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【4434】株式会社サーバーワークス代表取締役社長 大石良氏「クラウドではたらきやすさの実現へ」

※本コラムは2023年10月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社サーバーワークスは、AWS専業のクラウドインテグレーターとして持続的な成長を実現しています。

創業の経緯や事業の概要、そして中長期の成長戦略について、代表取締役社長の大石良氏に伺いました。

目次

株式会社サーバーワークスを一言で言うと

働きがいと成長の両立を目指すAWS専業のクラウドインテグレーターです。

沿革

創業の経緯

私の親族が会社を経営していたこともあり、中学生の頃には自身も将来は会社を経営するものだと考えていました。

ただ学生起業家であると、視野狭窄を起こしてしまう恐れもあったので、まずは総合商社の丸紅に入社しました。

4年半が経ったところで従事していた事業にひと区切りがつき、これを独立のきっかけとし、2000年に当社を設立しました。

ターニングポイント

創業当初は大学向けの合格・不合格の案内サービスを取り扱っていました。

しかし、大学の合格発表は2月の特定の日の午前中に集中し、その短時間のためだけにサーバーが200台も必要で、費用対効果が悪く解決策を探していました。

そのような中、2007年に現在のAWSにつながるサービスに出会い、その可能性に魅せられたことが一つの転換期となりました。

1時間10円の格安で仮想コンピューターを借りることができるもので、テスト利用を経て当社でも導入を決めました。

自社での取り組みを通じてAWSがITの世界を大きく変える存在であると確信したため、これを広く日本の企業の皆様に使っていただこうと考え、2008年の事業化に至りました。

上場の経緯

当社は2019年に上場を果たしましたが、そのきっかけは2011年の東日本大震災に遡ります。

当時、日本赤十字社さんより、ダウンをしてしまったサイトをAWSを使って復旧する依頼を受けました。

復旧自体は30分程度で完了しましたが、これをきっかけに義援金システムの構築も当社でやらせていただくことになったのです。

AWS上でわずか48時間で完成させたシステムを通じ、その後2年半をかけて3200億円の義援金を集めきることができました。

AWSが災害時にも機能することや、AWS専業インテグレーターとしての当社の認知度が高まり、徐々に大企業からの依頼もいただくようになりました。

これと同時に、AWSという事業がインフラの一部であることを認識するようになりました。

AWS自体はAmazonの事業の一部であり、信頼もありますが、我々の信用力がお客様の心配事になってはいけないと考えました。

当社も信頼を獲得し、AWSという素晴らしいインフラを安心して使っていただける環境を作ろうと思い、翌年の2012年より本格的に上場の準備を始めていきました。

事業内容

概要と特徴

AWSはコンピューターやデータをクラウド上で提供するAmazonのサービスで、ウェブサイトやアプリ運用、データ保存に使われるものです。

当社はAWSの導入支援(クラウドインテグレーション)、請求代行サービス(リセール)、運用代行・監視サービス(MSP)の3つの柱をワンストップで提供しています。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

導入支援は、SI(システムインテグレーション)に近い領域で、お客様の要件をもとに当社のエンジニアがAWSを活用して設計を行い、実装していくビジネスです。

請求代行は、当社を経由してAWSを購入していただくというものですが、他社にはない我々独自のサービスを組み合わせています。

AWSの決済手段は基本的にクレジットカードで、かつドル払いです。

当サービスによって日本円でお支払いいただくことが可能になりますし、AWS料金が安くなるケースもあります。

そのため、国内の大企業を中心にご利用いただいています。

リセール売上を構成する要素のうち、我々がコントロール可能なものとしてはアカウント数とARPU(単価)の2つがあげられます。

アカウント数に関しては右肩上がりで順調に伸び続けています。AWSの底堅い需要の中で、我々がお客様にしっかりとリーチできていることが理由です。

単価についても上昇傾向にはありますが、意図的に上げすぎることは良くないと考えています。

実は、導入後のコンサルティングサービスにおいて、当社ではAWS利用料のコントロールの仕方をお客様にレクチャーし、利用単価をセーブすることに注力しています。

その結果、お客様の満足度が上がり、次のシステムもAWSを活用してみよう、といった好循環を生み出すことに成功しています。

このサイクルが、このサイクルが、結果的にARPUが少しずつ上昇しているという結果に繋がっていると考えています。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

