※本コラムは2024年1月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。
高島株式会社は祖業の産業用繊維卸から、建設資材、太陽光発電システム、産業資材、電子部品など多角的に事業領域を拡大し、時代の変化に適合した事業をグループ一体となって展開している「多角的専門商社」です。
代表取締役社長の高島幸一氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
高島株式会社を一言で言うと
「サステナの先進商社」を目指し持続可能な社会の実現に貢献していく会社です。
高島の沿革
創業経緯
当社は重布と言われる産業用の繊維製品の販売を行う商社として、1915年に創業しました。
当初は天然繊維を中心に扱っていましたが、次第に化学繊維が産業繊維の主流となり、加工や縫製をワンストップで行う専門商社へと成長していきました。
時代のニーズに合わせた進化適合の歴史①
創業から35年経った1950年代ごろから海外製品の台頭や輸出規制などにより、繊維市場の競争が激化していました。
当時から取引していた化学メーカーの旭化成、クラレ、帝人等が建材業界に新規参入した際に当社の販売網や施工網を評価され、当社も新規参入し、受注が拡大しました。
そして建材では構造材や外壁断熱材など、多岐にわたる領域への展開を進めてきました。
また産業用資材については、緩衝材などの梱包材に注力し化学製品から派生して事業の幅を広げてきました。
時代のニーズに合わせた進化適合の歴史②
その後、1970年代ごろからは電子デバイスの販売にも着手し太陽光発電に関する製品の提供もしていきました。
当社は高度経済成長期を経て、様々な分野へ進出し事業の多角化を行い、2000年代初頭には10を超える事業部が存在していました。
その後成長可能な領域に焦点を当て、経営資源を集中させる必要性を感じた私は時間をかけて精査し、現在の3セグメントに絞り込みました。
そして、東証再編に伴って東証プライム市場を選択し、持続的な成長を目指しています。
高島の事業の概要と特徴
概要
当社の事業は建材セグメント、産業資材セグメント、電子・デバイスセグメントの3つに分けられます。
まず建材セグメントですが、当社の半分以上の売上を占め、主に高付加価値、高機能、省力化を実現できる製品の提供に注力しています。
また産業資材セグメントでは繊維資材、樹脂部材・機能資材など多種多様な商材を取り扱っています。
そして電子・デバイスセグメントではアジアを中心にメーカーから電子部品を調達し供給する電子部品販売ビジネスを行っています。
事業における優位性
開発提案力×複合完結力を提供する機能商社型ビジネス
当社は機能商社型ビジネスと呼んでいますが、このビジネスモデルを維持していることこそが優位性だと考えています。
一般的な商社は仕入れて販売するビジネスが基本ですが、当社のビジネスモデルは特殊です。
我々は製品の調達から企画設計、物流、施工に至るまで当社を通じてワンストップで提供し、当社の機能に対する対価を頂きます。
そのため、一般的な商社よりもスピード感やコスト感を意識したサービスの提供が可能です。
また、どのセグメントにおいても高付加価値、高機能、省力化を実現する製品を扱っており、顧客のニーズから新製品の開発にも取り組んでいます。
以上のように、当社は商社としての側面だけではなくサプライチェーンのトータルサポートを行いながら顧客の課題解決のための製品開発までカバーできることが、業界内での優位性を実現しています。
安定した顧客基盤
建材セグメントに関しては、ゼネコン、建材問屋、ハウスメーカー、工務店といった建築業界に携わる業者全てが顧客になります。
そして産業資材セグメントでは、自動車メーカーや電機メーカーが主な顧客で、医療品・FA機器等のメーカー、公官庁なども顧客です。
さらに電子・デバイスセグメントでは国内外の家電メーカー、特に海外での売上比率が多いといった特徴があります。
メーカーにとって最も重要なことは製品の開発や増産だと考えていますが、当社が機能商社として、メーカーが開発や増産に集中できるよう、在庫管理、物流、施工までをトータルでサポートしているのです。
このように長年築き上げてきた我々の高い提供価値や顧客との信頼関係は安定的な顧客基盤に繋がっています。
サステナブルに特化した製品群
当社は3つのセグメントに特化しています。建材セグメントでは、施工性が高く、高機能な製品を提供しています。
当社が長年にわたって取り組んできた断熱材の分野では、省力化を見込める製品の開発と販売に注力しています。
具体的には断熱材をパネル化することで施工の省力化を実現したり、巻付け耐火被覆材など新しい工法の高機能の製品を販売しました。
このような製品開発や販売は、オリジナルな発想を活かし、高島グループならではの方法で社会にアプローチして貢献していきたいという想いからきています。
この高付加価値、高機能、省力化に特化したサステナブルな製品群は他社製品と比べた際に高い優位性を誇っていると考えています。
高島の中長期の成長イメージとそのための施策
目指す姿
当社は2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けてサステナV(バリュー)を中長期的な計画として掲げています。
昨今の環境問題に対して今の世代が適切な対応を行わなければ、将来の世代により厳しい状況を残してしまうことになります。
そのためにもカーボンニュートラルの達成が急務であり、サプライチェーン全体での環境への貢献や、持続可能な事業運営がこれからの大きなテーマとなります。
そして、それらの対策を講じない場合のペナルティはより重くなることが予想されます。
反対に、カーボンニュートラルに寄与する事業や技術には、大きなベネフィットを期待でき、これが社会全体の利益に繋がると考えています。
このサステナブルな社会に適応し、持続的成長を実現したいと考えています。
省エネ化・省力化ニーズへ新たな価値を創造
今後注力していく分野としては、特に環境へ配慮するための省エネ化と人手不足の省力化に対する解決策の提供です。
もちろんロボットやAIの技術を活用することは解決策の1つですが、サプライチェーン全体を見渡した際に、人の手が介在しなければならない「ラストワンマイル」での課題が依然として残っています。
さらに、日本のような資源に乏しい国では、自給自足が究極のニーズとなります。
この点において、再生可能エネルギーの活用は重要な戦略であり、特に太陽光発電と蓄電池技術は当社が長年にわたり培ってきた強みの領域です。
このような背景から、省エネ化・省力化を推進するための技術やソリューションの開発に注力しています。
例えば、EV化の進展は、太陽光発電や蓄電池技術との相乗効果をもたらし、より持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。
現在、当社では2030年に向けた社会の変化に対応するための戦略を練っています。
これらの取り組みを通じて、当社は社会的な課題の解決に貢献し、持続可能な成長を目指していきます。
注目していただきたいポイント
今後は省エネ製品の重要性も高まっており、ゼロエネルギーハウス(ZEH)のような概念が注目されていくと考えています。
これらの取り組みは、長期的に見て日本全体のニーズを満たすもので、安全性や健康に対するニーズと同様に、2030年や2050年においても変わらない価値があると考えています。
しかしながら、これらのニーズが現れるタイミングは予測が難しいため、商社としてはタイミングを見計らいながら、適切な投資と戦略を行う必要があります。
今後も私たちは、新たに浮上するニーズに対して先見性を持って、M&Aを含む事業投資を行っていきます。
また過大投資を避けつつ、マーケットが形成される過程で、成長が見込まれる領域への投資を行っていきます。
これからも当社のサステナブルな経営とサステナブルな社会の実現のイメージに注目して欲しいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
当社はこれまでの堅実な経営から持続的な成長経営へと移行することを宣言しております。
これからはサステナブルな社会での持続的な成長を実現するために、全ての施策を慎重に策定し、継続的な成長を達成することに尽力します。
我々のこれからの成長を、ぜひご期待ください。