※本コラムは2023年10月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社アドバンスト・メディアは、AI音声認識AmiVoice®を軸として様々な分野にサービスを展開し、音声認識のソフトウェア・クラウドサービス市場においてトップシェア※を誇ります。
代表取締役会長兼社長の鈴木清幸氏へ、事業の強みと今後の成長戦略を伺いました。
株式会社アドバンスト・メディアを一言で言うと
社会の必要に応える会社です。
人とAIとがお互いに優れた点を融合し、共存する状態を「AISH(AI Super Humanization)」と名付け、その実現を目指しています。
創業の経緯
1986年、エンジニアリング会社の研究所でプラントのデータ収集や解析などの業務に勤しんでいた頃、第2次AIブームが日本に飛び火したことを契機にAIの世界に飛び込みました。
米国カーネギーメロン大学(CMU)でAI教育を受け、日本にAIを普及させる活動の12年間を経て1997年に当社を創業しました。
そのきっかけは、当時の音声認識分野のプリマドンナたちにCMUつながりで巡り会えたことです。
彼らは、DARPA※が主催する音声認識の競技会で、2年連続優勝という華々しい実績を有するCMUチームのメンバーたちでした。
- DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency):アメリカ合衆国の国防総省に所属し、高度な研究プロジェクトを推進するために設立された独立機関
当時、AIの普及に勤しむ一方で、「AIに指令を与える手段がキーボードでは普及も難しかろう」という懸念を抱いていました。
そのような中、彼らの技術に触れたことで光明が差しました。
日米同時の音声認識市場開拓の夢を彼らに持ち掛け、この前代未聞のプロジェクトが始まったのです。
事業概要
当社はAI音声認識AmiVoice®を中心とした多様な事業を展開しています。
当社にはこの分野に第2次AIの技術も取り込みながら取り組み続けてきたという歴史があります。
先駆者として市場を開拓してきた成果をもとに「AmiVoice®」というブランドを確立し、音声認識技術をベースにした音声AIを提供しています。
特にここ6、7年間は右肩上がりの成長を続け、音声認識のソフトウェア・クラウドサービス市場において、GAFAMをはじめとする他の企業を抑えてシェアNo.1の地位を築いています。
ビジネスモデル
7つの領域でサービスを展開していますが、最初に着手したのは医療分野です。
電子カルテや読影レポートなど、各種医療文書の作成を音声認識で効率化し、医療現場の働き方改革に貢献しています。
その後、自治体向けの議事録作成や、コンタクトセンターにおける文字起こし・感情解析など、様々な分野でのサービス提供に成功しました。
特にコンタクトセンター向け事業は柱となるまでに大きく成長してきました。
通話の全文リアルタイムテキスト化や管理者による複数通話同時モニタリング、さらに感情解析などで応対品質向上を支援する当社のサービスは高く評価されています。
またWebサイトやアプリケーションに音声認識機能を実装するためのAPI、SDK※や音声入力対応のアプリ/サービスの提供も行なっており、これら製造、物流、保険、金融などの業界向けの事業を加え、第1の成長エンジン・「既存コアビジネス」としています。
- SDK(Software Development Kit)とは、ソフトウェア開発キットの略称で、ソフトウェア開発の際に必要なプログラムやAPI、ドキュメント、サンプルコードなどをまとめてパッケージ化したもの
そして、第2の成長エンジンのビジネス開発センター・BDC本部が主導する建設業界向け建築工程管理のプラットフォームサービスと同サービスを活用した人材サービスにより、7つ目の領域へのサービス展開を行っています。
また、近年では様々な領域特化AI音声認識エンジンを利用可能とするAPIなどをクラウド提供するボイステックプラットフォーム「AmiVoice® Cloud Platform(ACP)」を開設し、エンジンの利用料金を収益源とする事業展開も進めています。
例えばGoogleやAppleなど、同様のモデルを展開する企業は大手を含め数多く存在しますが、汎用音声認識エンジンのみの1本勝負の彼らと当社とでは勝負にはなりません。
さらには、顧客が音声認識を何に使うのかを極めてきたことの違いもあり、その差は歴然であると思います。
競争優位性について
発話に対して、音響モデルの分析結果に基づき認識デコーダが大規模言語モデルによりテキストに変換する技術が音声認識です。
当社はエンロールメントという、利用者の声の登録が不要で自然発話に対応できるという他社が真似られないAmiVoice®を開発し、日本の音声認識市場を先駆者として拓いてきました。
また、2013年辺りより台頭したディープラーニング技術により、他社の音声認識も大量の音声データとテキストデータを対で学習させれば自然発話に対応できるようになりました。
しかしながら、このディープラーニング技術を加味した当社のハイブリッド型のAmiVoice®は、大量のデータ対の学習が不要で、自然発話にも高精度で対応できる優れものにさらなる進化を遂げています。
