※本コラムは2023年11月8日に実施したIRインタビューをもとにしております。
メッセージング領域において社会の裏側を支えているユミルリンク株式会社。
代表取締役社長の清水亘氏に事業内容や中長期戦略について伺いました。
ユミルリンク株式会社を一言で言うと
メッセージングテクノロジー領域のプロフェッショナル集団です。
沿革とターニングポイント
当社のターニングポイントは親会社の変遷に紐づいています。
2002年にサイバーエージェント、2005年にはサイボウズのグループにそれぞれ入り、そして2011年からは阪急阪神グループに所属しています。
そのため、これまで3つの異なるグループの風土を経験してきました。
また、財務改善の成功も転換点となりました。
創業来、当社は受託開発により拡大を続け、また同時に事業の多角化も進めていました。しかしながら、2005年頃には経営が傾き債務超過に陥ってしまいました。
そのため、2007年から2009年にかけては、経営の立て直しを目的に事業の選択と集中を実行しました。
この取り組みにより、メール配信やSaaSサービスを中心に増収・増益を実現し、2010年頃には財務体質の改善を図ることができました。
以来、当社はSaaS事業を中心に成長を継続しています。
上場の経緯
当社は2021年9月にグロース市場(旧マザーズ市場)への上場を果たしましたが、これについては既に2004年ごろから目指していました。
法人向けのソフトウェア事業というビジネスモデルの性質上、IPOにより知名度と信用力を高める必要性を感じていたことが理由です。
一時は断念した経験もありますが、その後親会社となった阪急阪神グループより、2017年に次の成長過程として上場のお話をいただきました。
そこで、2020年の東京オリンピックのタイミングでの上場を目指し、具体的な準備を進めていきました。
コロナウイルス蔓延の影響により、結果的には1年後ろ倒しの形となりましたが、人材の獲得や顧客からの信頼獲得に繋がる重要な転機であったと認識しています。
事業の概要と特徴
当社は、法人向けのソフトウェアサービスをSaaS型で提供しています。
特にプッシュ型の情報通知サービスを強みとしており、具体的には自治体からその地域の住民へ、または企業から顧客や消費者に向けた配信などを対象としています。
メール配信サービスが現在の主力事業となっており、売上構成で見ると全体の80%強を占めています。
その他、売上の15%ほどを占めるSMS配信サービス、およびWebアンケートや認証サービスなどを提供しています。
SaaS型のビジネスモデルを採用しているため、一度契約していただいた法人様には中長期的にサービスをご利用していただくケースが多いことが特徴です。
また、当社はソフトウェアの性能追求に注力しています。
これにより、配信処理の高速化や膨大な量のメッセージを正確に配信することを実現してきました。
実は、送信先ごとに効率性の高い配信方法というのは異なります。
それぞれに適切な配信方法をソフトウェアで制御することで、早く、そして安定した配信が実現できている点も当社事業の特徴です。
エンタープライズに支持される理由
ソフトウェアの性能追求による効果は、膨大な量の配信を必要とする大手企業への導入実績としても表れています。
当社製品は、1度に1,000万ユーザー、また1日あたり4,000万ユーザーなどといったかなり大規模な配信にも対応することができます。
また、サービスを停止させない・トラブルを起こさないといった点にも細心の注意を払うことで、高いサービス安定稼働率を維持しています。
ソフトウェアの性能追求とサービスの安定化という取り組みにより、この規模の配信を実現する仕組みをもつ企業としては市場からも一定の認知をいただいています。
また、最近では口コミによる波及効果も高まっており、金融機関や人材系などにも顧客層を広げることができています。
専門性の高いサービス運用
メール配信サービスを開始した2002年から、当社では送信した記録を分析する業務を行っています。
具体的には送信先ごとに最も効率の良い配信方法を特定したり、遅延を防ぐための安定性を検証したりしています。
そしてこの最適値をサービスに活かすことで、他社と比較しても圧倒的な品質で配信ができています。
このような運用を自社で行う企業はほとんどありません。
また、現在当社は月間約80億通のメッセージを配信しており、国内事業者の中ではトップクラスの配信量を誇っています。
これだけ膨大な量のメールデータを分析し、サービス品質の向上に還元できることも、当社の優位性となっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
現在、メール送信市場とSMS送信サービス市場は合計で約600億円の規模です。(以下の図は情報が古く、市場規模は約500億円となっています。)
その中で当社の売上は約21億円で、まだそれほど大きなシェアを獲得しているわけではありません。
そのため、まずはこれら既存市場におけるシェアを拡大していくことが成長戦略の一つ目の柱となります。
また、法人向けのSaaSサービスは今後も継続して事業の軸に置きます。
近年、コミュニケーション手段は多様化を続けています。
これに合わせ、LINEやWebプッシュ通知、Facebook、X(旧Twitter)などの通知手段を増やしていき、メッセージングプラットフォーム化を推進することで持続的な成長を図ってまいります。
各通知手段の特徴や特性を生かすことで、受け取り側の状況に合わせて頻度やタイミングを変化させ効果的に配信できるサービスに仕上げたいと考えています。
これが実現すると、コミュニケーションプラットフォーム市場やデジタルマーケティング市場にも参入することになるため、より大きな市場で戦っていくことができると認識しています。
シェアの拡大余地
約4,000社ある上場企業のうち、現在当社と契約していただいている企業数は300弱です。
そのため、上場企業の中でもまだ導入していただいていないミドル・スモール層を中心に顧客を広げていきます。
なお、この場合のミドル・スモール層とは上場企業のミドル・スモール層を指し、引き続きエンタープライズを中心にサービスを提供していく方針に変更はありません。
また、現在約2割のお客様が複数のサービスを併用してご契約いただいていますが、Webプッシュ通知サービスや新たなメッセージチャネルの増設により、今後はクロスセルもしやすくなると考えています。
スマートフォンの普及やeコマース市場の拡大により、企業がメッセージを送信する機会は増え続けています。
これに伴い、2017年から2021年まで継続してご利用いただいているお客様の配信数は約1.7倍に増加しています。
このように、配信数の増加に伴う契約単価の向上、およびクロスセルによる顧客単価の向上が今後の成長を牽引していくと考えています。
また、この実現に向け、製品・サービス開発や営業を行う人材の確保にも取り組んでまいります。
注目していただきたいポイント
技術力をベースにコミュニケーションインフラを提供するというビジネスモデルにより、当社は国内メッセージングサービス事業者の中でも非常に稀有なポジションを確立しています。
また、メッセージングサービスを通じて様々な成長市場に関わっています。
例えば、今期リリースさせていただいた「Cuenote SMS for LGWAN」は自治体のDX化需要に応えるサービスです。
また、航空券の予約確認メールや証券会社の約定確認メールに代表されるように、顧客サービスの質の向上やデジタル化が共通の課題となっています。
社会インフラとして確実・正確にメッセージを届けるという本来の役割はもちろんのこと、サービス品質向上や業務効率化といった需要にも当社製品が貢献しているという点には、ぜひご注目いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
主力事業のメール配信サービスは、サービス開始以降顧客と収益の増加を遂げており、この成長は今後も続いていくと考えています。
また、グローバルで見るとメッセージ送信ベンダーは20億ドルや120億ドルといった企業価値で評価されています。
当社も企業価値や株主価値の向上を図ってまいりますので、今後の成長に期待してご支援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都渋谷区代々木2-2-1 小田急サザンタワー12F
設立:1999年7月
資本金:273,853,860円(2023年11月アクセス時)
上場市場:東証グロース市場(2021年9月22日上場)
証券コード:4372