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「贈与税の期限」を見逃さない!予備知識と計画的な対応のススメ

この記事で解決できるお悩み
  • 贈与税の申告期限や納税期限について知りたい
  • 贈与税の計算・節税方法について理解を深めたい
  • 資産の相続や贈与の際の最適なタイミングと手段を見つけたい

保有資産を誰かに与え、相手がそれを受諾すると「贈与税」が発生する。

現金や不動産だけでなく、有価証券などの資産にも贈与税がかかるため、投資を行っている人は、贈与税についてある程度の知識を身につけておく必要があるだろう。

そこで本記事では、贈与税の基礎知識や、贈与税に関わる期限などを解説する。

目次

贈与税とは?概要と計算方法を理解する

まずは、贈与税の基礎知識を整理していこう。

贈与税の課税の原則

贈与税とは、資産を保有している人が、自身の家族やその他の人に対して、資産を無償で引き渡すことにより発生する税金のことだ。

ちなみに「譲渡税」との違いは、資産の引き渡しが無償か有償か、である。譲渡税の場合は、資産を有償で引き渡した際に発生し、譲渡した側が税金を負担することになる。

贈与税の支払い及び申告は、原則として資産を贈与された翌年の2月1日〜3月15日と決まっている。

年間110万円までの贈与は非課税(基礎控除)だ。それ以上の贈与に関しては、基礎控除後の課税価格に対して10〜55%の税率が課せられる。

贈与税の計算方法

贈与税の税率は2種類ある。

祖父母や父母など、直系尊属の人から18歳以上の子・孫などに対する「特例贈与財産」と、夫婦間、兄弟間、親子間(子が18歳未満の場合)で行われる「一般贈与財産」の2種類だ。それぞれの税率を表にまとめた。

特例贈与財産の税率

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円
出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

一般贈与財産の税率

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円
出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

参考までに、特例贈与財産と一般贈与財産の、税率計算方法を紹介する。

特例贈与財産の計算

以下は、贈与を受けた年の1月1日時点において、18歳以上の子や孫が、父母または祖父母から資産を贈与された場合の計算方法である。

贈与財産の価額は900万円とする。

基礎控除後の課税価格:900万円 – 110万円=790万円

贈与税額の計算:790万円 × 30% – 90万円=147万円

この場合、「147万円」が贈与税として課税される。 

一般贈与財産の計算

以下は、「直系尊属以外の親族」が贈与を受けた場合と、「直系尊属の親族」から贈与を受けたが受贈者がその年の1月1日時点で18歳未満の場合の計算方法である。

贈与財産の価額は900万円とする。

基礎控除後の課税価格:900万円 – 110万円=790万円

贈与税額の計算:790万円 × 40% – 125万円=191万円

この場合、「191万円」が贈与税として課税される。

非課税措置と節税方法

贈与税は、前述のように年間110万円までは非課税となる。それ以外にも、以下のパターンで贈与税が非課税となるため、節税方法として積極的に活用しよう。

生活費の贈与家族を扶養するための生活費、教育費は贈与税の対象外となる。
また、親が子の結婚費用や出産費用を負担する場合も、贈与税は課税されない。
ただし、まとまった金額を贈与した場合、年内に使いきれなかった部分については課税される。
配偶者控除
(おしどり贈与)
夫婦間で居住用の不動産、またはその購入資金を贈与した場合、2,000万円まで控除される。
基礎控除と合わせると最大2,110万円の控除になる。適用できるのは1度のみ。
また、婚姻期間が20年以上あり、贈与された人は翌年の3月15日までに、贈与された不動産または贈与された資金で購入した不動産に居住する必要がある。
相続時精算課税制度(一時的な控除)贈与者が亡くなるまでに贈与した財産と、亡くなった際に相続した財産を一体のものとして考える課税制度。同制度を適用すると通算2,500万円まで贈与税が非課税となる。

この他にも、住宅取得資金や教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与には非課税制度が設けられている。

