※本コラムは2024年1月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社IKホールディングスはヒット製品を生み出し続ける「マーケティングメーカー」です。
ダイレクトマーケティング、セールスマーケティングの販売の両軸を回し続けることで、コアとなる製品開発の歯車を回転させていきます。
代表取締役社長兼COOの長野庄吾氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社IKホールディングスを一言で言うと
独自のプロモーション戦略で、製品の企画・製造・販売・物流を自社で一貫して行い、ヒット製品を生み出し続ける「マーケティングメーカー」です。
IKホールディングスの沿革
創業経緯
1982年5月に創業者の飯田(現会長)と鬼頭(退任)が当社の前身となるアイケイ商事有限会社を設立しました。
そして1983年に、愛知県生活協同組合連合会と口座を開設し、職域生協との取引を開始し、その後、職域生協だけではなく地域生協とも取引を開始し、北海道から沖縄まで取引を拡大していきました。
上場と事業の拡大
当社にとって2001年にジャスダックに上場したことは、大きなターニングポイントとなりました。
当時、生協が90%以上のシェアを持つ中、一般企業への認知度は未だ低かったと認識しています。
しかし、この上場を機に様々な企業からの関心を集め、取引も伸びたことで、更に製品ラインナップと販路が拡大しました。
結果として、現在のような多岐にわたるカテゴリーを持つ業態へと変貌を遂げるきっかけとなりました。
IKホールディングスの事業の概要と特徴
概要
当社の事業は3つです。
まず1つ目は、生協、通販、店舗、海外等のチャネルを活用して販売するセールスマーケティング事業です。
次に2つ目は、TVショッピング、自社EC、直営店舗を活用して卸販売するダイレクトマーケティング事業です。
そして3つ目が、「M-Talk」や「Voistore」を中心としたITソリューション事業です。
事業における優位性
顧客目線でのものづくり
我々は自社を「マーケティングメーカー」と称しています。
一般的にメーカーは技術や設備に依存して製品を生み出していますが、当社は自社で製造設備を持たないファブレス企業です。
また、顧客目線から製品、売り場、プロモーション、クリエイティブを起点に製品を作り、販売しています。
もちろん我々は製品の企画段階で価格を決定しコストを計算して製造元に外注するため、材料の大幅な高騰がない限りは安定した利益が見込めます。
我々の主要取引先の生協は組合員様の利益を最優先に考える非営利組織であるため、利益追求よりも質の高い製品を組合員様に届けることに重点を置いています。
この文化の下で成長してきた当社は、単に売上を伸ばすことや利益を追求するだけではなく、クレーム対応などのサービス面でも優れた取り組みを行うようになりました。
このような当社の顧客目線に対する考え方は、他の企業とは一線を画し、私たちにとって大きな強みとなっています。
蓄積されたデータとマーケティングノウハウ
過去40年蓄積してきたデータを分析し、マーケティング戦略に活かすことでヒット製品を生み出し続けています。
具体例として、ドラッグストアのPOSデータを基にコスメ製品を開発した事例をあげてみましょう。
まず当社は、コスメ製品の開発の際にハトムギ成分に着目しました。
そして、50代〜70代の顧客が多い生協向けにハトムギ美容液を使用した軽い付け心地のファンデーションを開発し、大ヒットを収めました。
そのヒットを受けて、ハトムギを主成分とする食品の開発も行い、顆粒とサプリメントを生み出しました。
これらの製品も、生協向けには顆粒、ドラッグストア向けにはサプリメントとして販売し、どちらも市場で好評を博しました。
しかしその後、一般通販向けにカバー力に優れたファンデーションを開発したものの、期待したほどの売上を得ることができませんでした。
そこでお得用パッケージを追加する戦略を取ったところ、この製品は成功を収めました。
この一連の流れのように、当社は実際の製品への消費者動向を分析し、新しい製品の企画に活かしながら製造・販売することができます。
当社はこの製品に限らず様々な製品を生み出してきており、販売データやノウハウを持っていることは高い優位性だと考えています。
柔軟な視点を持つ社員の育成
