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【6229】株式会社オーケーエム代表取締役社長 奥村晋一氏「いい流れをつくる。」

※本コラムは2023年9月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。

流体を制御するバルブを開発し、インフラを支え続ける株式会社オーケーエム。

会社の沿革や事業内容、および成長方針について、代表取締役社長の奥村晋一氏に伺いました。

目次

株式会社オーケーエムを一言で言うと

 「いい流れをつくる。」会社です。

世の中にある流体、見えているものもそうですが、例えば人々の願いなどの見えないところにもいい流れを作っていくという思いを込めています。社内にも「いい流れ」を作り、お客様により良い製品やサービスを提供していきたいと考えています。

また、これを実現するために「独創的な技術」をもって三方よしを実現する、という想いを込めた社是を1973年に制定しており、社内に浸透させて事業活動を展開しています。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

沿革とターニングポイント

当社は1902年に創業し、昨年で120周年を迎えました。本社がある滋賀県は林業が盛んであり、その背景からノコギリの製作所を祖業としていました。

1つ目のターニングポイントはノコギリの電動化です。

これに伴い手動のノコギリのマーケットは衰退していくと考え、戦後間もない1952年にバルブ事業への転換を図りました。

滋賀県彦根市には多くのバルブメーカーが集積しており、まさに地場産業であります。

そして、当時は今後の経済成長に向かって工場も数多く建てられていたため、そのインフラとしての配管システムの需要が大きく拡大していくであろうと考えたのです。

また、祖業のノコギリ製造で培った鉄を扱うノウハウがバルブにも活かせるのではないかと考えました。

この事業転換が功を奏し継続的な成長を続ける中、2020年12月に東証二部へ上場したことが2つ目のターニングポイントとなりました。

これ以降を「第三の創業」と捉え、新たな成長に向けて中期経営計画をもとに鋭意事業活動に取り組んでいます。

代表就任の経緯 

私が当社に入社したのは1997年です。入社以前は6年間横河電機株式会社で働いていました。

当社に入社した当初は開発部門に携わり、その後は品質保証、生産統括、営業統括、海外法人の管理、管理統括と社内の部門を一通り経験してきました。

そして2021年に代表に就任いたしました。以来、日々のマネジメントにおいては、物事を論理的に考え経営に反映させることを大切にしています。

事業概要

当社は、工業用バルブの開発・製造・販売を担うバルブメーカーです。主に、バタフライバルブ、ナイフゲートバルブ、ピンチバルブの3つを製造しております。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

バタフライバルブは、輪っかの中の円盤を90度開閉することで、水やガスなどの流れるものを流したり止めたりします。

ナイフゲートバルブは、輪っかの中の板を出し入れすることによって、水はもちろん、泥や粉などを流したり止めたりすることができます。

ピンチバルブは、ゴムチューブをつぶしたり、解放したりすることによって流体を流したり止めたりすることができます。

事業の特徴と優位性

バルブには様々な種類があります。

標準的な型を作り置きして販売する方法もありますが、当社はお客様の細かなニーズを出来るだけ製品に反映させたカスタマイズバルブを製造・販売しているという特徴があります。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

バルブという製品は、普段あまり一般の方の目には触れないようなところで使われています。

例えば建物の地下や天井裏などで、有名な場所でいうと東京ディズニーシーでも当社の製品が使われています。

他にも、タンカーや客船など、産業インフラや生活インフラと言われるものを下支えする存在がバルブなのです。

当社は戦後にバルブ産業に参入した、後発のメーカーです。

そのため、標準的なバルブを製造する先行企業と同様のビジネスモデルではなく、扱いが面倒で他社が手を出さないような流体分野に進出していきました。

そして、その流体に合ったカスタマイズバルブを提供し、お客様のニーズに細かくお応えしてきました。

これをご評価いただき、現在船舶排ガス用バルブの分野では世界で40%超、国内では90%超の高いシェアを誇っています。

オーケーエムの技術力 

当社は、これまでも各産業のトレンドをいち早くつかみ、これに独自の技術を掛け合わせることで多様な業界の顧客へ付加価値の高いバルブを提供してきました。

ここではその一例を紹介していきます。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

まずは製紙業界です。

紙パルプを作る際に使用する流体には固形物が混ざっており、従来品ではこれらを制御することが難しいという問題がありました。

我々はこの課題を解決するナイフゲートバルブを開発し、製紙業界に当社の名前が一気に知れ渡りました。

1955年以来、現在に至るまで定期的にご注文をいただいております。

また、1980年頃から高層ビルが相次いで建築されたことを受け、空調設備に目をつけました。

空調設備向けのバルブは、冷暖房用の水の流量を効果的に調整するために使用され、その性能と信頼性は高く評価されています。

その後2000年代に入ると、造船業界で船舶ごとのニーズに対応するカスタマイズバルブがご評価をいただき、今では国内主要造船所の70%以上への納入実績を誇っています。