贈与税の申告と納税期限

続いて、贈与税の申告と納税の期限を整理する。贈与税の納税漏れが発生すると罰則が科せられることがあるため、注意しよう。

申告期限について

贈与税の申告は、贈与を受けた人が翌年の2月1日〜 3月15日の間に、所轄の税務署に申告書を提出しなければいけない。

したがって、贈与税申告の最終期限は3月15日となる。何らかのトラブルが発生することを想定すると、余裕を持って2月末日までには申告を終わらせておきたい。

2月1日〜 3月15日の申告期限を過ぎてしまうと、加算税が課せられるので注意しよう。ちなみに、前述の「相続時精算課税制度」を適用した場合でも、贈与税の申告は必要だ。

納税期限について

納税期限についても、申告期限同様に贈与を受けた翌年の2月1日〜 3月15日の間となっている。つまり、申告と同時に納税するのが一般的なやり方だ。

ただし、納税については「延納」が可能だ。そのためには、翌年の2月1日〜 3月15日の間に、延納申請書に担保提供関係書類を添付し、税務署長に提出する必要がある。

延納の条件をクリアすると、5年以内の年賦による納税ができる。

罰則を理解する

贈与税の申告漏れや納税忘れが起きると、罰則として加算税が課される。その税率は、以下のとおりだ。

贈与税額加算税率
税務署の通知を受ける前に自己申告した5%
税務署の通知を受けてから、調査が入るまでに自己申告した50万円以下10%
50万円超15%
税務署の調査を受けた50万円以下15%
50万円超20%
出典:相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁

贈与税の隠蔽や偽装を行い、無申告または過少申告したと判断された場合、さらに重い罰則が科せられる。

無申告:40%(前歴ありは50%)

過少申告:35%(前歴ありは45%)

無申告または過少申告が悪質なものと判断された場合、刑事罰に発展する可能性もあるので、十分に注意しよう。

贈与の最適なタイミングと手段

贈与の際に意識すべきなのが「タイミング」だ。実は、贈与のタイミングによって節税になることもあれば、贈与税が多く加算されることもある。ここでは、贈与の最適なタイミングと手段について紹介する。

贈与を行う最適なタイミングを見つける

もしもあなたが、子や孫により多くの資産を贈与したいと考えるなら、贈与は今すぐ始めることをすすめる。

というのも、年間110万円の基礎控除枠を利用すれば、10年間で最大1,100万円、20年間で最大2,200万円の贈与が非課税になるからだ。贈与税の申告も不要であるため、積極的に利用したい。

ただし、「贈与税額が予め決められている資産を分割する」となると、話は別だ。

これは定期贈与と呼ばれ、全額が課税対象になる。そのため、年間110万円の基礎控除枠を利用する場合は、定期贈与とみなされないように注意しよう。

この他、住宅取得のための贈与も、タイミングが肝心だ。住宅取得等資金の非課税制度は、父母や祖父母など直系尊属からの贈与が500万円、または1,000万円非課税になる。

主な要件は、自己の居住用に供する、住宅用家屋の新築、取得、または増改築のための資金贈与であることだ。

同制度では、贈与を受けるタイミングは「居住開始の前」でなければいけない。居住開始後に申請を行っても、非課税の対象にはならないため注意しよう。

このように、贈与税の非課税制度には要件があり、適切なタイミングがあることを覚えておいてほしい。

贈与の手段や具体的な方法

資産を贈与する際は、後々のトラブルを回避したり、贈与税申告をスムーズに行なったりするために、以下のステップで行うことを勧める。

  1. 何を、誰に、どんな目的で贈与するのか明確にする
  2. 贈与税の課税方法(暦年贈与または相続時生産課税制度)を選ぶ
  3. 贈与を受ける人と合意を取り、贈与契約書を作成する
  4. 贈与する資産を移す
  5. 贈与税の申告・納税を行う(翌年の2月1日〜3月15日)

贈与の手段については様々なものがある。例えば、あまり知られていない贈与手段は、「株価が下がったタイミングで有価証券を贈与する」という手段だ。

有価証券を贈与する場合、過去3ヶ月まで遡り、株価が最も低い時点で贈与税を計算できる。

つまり、直近3ヶ月で下落する可能性の高い株式を取得し、株価が下がったタイミングで贈与すれば、その分贈与税を節税できるわけだ。

下がった株価が回復しないリスクもあるため注意が必要だが、下落の要因が一時的なものであれば、長期保有株として贈与することで、節税と同時に受贈者の資産形成にも貢献できる。

