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【3939】株式会社カナミックネットワーク代表取締役社長 山本拓真氏 「医療介護のDX化を通じて日本をより元気に」

※本コラムは2023年11月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。

国とともに医療介護領域のDX化を推進する株式会社カナミックネットワーク。街づくりを軸に、ITを活用して医療介護を支えています。

代表取締役社長の山本拓真氏に事業概要や中長期戦略について詳しく伺いました。

目次

株式会社カナミックネットワークを一言で言うと

「人生を抱きしめるクラウド」を提供する会社です。

子育てから介護まで、人の幸せを支えるクラウドサービスの提供が当社の企業理念であり目的です。

また、人生の中で医療や介護は特別なものではなく生活に必要なことです。

そのため、「人生を抱きしめるクラウド」が当社にとって非常に重要なキーワードだと考えています。

会社の沿革

株式会社カナミックネットワーク代表取締役社長 山本拓真氏

設立の経緯

2000年に制定された介護保険制度により新しく介護の市場が開放されました。

介護は医者や看護師、ヘルパーといった多職種が提供するサービスであり、アナログのやり方では限界があります。

この課題を解決するためには、「各地域でネットワークのプラットフォームを作り、それをインターネットで運営することが重要である」との考えのもと、当社は設立されました。

以来、医療介護連携や介護ソフトといったITサービスを提供しています。

多くの競合他社が電子カルテやケアプランソフトを提供する中、当社は患者様や要介護者様を軸とした地域連携ソフトの特許を持つことで、これを大きな差別化ポイントとしてきました。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

ターニングポイント

インターネットを活用したサービスがまだ主流ではなかった2000年の創業当初から、当社はSaaSのサービスを提供してきました。

その中で転機となったのは2006年の法律改正です。

軽度の要介護者は自治体が管理することになり、行政と民間の連携需要の高まりから当社のソフトが急速に普及しました。

また、2011年には東京大学の高齢社会総合研究機構と柏モデルに携わりました。

地域全体の医療介護リソースをまとめてサービス展開する形を目指したもので、2015年に法律化されたことで当社のソフトも2度目のブレークを果たし、広く普及していきました。

その後、2022年には株式会社アーバンフィット、2023年にはエンジニア会社の株式会社Ruby開発のM&Aを実行しました。

これにより、ヘルスケアやヘルステックまで含めた、幅広い領域でサービスを提供する会社となりました。

上場の経緯

2016年に東証マザーズに上場し、その後2018年には東証一部、そして2022年にプライム市場に上場しました。

当社は自治体や医療法人、介護法人と契約を結び、サービスを提供しています。

自治体や医療介護の領域は税金や社会保険料で賄われているため、当社の提供するサービスは社会インフラとして非常に重要な役割を担っています。

また、ITインフラの提供により社会保障の効率化やDXを実現しています。

このような役割と立場の重要性から、情報を透明化し信頼を獲得するべきであると考え、上場を決意しました。

事業の概要

当社は医療・介護・健康分野に特化したITサービスの提供とDX化の推進を行っています。

「人生を抱きしめるクラウド」というキャッチコピーのもと、ヘルスケアプラットフォームを通して市民や医療介護従事者、行政の方々に対して様々なサービスを提供しています。

その中でいくつかのフェーズを設定しています。

第1フェーズではSaaS型クラウドサービスで医療介護従事者の方々が使うシステムを提供し、ユーザーの獲得を目指します。

第2フェーズではそのITインフラのクラウドプラットフォーム化を行い、インターネット広告や人材マッチングといった様々なサービスを提供します。

第3フェーズは、to C 向けのフィットネスジムを軸としたヘルスケアサービスを提供するブランディング期に当たります。

そして第4フェーズの海外展開では、メイドインジャパンのヘルスケアの世界展開を目指しています。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

街づくりを軸とした事業展開

また、当社は「街づくり」を一番の軸とし、高齢者支援と子育て支援の両輪を支えるクラウドサービスを提供しています。

日本を活性化するためには高齢者支援と子育て支援が共に必要だと考えており、この両方を支援することで街づくりに貢献していきます。

そして、この実現のために行政・法人ともにサービスを提供し、これらが融合する分野で特許を取得しています。

このように、現場のソリューションと地域のソリューションの両方を手掛けているのが当社の特徴となります。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

事業の強みとシェア拡大の仕組み

我々の事業の強みは、長期間高いニーズがある領域においてDXを推進していることです。

少子高齢化が進む日本では、医療介護は景気に左右されず、長期にわたり高いニーズがあります。

既に国内には、未就学児よりも要介護者の方の数が上回っています。

そのため、少人数で多くの高齢者をケアできる体制を整える必要があり、DX化は必要不可欠です。

また、医療介護業界には高い参入障壁があります。例えば、3年に1度はレセプトが変更されるため、介護ソフトの作り直しが頻繁に発生します。

さらに、国から要求される内容が複雑で、相当な業務・業界知識が必要となります。

そのため、他企業が参入しても事業として成り立たせるのが難しく、ここに我々の優位性があるのです。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