このように、バルブは広範囲に及ぶ業界でニーズのある製品であり、我々は各業界で技術的な優位性を発揮してきました。

この独創的な技術もまた、当社の強みであると言えます。

中長期の成長イメージとそのための施策

当社は、「脱炭素化に向けたクリーンエネルギー市場を含む成長市場に対応できる新商品開発と販売体制を確立する」ことを第1次中期経営計画の方針として掲げています。

2025年3月期までを変革期、その後2031年3月期までを成長期とし、現在は第1次中期経営計画を進行中です。

マーケット環境

当社を含め、バルブ業界全体がカーボンニュートラルに注目しています。

政府からもGX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた基本方針が発表され、予算総額は2兆円とされています。

これに基づき、当社のお客様であるエンジニアリング会社やユーザー様がGXへの取り組みを進めていきます。

また、カーボンニュートラルのロードマップでは、天然ガス、アンモニアや水素への転換が言及されており、脱炭素に向けたエネルギーシフトは今後ますます進行していくと認識しています。

新商品開発と販売体制を確立

このようなマーケット環境を受け、当社は脱炭素社会向け製品の研究開発と低炭素社会向け製品の販売展開を進めてまいります。

脱炭素社会向け製品についてですが、具体的には、水素・アンモニア・バイオメタノールなどのエネルギーへの対応を進めていきます。

こちらはすでに産官学での連携を含め製品開発が進行しています。

例えば、CO2用のバルブとアンモニア用のバルブについては第1次中期経営計画の3カ年で開発を完了させます。アンモニア燃料船用バルブについては今年の12月にプロトタイプを試験搭載する予定です。

これは、毒性のあるアンモニアを確実にシール(封止)する役割を持ったバルブです。

他にも、液化水素用のバタフライバルブの開発も進めています。こちらは、経産省のサポイン(サポーティング・インダストリー)事業に採択されました。

大学や公設試験研究機関などと協力して研究しており、現在最終年度の開発を進めています。

エネルギー企業とのタイアップの話も進行し、マーケティング活動を通じて今後も研究開発を推進していきます。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

また、低炭素社会向け製品についてですが、現在国外・国内ともに海運業界では液化天然ガスへのエネルギーシフトが加速しています。

これを受け、当社もLNG燃料船向けバルブの製造販売を推進していきます。

当バルブにおけるメインの戦略は、国内市場に向けた営業活動の強化と海外市場向けのラインナップの拡充です。

加えて、我々は後発メーカーなのでコストダウンも求められます。

これまで長きにわたり培ってきたノウハウや社内に蓄積されたデータを活用して、コスト低減に加えて製品の品質を安定させていきます。

また、アフターサービスについてもしっかりと対応し、お客様との信頼関係の構築に繋げてまいります。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

生産体制の変革

当社はカスタマイズバルブの提供をしており、現在10万種以上の非常に多くのラインナップを取り揃えています。

細かなニーズに対応するという姿勢を変えることはしませんが、やはりこれ以上増えると効率の面が課題になりかねません。

そこで、今後はお客様への多様な選択肢は維持しながらも、できるだけ効率的に生産ができるようにしていく方針です。

つまり、お客様から見るとカスタマイズ製品の提供という体制は変化しませんが、社内ではカスタマイズ製品の標準化を進め、管理コストや納期の短縮化により生産性を向上させていきます。

株式会社オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料より引用

これまで蓄積してきた膨大なお客様情報をグループ全体で共有することで、当社の成長をさらに加速させていきたいと考えています。

例えば、あるお客様向けで成功したカスタマイズ製品をグループ全体で共有することで、水平展開で販売していくことができます。

また情報を共有化することで、次の新しいニーズを開拓することができ、マーケティングの自動化と顧客満足度の向上に繋がると考えます。

これらの施策により利益率を高め、会社の持続的な成長を実現するステップとしていきたい考えです。

投資家の皆様へメッセージ

バルブは約2000年前から存在し、この先も配管がある限りはバルブの需要が無くなることはありません。

その中で我々は、お客様の流体制御のニーズに細かくお応えすることで、今後も事業を成長させてまいります。

この事業成長とお客様・社員、そして株主様の満足度を向上させることで、持続可能な社会に貢献をしてまいります。

株式会社オーケーエム

本社所在地:滋賀県野洲市市三宅446-1

設立:1962年5月31日(創業:1902年)

資本金:1,178,602,655円(2023年9月アクセス時)

上場市場:東証スタンダード(2020年12月17日上場)

証券コード:6229

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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