贈与と相続のバランス

「生前贈与する方が相続よりも税額が少ない」と考える人が多いが、実は大きな間違いである。

原則として、贈与税よりも相続税の方が安い。以下に、贈与税と相続税の税率を比較する。

贈与税:基礎控除後の課税価格
相続税:法定相続分人の取得金額
贈与税相続税
税率控除額税率控除額
200万円以下10%10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円15%50万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円20%200万円
5,000万円以下55%640万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁No.4155 相続税の税率|国税庁

上記の通り、相続税の方が累進課税が段階的であるため、贈与税よりも安くなる。

しかし、贈与税には前述した非課税制度がいくつかある。贈与の目的によっては、相続税よりも安くなる可能性があるため、その点のバランスを考慮したい。

「贈与すべきか?相続すべきか?」という問題は、決して簡単ではないため、これらは専門家への相談も積極的に活用してみてほしい。

次章では、税制だけでなく、これを含む資産管理のプロフェッショナルであるIFAについて、そのメリットを解説する。

IFA(Independent Financial Advisor)に相談することで得られるメリット

IFA(Independent Financial Advisor)とは、「独立系ファイナンシャルアドバイザー」のことだ。一般的には投資などによる資産形成のアドバイスを行う専門家だが、贈与・相続について詳しいIFAも多い。

IFAの役割と活用

IFAの役割は、「顧客の目的に応じた資産形成・運用のアドバイス」を行うことだ。そのため、IFAを長期的な投資パートナーとして迎え入れることで、効率よく資産形成・運用を実行することができる。

一方で、IFAを贈与・相続も含めたアドバイザーとして活用するケースも少なくない。資産形成・運用には必ず贈与・相続の話が付いて回る。贈与・相続に詳しいIFAが多いのもこのためだ。

「贈与税と相続税のどちらが安いのか?」と悩んだら、投資を含めた資産形成・運用のアドバイスも行える、IFAを活用してみてほしい。

IFAと税理士の違いとは?

顧客視点の投資アドバイスを行うのがIFAなのに対し、税理士は顧客の税金計算や節税アドバイス、または申告・納税の代行などを行う。

IFAと税理士は本質的に異なる職業だが、贈与税に詳しいIFAは多い。

というのも、資産形成・運用には必ずと言って良いほど贈与や相続の話が出るため、長期的な投資パートナーとしてIFAを活用する人も多いため、贈与に関する相談も多いのだ。

贈与・相続に強い専門家を探す場合は、IFAを相談先の選択肢として検討すると良いだろ

IFAマッチングサービスである「資産運用ナビ」ならば、あなたの条件にあったIFAを見つけることも難しくない。

「資産運用ナビ」に登録されている多くのIFAはプロフィールを登録しているため、目的のIFAが探しやすくなっている。

また、投資目的や地域からもIFAを検索できるため、自分に合ったIIFAを「資産運用ナビ」で見つけてみてほしい。

IFAに相談する際の注意点を知る

IFAに相談する際は、「税理士ではない」点に注意してほしい。多くのIFAは証券会社や金融機関から転身しているため、税理士資格を有しているわけではない。

したがって、投資アドバイスに加えて税理士業務も行なってほしいとなると、やはり税理士出身のIFAへ依頼すべきだ。

ただし、税理士並みに贈与・相続に詳しいIFAは存在する。贈与・相続も含めた投資アドバイスを受けたい人は、贈与・相続に関する専門知識を持っているかどうかを確認してから、依頼すべきIFAを決めよう。

まとめ

本記事では、贈与税の期限や仕組み、申告方法などについて解説した。贈与税は方法次第で節税効果が高いため、各種制度をしっかりと理解してから、贈与の方法やタイミングについて検討してほしい。

また、贈与税についてIFAに相談することで、各個人の状況に最適な贈与アドバイスを受けることができる。贈与税の知識は複雑なため、IFAから専門的な知識・ノウハウを教わるのも活用方法の一つだ。

現在、「資産運用ナビ」では無料相談を実施している。資産形成・運用も含め、贈与・相続に関する具体的なアドバイスを受けてみてはいかがだろうか。

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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