※本コラムは2022年10月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
1990年以降、日本の金融は規制緩和・自由化の歴史を重ねてきました。そのなかで、金融・保険領域におけるシステムインテグレーション、金融フロントエンドシステムのパイオニアとして知られているのが、株式会社キャピタル・アセット・プランニングです。その代表取締役である北山雅一氏に、事業の強み、今後の展開などを伺いました。
株式会社キャピタル・アセット・プランニングを一言で言うと
これは、私どもの歴史を見ていただけるとお分かりになられると思うのですが、キャピタル・アセット・プランニングは、わが国の金融リテール市場自由化と発展と共に成長してきた会社、といっても良いでしょう。
この会社を創業したのが1990年ですが、この時期から日本では金融の自由化が進んできました。
これを私たちは大きく3つのステージに分けています。
①1995年に生命保険会社でライフリスクマネジメントシステムをリリース、1998年に生命保険設計書機械化システムを導入。1996年には生命保険と損害保険の相互乗入の開始
②年金法改正により、大手銀行が確定拠出年金システムを導入
③2012年に生命保険会社にペーパーレス設計書・申込書発行システムを提供
私たちは、この3つのステージにおいて、イノベーティブなシステムを開発し、銀行や証券会社、保険会社と共に成長してまいりました。
創業の経緯
大学を卒業して中央監査法人に入りました。祖父も父も経営者で、裕福な暮らしをしていたのですが、他社の倒産を受けて家業が連鎖倒産してしまいました。会社更生法の適用を受けたのですが、その時、更生計画を策定して下さった会計士の方の手腕に父が惚れ込み、「お前は会社経営をするな。会計士になれ」と言われたのが、会計士になった理由です。
中央監査法人では6年間働きました。おもに銀行や証券会社の監査です。当時のエクセレントカンパニーばかりを担当していました。ここで金融機関とお付き合いをしていたことが、後に金融関係で起業したきっかけになったのだと思います。
1985年に中央監査法人を辞めて大阪に戻り、陽光監査法人(現在の新日本有限責任監査法人)に転職し、その直後に米国へ出張しました。その時、ニューヨークのボルダーという書店で「Lotus1-2-3 financial modeling」という書籍が平積みされていました。聞くところによると当時、米国の金融業界で必読書になっており、実際に読んでみると、非常に興味深い内容だったので、これを日本語訳にして出版しようと思い、出版社に企画を持ち込みました。
企画が通って出版したのが1989年3月のことです。それを読んだ外資系保険会社から、「この本に載っているシステムをつくってくれないか」という依頼を複数頂戴しました。それがきっかけで、自社開発したシステムを金融機関に販売する会社を立ち上げようと考えて、キャピタル・アセット・プランニングを創業しました。
ただ、創業した当初はやはり苦労しましたね。最初は金融機関のシステムインテグレーションを主要業務にしていたので、なかなか事業が成長しませんでした。売上が10億円を超えるのに18年もかかったのです。
ただ、前述したように、1995年の生保・損保相互乗入や2001年の確定拠出年金開始、2005年の金融商品取引法施行・証券業法改正、2010年の金融商品取引法改正、2016年の保険業法改正など、金融行政の大きな変化に柔軟な対応を行ったことが、成長の原動力になったと思います。
また、私たちは金融機関のフロントエンドシステムを開発するところから事業を始めたわけですが、そのOSがMSDOSベースからWindowsベースに移行し、その後もWEBベース、クラウドベース、タブレットベースというように変化していったことに対応したことも、成長の背景にあると思います。
事業内容について
メインとなる事業は、システムインテグレーション業務です。生命保険会社向けには保険設計書作成システムや保険申込書作成システム、申込ペーパーレスシステム、ライフプランニングや公的年金試算、リタイヤメントシミュレーションなどのシステムを構築しています。
また、銀行や証券会社向けには、投資信託や生命保険、個人年金保険の窓口販売支援システムや、ポートフォリオ設計システム、確定拠出年金契約者向け情報提供システム、将来資金運用予想システムなどの開発・提供を行っています。
それ以外には、「Wealth Management Workstation(WMW)」という統合資産管理システムの開発・提供です。
これは個人が保有している金融ポートフォリオ、保険、自社株、不動産に至るまで、すべての資産を管理するためのシステムです。このシステムを開発するのと同時に、資産家からの依頼があれば、WMWを活用して、そのファミリーの全資産の現状分析を行ったうえで、事業承継や財産承継などの施策立案と実行も行っています。
このWMWは、その機能の一部を金融機関向けにコンポーネントとしても提供しており、ファイナンシャルプランナーやプライベートバンカーのための顧客資産管理システムプラットフォームとしての地位も確立しつつあります。
いよいよ「人生100年時代」が現実のものになりつつあり、個々人の資産管理が重要になってきます。個々人といっても、結婚して子供がいらっしゃる家庭もあれば、そうじゃない人もいますし、生き方もさまざまです。こうした多様性に富んだ個人顧客のニーズに合わせてパーソナライズできる資産管理プラットフォームを提供していきたいと考えています。
当社には年金数理や保険数理を理解しているエンジニアが大勢います。アクチュアリーレベルの能力があり、かつシステム開発もできるといったような、金融とシステムの両方に精通しているエンジニアは、本当に少数です。特に保険商品は約款上のルールが非常に複雑なので、その内容を熟知したうえで、システムを開発しないと、非常に使いにくいものになってしまいます。
私たちは今、国内にある生命保険会社のうち約半数に対してシステムを提供し、WMWについては会計事務所、FPの顧客資産、約1兆2000億円を管理しております。それは、私たちのシステムが極めてユーザーフレンドリーであることと、金融とシステムの両方に精通したエンジニアを多数揃えているのが、私たちの何よりの強みです。
中長期の成長イメージとそのための施策
まず生命保険会社のレガシーシステムをDX化します。2025年の崖と言われていますが、生命保険会社が現在使っているシステムは、すでに老朽化、肥大化、ブラックボックス化が著しく、このまま放置しておくと2025年以降、保守を実行する人材もいなくなり、最大で年間12兆円の経済損失を生むと、経済産業省が試算しています。
今後、このレガシーシステムのクラウド化が加速すると考えられます。全金融機関で年間1兆8600億円程度のシステム投資が必要だと考えられており、このうち生命保険会社は年間8600億円程度を占めています。これは大きな社会課題でもあるので、その解決に向けて、私たちの持てる経営資源を積極的に投入していきます。
それと同時に、新規事業領域への参入も検討しています。具体的には損害保険会社向けの受託事業拡大や、既存の生損保会社ではカバーしていない、少額短期保険を提供する保険会社向けの受託事業拡大、また従前は、外資系ならびに損保系生保が私たちの主要顧客でしたが、それだけでなく日系生命保険会社とのアライアンスも進めてまいります。
投資家の皆様へメッセージ
冒頭でも申し上げましたが、私どもの歴史は日本のFintechの歴史でもあります。ですから、今後も私どもが日本の金融の歴史をつくっていく、そういう気構えで事業の成長に取り組んで参りますので、ご期待いただければと思います。
株式会社キャピタル・アセット・プランニング(Capital Asset Planning, Inc.)
本社所在地:大阪市北区堂島2丁目4番27号 JRE堂島タワー6F・7F
設立:1990年4月16日
資本金:939百万円(2022年1月21日現在)
上場市場:東証スタンダード(2016年10月7日上場)
証券コード:3965