後はソフトウェアとしても販売します。
この戦略推進において、ソフトバンク社との提携は非常に親和性があると考えており、事業の収益性向上も期待できます。
また、当社はBtoCの製品開発に注力してきましたが、今後は先ほども取り上げた「ポケトーク for BUSINESS」など、BtoBの製品にも注力します。
そのため、法人顧客層が圧倒的に多いソフトバンク社の力を借りて、国内法人にも当社の製品を浸透させていきます。
さらに、本提携により海外進出の動きも加速させていきます。
ソフトバンク社は既にアジア圏、ヨーロッパ、アメリカなどでも圧倒的なプレゼンスを持っています。
同社の海外拠点と連携したり、パートナー企業との連携を通じた販路拡大を図っていきます。
中長期の成長イメージとそのための施策
これまでハードウェアで販売してきたポケトークですが、今後はソフトウェアでも販売していきます。
当然競争は激化しますが、ソフトウェアの需要が高く、価格もリーズナブルにできます。
そのため、ポケトークに限らず、文字起こしAIのAutoMemoなども含め、ソフトウェア化によるサブスクリプション収入が今後の当社の核になっていきます。
当然、ソフトウェア化や法人向け製品の開発に対して不安になる方もいると思います。
しかし、ご理解いただきたいのは、当社がもともとソフトウェアの会社であるということ、そして法人向け製品で30億円以上の売上実績があることです。
この点を踏まえ、着実に企業価値向上に繋がっていくと我々は考えています。
さらに、先ほどご説明しましたソフトバンク社と協業し、海外展開にも一層注力していきます。
このようにハードウェアに加えソフトウェア、BtoCに加えBtoB、日本市場に加え海外市場という3方向への事業拡大によって企業価値を大幅に上げていきます。
3方向とも、領域をスライドさせるのではなくアドオンしていく方針ですので、仮に2倍ずつに成長すれば計8倍というように、急激に企業価値が上がることも十分見込めると考えています。
今後の課題
BtoCからBtoBへいかに移行していくか、という部分にはもちろん課題もあります。
例えば、BtoC領域でのポケトークは使用頻度を考慮するとサブスクリプションモデルには向いていません。
しかし、ソフトウェアを法人向けに、グローバルに展開する場合には、ビジネスの持続性がありグローバル展開もしやすいサブスクリプションモデルでの販売になります。
このように、BtoCからBtoBへの移行一つとっても様々な変化が伴います。
ただ、この点においてソフトバンク社との提携は非常に効果があると感じています。
また、ここ数年行ってきたタクシー広告などにより当社製品の認知度を高めることができたと感じています。
今後も同様にして粛々と当社製品を国内法人へ浸透させてまいります。
注目していただきたいポイント
足元、コロナウイルス流行に伴うパンデミックの影響でポケトークの売上は減少し、業績も赤字となりました。
しかし、今後はインバウンド、アウトバウンド共に需要が活発になることが予想され、ポケトークの売上も同時に増えていく見込みです。
ハードウェアだけでなくソフトウェアの事業を進めていくことで利益率も上がっていくでしょう。
また、この期間中にもオートメモなどの新製品の拡充を進めてきました。
これは、仮にインバウンド・アウトバウンド需要が落ち込むようなことがあっても安定的な売上が見込める法人向けの製品です。
これにより、不慮の事態でも売上が下がりにくい強固な事業基盤を整えることができました。
繰り返しになりますが、BtoCから撤退してBtoBに展開したりハードウェアから撤退してソフトウェアの開発を進めるわけではなく、それぞれをアドオンしていく、という点を今一度ご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
長い歴史を持ついくつかの日本企業が世界のマーケットで成功している例はありますが、ここに続く成功事例は未だ生まれていません。
我々は、当社こそこの希少な存在になりうるポジションにあると考えています。
ポケトークは言語の壁という人類が長い間直面してきた大きな問題を打破し、世界中で利用できる製品です。
製品とは基本的に何かの問題解決のためにあるものですが、これほどまでにグローバルなインパクトを持つ製品はそうありません。
引き続きこの壮大な使命に向かって進んでまいりますので、ぜひとも応援していただけましたら幸いです。
本社所在地:東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター33階
設立:1996年8月
資本金:3,701,935(2023年6月30日現在)
上場市場:東証プライム(2006年12月20日上場)
証券コード:4344