当社はいち早く「マーケティングメーカー」としての視点で考えられるような社員を育成しています。
具体的には、部署間の異動を積極的に推奨し、幅広い経験を積むことを奨励しています。
このアプローチによって、役割の境界をあえて曖昧にし、柔軟なスキルセットを持つ人材を育成しています。
たとえば、営業担当者が新製品の開発に携わることも、開発担当者が営業活動に出ることも可能です。
このように、「営業」や「開発」と区別するのではなく、顧客のニーズから逆算して製品を考えることができるような視点を持つように育成しています。
この視点を持つ社員が営業・企画・開発と関係なく、全社員が「マーケティングメーカー」の視点を持っていることは非常に強みだと考えています。
韓国コスメへの早期参入
当社は約14年前に「スキンフード」という韓国コスメブランドの日本の販売代理店として、(株)フードコスメを設立し、韓国コスメを扱う専門店の展開を拡大しました。
現在はECサイトや専門店を通じて様々な韓国コスメの販売を行っています。
また、韓国コスメは日本市場において成長が見込まれ、日本での韓国コスメの販売戦略に14年以上携わっている当社には先駆者としてのメリットがあると考えています。
IKホールディングスの中長期の成長イメージとそのための施策
韓国コスメのブーストアップ
韓国コスメは私たちにとって最大の武器に成長していくと考えています。
この分野に着手してから足掛け14年ですが、特に直近の2年間でブレイクし始めました。
資料のデータ(2023年1月~3月期)の輸入額にもある通り、日本における韓国コスメの輸入額がフランスからの輸入額を上回りました。
また、韓国コスメブランドは日本での販売戦略としてEC販売を拡大したいと考えています。
しかし韓国独自のEC運営方法が日本市場の特性と合わず、成長に課題を抱えることがしばしばあります。
例えば、hinceというブランドはもともと韓国側がECを運営していましたが、今後は当社が運営を担当することになりました。
その結果、日本での韓国コスメ販売に豊富な経験を持つ当社に対し、運営のサポートを求める声が増えています。
セールスマーケティング事業のテコ入れ
生協マーケット、通販マーケット、店舗ルートに対して重点的に施策を行っていきます。
足元では、ブランドマーケティング施策として著名人とのコラボ製品の開発や、生協へ更なる化粧品の拡販を狙います。
また、2023年8月19日から10月18日までに実施したクラウドファンディングサイトのMakuakeで、多くのサポーターの方に「レンジで本格土鍋ごはん『伊賀ノ匠』」のご支援をいただきました。
今後も、顧客目線での製品開発に力を入れ、販売チャネルを活かした事業拡大を行っていきます。
注目していただきたいポイント
中長期的に成長をしていくためには新規事業にチャレンジする必要があると考えています。
もし現状のビジネスに満足し、深化ばかり考えてしまうと本当の顧客のニーズを見失いサクセストラップに陥ります。
当社の「マーケティングメーカー」という特殊なビジネスモデルでは、常に考え、常に製品を創り出していくことが可能です。
また、海外市場への進出は当社の大きな課題だと思っています。
これまでメイドインジャパンのコスメを中心に、東南アジアや中国をターゲットにしてきましたが、今後は戦略を一新し、プロダクトと市場のターゲットを見直す段階です。
具体的な方針は確定していませんが、海外攻略のための新しい戦略を練る上で、どのように進めていくかが一つのキーワードになると考えています。
今後の当社の事業展開に注目していただけたらと思います。
投資家の皆様へメッセージ
現在は、過去2年間の連続赤字という反省点から3年ぶりに黒字となり、より強固な基盤の上に再構築したIKホールディングスの新たな始まりだと考えています。
今後とも皆様の変わらぬ支援と期待に応えられるよう、努力を重ねてまいりますので応援いただけると嬉しいです。
本社所在地:〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅三丁目26番8号 KDX名古屋駅前ビル5階
設立:1990年4月21日
資本金:599,918,531円(2023年9月30日時点)
上場市場:東証スタンダード市場(2001年12月04日)、名証プレミア市場(2018年2月15日)
証券コード:2722