また、一般的なSaaSサービスが広告宣伝費をかけて一気にシェアを拡大させる一方、当社のサービスは口コミによって徐々に普及していく特徴があります。

まず自治体と契約して地域連携を無料で提供し、地域で無料ユーザーが増えたところで介護ソフトを販売していきます。

これにより、地域全体で当社のサービスが導入され全体最適化につながっていきます。

また、業務全般をITで完結できる介護ソフトは当社にしかありません。

そのため、ある程度企業規模が大きくなりアナログでは対応できなくなった法人や、その地域の自治体が当社のソフトを取り入れた法人からリプレイスの需要が生まれてくるのです。

このように、広告宣伝費をかけずに口コミで普及できる点も、大きなメリットとなっています。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

顧客数の拡大余地

近年、介護事業者が国に提出した介護データを統合し、介護に関する指標を統一する動きがあります。

この標準化はDXなしでは成り立ちません。つまり国を挙げて介護DXが推進されており、そこには当社の価値提供の機会が非常に多く存在しています。

さらに、訪問看護も近年増加傾向にあります。

訪問看護は医療保険と介護保険の両方を使う特殊なサービスであり、そのため非常に複雑な業務構造を持ちます。

従来、介護保険は電子請求で医療保険は紙請求でした。

しかし、今後は医療保険も電子請求に代わり、マイナンバーのオンライン資格確認が必要になります。つまり、業務が大幅に変化するのです。

当社はこのDX化を国とともに推進しているため、訪問看護の点でも価値を発揮する機会が増えると考えています。

中長期の成長イメージとそのための施策

中長期戦略として、先ほど説明したフェーズ1,2,3を引き続き伸ばすともに、第4フェーズの海外展開により外貨を稼いでいきたいと考えています。

フェーズ1,2,3の成長において我々が捉えるポイントは健康寿命の延伸です。

当社は要介護者のデータを非常に多く保有しており、年齢と健康状態によりその人が要介護者になるか否かが分かります。

実は、一度要介護者になると、9割の方は自立した生活に戻れていません。

つまり要介護者にならないことが非常に重要であり、若いうちから体の基礎値を上げることが大切なのです。

そのため、医療連携やメディカルフィットネスの観点で事業を行い、DX化やアプリによる見える化にも取り組んでいます。

このような要介護者を増やさないためのノウハウは、グローバルでも重要であり需要が高い分野です。

医療保険や介護保険の制度は各国で異なるため、海外展開は難しいと考える方も多いと思います。

しかし、我々の取り組む地域づくりや医療介護の総合管理に、これらの法律はあまり影響を受けません。

そのため、グローバルにも展開しやすい領域なのです。

また、日本は世界一の高齢化社会ですので、高齢化を乗り切るノウハウは今後高齢化を迎える各国に活かされていくでしょう。

国内事業で試行錯誤をしながらサービス品質を高め、これを海外展開することで外貨を稼ぐ体質を目指していきます。

対象となるのは、健康への意識が高く、長生きを目指す人が多い先進国です。時期としては2025年頃からの展開を目標としています。

M&A戦略の概要

事業の補強・拡大を行う方法として、M&Aも積極的に検討していきます。当社との親和性が高く、下図の4領域に該当する会社を包括的にグループ化していきたいと考えています。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

我々はIT企業ですので、IT開発力を非常に重要視しています。

また、行政や医療介護法人などと親和性の高いサービスであれば、当社のネットワークを有効活用することでスケールしやすいというメリットもあります。

蓄積されたデータやノウハウも活用してより多くの領域をカバーすることで、ヘルステックカンパニーとしてのポジションを突き詰めていきたいと考えています。

注目していただきたいポイント

フィットネス事業は身近にあり体験もできるため、当社の事業の中では目立つ存在だと思います。

しかし、我々が注力しているのはITであり、それは売上構成にも現れています。

まずは、当社をITサービス会社だと認識していただけたらと思います。

また、当社は利益率が高いという強みがあります。

これにより、顧客から得た利益を再投資できるため、事業の継続性や持続的な成長性を高めることができます。

さらに、黒字経営にも非常にこだわりを持っています。

このように、当社の堅実な経営と利益率の高さにもご注目いただければと思います。

株式会社カナミックネットワーク 2023年9月期(第23期)決算および会社説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

当社は社会の裏側で自治体や医療・介護法人の業務を支えており、皆様の生活をより良くするために日々奮闘しております。

また、ヘルスケアを通じて日本をより良くし、メイドインジャパンで世界にチャレンジしていきます。

今後の日本を元気にしていくために、末永く応援していただけると幸いです。

株式会社カナミックネットワーク

本社所在地:東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー31階

設立:2000年10月20日

資本金:3億2,412万円(2016年11月16日時点)

上場市場:東証プライム市場(2016年9月14日上場)

証券コード:3939

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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