内製化ブームとサーバーワークスの親和性

昨今のITの世界では、「内製化」が非常に大きなキーワードになっています。

ITの内製化とは、企業が自社内でITシステムを開発・運用する戦略で、外部への依存を減らしていくものです。

そして、我々はこの内製化と非常に相性が良いポジションにあります。

従来型のSI型企業は、お客様に技術を移転することを嫌がります。

しかし、当社はリセールがセットになっており、積極的に技術を移転することができます。

お客様の内製化の要望に対して支援を行う代わりに、当社を通じてAWSを購入していただきます。

当社エンジニアが支援を行いながらお客様が自社で開発を進めることで、薄くではありますがAWSの利用料が増加し、当社もマージンを得ることができるのです。

このため、当社がAWS技術をお客様に移転しても、リセールや保守サービスなどのストックビジネスで売上を伸ばすビジネスモデルが構築できています。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

戦略的協業契約(SCA)について

当社はAWSと4年間の戦略的協業契約を結びました。

これは、特定の領域でのAWSビジネス拡大を目標に、2社で同額ずつ投資を行うという内容です。4年間で約290億円(約2億ドル、1ドル135円計算)の新たなビジネスを生み出すことを目指しています。

注力領域は「エンタープライズクラウドの共通基盤の整理・構築支援」「中小企業(SMB)のDX推進」「クラウドコンタクトセンター構築支援」「デジタル人財の更なる強化」の4領域です。

特に「デジタル人財の更なる強化」については、パーソルクロステクノロジーと共同でジョイントベンチャーを設立しました。

この事業を通じてAWSエンジニア人材を年間100人程度育成し、お客様のプロジェクトを支援する取り組みを、来年の4月から本格的にスタートしていきます。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

足元の業績は当初想定を大幅に上回って推移しています。

今後も中長期的な企業価値向上に向け、先述したAWSとの戦略的協業契約を中心に持続的な成長を目指していきます。

また、当社は一昨年と昨年に子会社の設立とM&Aを実行しました。こちらでは子会社2社の今後の成長戦略について詳しく説明させていただきます。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

G-gen社

当社(サーバーワークス)はAWS専業の会社としてマーケットから認識されていると考えています。

そのため、Google CloudやMicrosoft Azureにも事業を広げてしまうと、ブティック型という当社の強みが失われてしまいます。

しかし、お客様からはこれらのサービスも利用をしたいとリクエストがあることも事実です。

AWSは非常に優れたサービスですが、全ての分野のマーケットで勝ち切っているとはいえません。特に大量データ分析に関しては、Google CloudのBig Queryという強力な製品があります。

そこで、これらのニーズにお応えし、さらなる成長を図るために2021年に株式会社G-genを設立しました。

最大の特徴はGoogle CloudとAWSの2つをカバーするエンジニアが在籍していることです。

G-genはサーバーワークスのトップクラスのAWSエンジニアが転籍して始まった会社でもあります。両方のクラウドの強みを理解しているエンジニアは業界内でも極端に少なく、同社の強みとなっています。

これを活かし、7月にはデジタル庁のガバメントクラウドの構築案件をG-genとサーバーワークスが両方受注しました。

デジタル庁のメインクラウドであるAWSを理解した上で、Google Cloudも設計することができる会社はG-genの他にありません。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

今後はエンタープライズのプロジェクトを取っていくことが成長の鍵であると考えています。

エンタープライズマーケットにおいて、すでにAWSは安全な選択肢であると認識されています。

一方、後発のGoogle Cloudに関しては、安定性の評価ではAWSに遅れをとっている部分があります。

我々の事業を通じて、信頼性の高いプラットフォームであると認識していただくことがポイントです。

TOPGATE社

TOPGATE社は、Google Cloud上でのアプリケーション開発に秀でた会社です。昨年のM&Aにより当社の子会社となりました。

これまで我々はアプリケーション開発にはノータッチでしたが、同社を買収したことで、最新のクラウドインフラの設計から、アプリケーションの開発領域までを一貫して提供をすることが可能になりました。

一方、この分野は労働集約型のビジネスであります。

今後も採用等で人員を強化しながら成長させ、サーバーワークスグループ全体のケイパビリティも増やしていきたいと考えています。

株式会社サーバーワークス 2024年2⽉期 第2四半期 決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は現在、新しい取り組みを矢継ぎ早に実行しています。

AWS社の戦略的協業契約やジョイントベンチャー設立など、いずれも大きな取り組みであり、投資も積極的に行なっています。

そのため、来期も含めショートタームでは皆様のご期待に添えるような大幅な利益率の改善は難しいかもしれません。

しかしながら、我々は常に「長期的な利益につながるかどうか」という視点で経営の意思決定をしています。

そのため、中長期的な成長余地や利益率の向上についてはとても強い自信を持っています。

ぜひ投資家の皆様にも、中長期的な目線で当社を見ていただけますと幸いです。

株式会社サーバーワークス

本社所在地:東京都新宿区揚場町1番21号 飯田橋升本ビル2階

設立:2000年2月21日

資本金:3,250,993,939 円 (2023年8月末日現在)

上場市場:東証スタンダード(2019年3月13日上場)

証券コード:4434

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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