中長期の成長イメージとそのための施策
国内AI市場の成長は、2022年から2027年においてCAGR23.6%と予測されています※。
当社は、今期(2024年期)からの3年間を拡大期と位置付け、売上高100億円 (CAGR24.5%)、営業利益30億円の達成を目指しています。
2017年に構造改革を実施し、以降の3年間では既存フロービジネスの拡大を中心に売上高の2倍成長を達成しました。
続く3年間については、コロナウイルス感染拡大の影響もあり業績は足踏みする形になりましたが、この間に次の成長へ向けた仕込みを完了させることができました。
これにより、当社はいよいよ各施策を相互に連動させながら売上規模を拡大させていく段階に入っていきます。
そのベースとなるのが「AmiVoice® Cloud/Enginesプラットフォーム(AEP)」です。
今後、音声認識技術の進展に伴い音声認識プロダクトを開発・提供する企業の市場参入は続くことが想定されますが、それらの企業に当社のエンジンをご利用いただくことを考えています。
このエンジン利用料を積み上げることで、従来のプロダクト販売やソリューションビジネスのフロービジネスに、ストック型ビジネスを加えることによる拡大を図ってまいります。
アミボイスプラットフォームの連携で展開から拡大へ
ベースとなるAEPを含め、今後は複数のサービスを幾つかの目的特化型のプラットフォームとして市場展開をしていきます。
そして、各プラットフォームの普及・拡大を目的に有機的に連携させることで、会社全体の成長へと繋げていきます。
例えば、「AmiVoice® DX プラットフォーム」では、当社の音声認識技術を通じて日本の喫緊の課題であるDX促進をサポートします。
キーボードやマウス操作を声で代替・制御する“声キーボード”「AmiVoice® VK」と“声マウス”「AmiVoice® VM」などのAIパートナー※を提供し、さらに声によるRPA化への展開も考えています。
- 当社のAIパートナーとは、音声コマンドと知識ベースを有し、内蔵不要を特長とするAIアプリ/サービスのことを指します。
また、現在事業の柱となっているコンタクトセンター向け事業を多角化させるのが「AmiVoice® Communication Assist プラットフォーム」です。
感情分析を商談や接客などの営業の場に活用し、コンタクトセンターのオペレータのコミュニケーション能力向上をサポートします。
加えて、プラットフォームではありませんが、「AmiVoice® UPV」を活用して企業のWebサイトの情報提供(メディア)力を向上させ、Webサイトから来訪者を商談へ誘導するというメディア・トランスフォーメーション(AMX: AmiVoice Media Transformation)を実現させたいと考えています。
これは、コロナ禍を経てインサイドセールスの時代に突入した現在において、情報の提供をより効果的に行える環境を提供していく戦略です。
そして、その環境で「AmiVoice® GPT Platform」により、必要な情報を音声による自然なコミュニケーションを介してAIが探してくれる世界を実現していきたいと考えています。
これらの施策を連動させることで、当社はAISH(AI Super Humanization)という、「人とAIとがお互いに優れた点を融合し共存する状態」を目指していきます。
注目していただきたいポイント
当社は26年の長きにわたって目的の領域ごとに特化してデータを蓄積してきました。
このデータ蓄積に基づき進化させた高精度の音声認識エンジンこそが我々の強みです。
さらに、重要なことは、当社が社会課題を解決するサービスを開発・提供し続けていることです。
私自身、「日本人はロボットを作れても、ロボットの心は作れない」と揶揄された経験があります。
つまり、高度な技術をいかに活用し、顧客にとって必要なものを生み出すのかを考え、それを開発し、提供してきたことが他社との差別化ポイントであると考えています。
我々はこれまで、GAFAMを含む他社を寄せ付けない音声認識事業を日本で先駆的に展開してきました。
そして、これらの実績に基づき、日本の喫緊の課題であるDX促進の武器となる、AIパートナーの導入・展開を本格的に行っていきます。
この事業展開にも合わせてご注目いただきたいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
昨今、ChatGPTが開く未来への期待に世の中がわき立っています。
これは、人が発する指令(プロンプト)を通じて、AIが有用なモノやコトを提供する未来への願望に他ならないと思います。
我々は今まさに、26年間の企業活動を経てAISHの時代を目前に捉えています。
また、世の中が望む未来を連れてくる、先駆者の立ち位置にも到達しています。
投資家の皆様には、当社がこれからも未来を連れてくる会社であり続けることを信じて欲しいと願っています。
本社所在地:東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 42階
設立:1997年12月
資本金:69億3031万円(2023年3月末現在)
上場市場:東証グロース(2005年6月27日上場)
証券コード:3773