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【6613】株式会社QDレーザ 事業概要と成長戦略に関するインタビュー

※本コラムは2024年1月18日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社QDレーザは独自で開発した量子ドットレーザ1や半導体レーザ2を活用し、様々な業界に対して新たな技術を提供しています。

代表取締役社長の菅原充氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。

目次

株式会社QDレーザを一言で言うと

半導体レーザを活用して新しいアプリケーションを創出し、「人類の『できる』を拡張する」会社です。

QDレーザの沿革

株式会社QDレーザ代表取締役社長 菅原充氏

創業経緯

私は(株)富士通研究所に入社後、半導体レーザの基礎から応用までの研究開発に従事していました。

そして2002年から東京大学を交えて量子ドットの研究開発を行い、その後2004年には量子ドットレーザの開発に成功しました。

量子ドットとは大きさがナノメートル(10億分の1メートル)サイズの半導体微粒子のことです。

しかし2001年頃のITバブル崩壊とともに、(株)富士通研究所はデバイス事業を他社へ売却し、研究成果の出口を無くしていた我々は技術を実用化すべく、スピンオフを決断しました。

そして、2006年4月に富士通(株)と三井物産(株)のベンチャーキャピタルの出資を受ける形で当社を創業しました。

上場への茨道

富士通(株)からのスピンオフには成功したものの、事業は中々実を結びませんでした。

2009年には光通信用量子ドットレーザを世界で初めて実用量産化しました。

しかし、通信領域への参入は規格を合わせることが非常に難しく、参入障壁が高いことが分かりビジネスとして成り立ちませんでした。

そこで方針を転換し、2011年にセンシングの分野に活用できるレーザモジュールQLD1061を商用化しました。

また、2014年には材料加工等の分野で活用できるDFBレーザ3モジュールを開発しました。

そして2015年からは網膜投影技術の事業化を進め、医療・福祉用途やウェアラブル情報端末としてのレーザアイウェアを開発しています。

このように、製品のポートフォリオの多角化を進めることで、当社は徐々に事業を拡大していきました。

そして2021年2月に東証マザーズ市場(現東証グロース市場)に上場しました。

現在はコア技術を駆使して、通信やセンシング、材料加工、そして医療・ヘルスケアの分野に注力しています。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

QDレーザの事業の概要と特徴

概要

当社は自社工場を持たず、製品の企画・設計を行い国内の外注先へ製造を委託(材料のウエハ4を除く)しているセミファブレス企業です。

事業はレーザデバイス事業とレーザアイウェア(視覚情報デバイス)事業の2つです。

またレーザを活用した製品は、通信、センシング、材料加工、ディスプレイの4用途に分かれています。

この技術や製品の提供を通じて、国内の様々な企業へビジネスを展開しています。

事業における優位性

高いコア技術と競合優位性

当社は量子ドットレーザを作る材料の技術、デバイスを設計する技術、光を制御する技術の3つを持っています。

まず、ナノメートルサイズの量子ドットを作るための半導体結晶成長技術があります。

半導体の製造において、半導体デバイスの性能が結晶の品質に大きく依存するため結晶成長の技術は非常に重要です。

そして、様々な用途に使える最適なレーザを設計する技術があります。

この技術を活用し、世界最速の精密加工用半導体レーザの設計を実現しています。

また、出来上がった1ミリメートルのレーザチップを超小型化することで、装置に付属させたり、光を制御してあらゆる色のレーザー光を作り出したりすることができます。

さらに、網膜投影(網膜上に映像を投影すること)のディスプレイへの応用技術は40以上の特許を保有しています。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

半導体レーザ業界唯一のセミファブレス体制

我々は半導体レーザ業界で唯一のセミファブレス体制を敷いています。

結晶成長を行う設備を除いて、半導体製造に必要な設備や工場を持たないことで、固定費がかからないことが最大のメリットです。

また、製造規模にとらわれることなく、数台〜数千万台と顧客のニーズに対して柔軟に対応できる点もメリットです。

そしてこのセミファブレス体制によって、小さな発想やニーズを起点に新しい製品を創り出せることが、当社の強みだと考えています。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

自由度の高い開発環境と実用化

当社にはコア技術を持つ人材を中心に、非常に優秀な人材が集まっています。

当社では自分で考えた新しい技術を活かして、新たな製品を創り出していくことができます。

これは技術者にとっては非常に重要なことで、自分の技術が実用化に繋がる喜びはものづくりをする上で欠かせないものだと考えています。

また、網膜投影の技術に関しては40以上の特許を保有しており、TDK(株)やソニー(株)等と協業して実用化に向けた製品の開発や販売を行っています。

今後、網膜投影の技術がAR・VR等を中心に活用され、また応用するための技術開発も進むことで、実用化に繋っていくと思います。

このように、自由度の高い開発環境と、その技術を実用化していくための企業との業務提携は大きなメリットだと考えています。

QDレーザの中長期の成長イメージとそのための施策

レーザデバイス事業の戦略

今後のレーザデバイス事業の戦略について3つお話しします。

まず1つ目は、これまで培ってきた技術や製品をもとにした新しいアプリケーションの開発です。

現在、当社にはレーザ加工や顕微鏡、血液検査・脳検査等のアプリケーションが10種類以上あります。

これからはアプリケーションの種類を増やしながら他業界へ進出していく方針です。

次に2つ目は製品をソリューション化し、ユーザーの利便性を高めることです。

具体的には、プラグ・アンド・プレイ5をイメージして貰えればと思います。

当社の製品を差し込むだけでユーザーの求める機能を全て満たすことができるようにすれば、利便性が高まり更なる拡販を見込めます。

そして3つ目は、量子ドットレーザの通信業界への応用です。

量子ドットレーザを用いることで、従来の半導体レーザよりも非常に省電力で情報の伝達を行うことができます。

そして2030年頃には車やスーパーコンピューター、データセンターにより光配線の需要が急速に高まると推測されています。

この需要を捉えるためにも、量子ドットレーザの通信技術への応用化を進めてまいります。

今後はこの3本柱でレーザーデバイス事業を成長させていきます。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

レーザアイウェア事業の戦略

過去より多くの資金を投入してきたレーザアイウェア事業ですが、現在既に回収フェーズにあります。

これまで、製品の小型化やUIの向上に力を入れてきました。

今後はこの技術や製品を活用し、医療・ヘルスケア分野での更なる実用化を目指します。

直近では2023年2月にRETISSA MEOCHECKの販売を開始しました。

この製品は誰もが気軽に眼の健康状態を確認できるツールです。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

このように「眼」に着目した製品は多数発売されており、視力が悪い、視界が狭い等を抱えているロービジョンの方々の視覚サポートやタクシードライバーの日頃の眼のチェックなどに応用できると考えています。

また、眼の健康サービスに関しては集めた情報をクラウド化していき、眼疾患の早期発見や予防に関わるビジネスを展開することも視野に入れています。

これまで技術的にも難易度が高く、どの企業も足踏みをしていた網膜投影の分野に対して、当社の高い技術力と製品力で新しい価値を創造していきます。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

注目していただきたいポイント

当社は非常にユニークな会社だと考えています。

セミファブレス体制のビジネスモデルを活用し、大企業に比べて様々なニーズに対応できるコア技術とコア人材の存在が強みです。

そして、その自由な発想で今後も新しい技術をどんどん生み出していける会社です。

最近は光を使って様々なことをしたいと考える企業が非常に多くなってきています。

少し言い過ぎかもしれませんが、時代が当社に追いついてきたのではないかと考えています。

今後、ユニークなビジネスモデルで半導体レーザ業界に新しい技術を生み出していく、当社の成長性に注目していただければと思います。

株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

先ほども申しましたが、我々は非常にユニークな会社だと思います。

今後は、この技術力を持って日本だけでなくグローバルに活躍できる企業へと成長していきたいと考えています。

新しい世界を創造していく会社として、先陣を切って事業も成長させていきますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

株式会社QDレーザ

本社所在地:〒210-0855 神奈川県川崎市川崎区南渡田町1番1号京浜ビル1階

設立:2006年4月24日

資本金:26,820,000円(2024年2月アクセス時点)

上場市場:東証グロース市場 (2021年2月5日上場)

証券コード:6613

  1. 量⼦ドットレーザ(Quantum Dot Laser:QDL)は、活性層に半導体のナノサイズの微結晶である量⼦ドット構造を採用した半導体レーザのこと。既存の半導体レーザと⽐較して温度安定性、⾼温耐性、低雑音性に優れるという特徴がある。
    出典:株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料
    ↩︎
  2. 半導体に電流を流してレーザ発振させる⻑さ1mm程度の⼩型素⼦のこと。固体レーザ、ガスレーザと⽐較して、超⼩型、数10GHzに達する⾼速変調特性、数10%の⾼い電⼒光変換効率、波⻑の制御性等の優れた性質を有している。1980年代に光通信用、CD/DVDなどの光記録用の光源として普及した。
    出典:株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料
    ↩︎
  3. 分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザのことで、半導体レーザ内部に回折格⼦を設けて単⼀波⻑でレーザ発振することを可能としたレーザ。ファイバレーザの種光のように狭い波⻑域に光出⼒を集中させる必要がある用途に適する。
    出典:株式会社QDレーザ 2024年3月期第3四半期決算説明資料
    ↩︎
  4. 半導体素子製造の材料である。高度に組成を管理した単結晶シリコンのような素材で作られた円柱状のインゴットを、薄くスライスした円盤状の板である。呼称は洋菓子のウエハースに由来する。
    出典:Wikipedia ウェハー
    ↩︎
  5. プラグ・アンド・プレイ(Plug and Play、PnP)とは、パソコン本体に周辺機器や拡張カードを接続した際に、OSが自動的にその機器を認識して必要な設定を行なう仕組みのこと。日本語で「差し込んで使う」「接続すればすぐに使える」といった意味。
    出典:プラグ・アンド・プレイ – ICT用語集
    ↩︎

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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