※本コラムは2024年3月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
NCD株式会社はソフトウェア開発を専業とするベンチャー企業の先駆けとして創業し、現在はシステムの保守・運用に加え、駐輪場事業を展開しています。
代表取締役社長の下條治氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
NCD株式会社を一言で言うと
駐輪場事業を展開するユニークなIT企業です。
NCDの沿革
創業経緯
当社は1967年に「日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社」という社名で創業しました。
当時は汎用機(メインフレーム)」と呼ばれる大型コンピュータが主流の時代で、まだソフトウェアにはフォーカスされていない時代でした。
今後ソフトウェアの需要が高まることを予測し、独立系のソフトウェア開発会社として立ち上げたのが創業の経緯です。
ソフトウェア開発から保守・運用、そして新事業へ
1970年代から80年代にかけてはシステムのメンテナンスの重要性に着目して事業を展開し、右肩上がりで成長を続けることができました。
1990年初頭のバブル崩壊時、景気の悪化に伴って企業のIT投資は抑制されましたが、事業を継続するために必要不可欠であるシステム保守・運用業務に対する需要は底堅く、業績を維持することができました。
1997年からは新事業として自転車駐輪場事業(パーキングシステム事業)を開始し、2004年に上場しました。
IT関連事業の拠点として1979年に福岡オフィス、2011年に長崎オフィス、2020年に五島オフィスを開設し、BCP対策や、コストメリットを活かしたニアショア活用を積極的に推進するとともに、地方創生にも貢献しています。
そして、2024年1月1日には当社グループのパーパス「人の鼓動、もっと社会へ。」の実現と持続的成長を目指すという決意を込め、「NCD株式会社」に社名変更しました。
NCDの事業の概要と特徴
概要
主要な事業セグメントは、システム開発事業、サポート&サービス事業、パーキングシステム事業の3つです。
システム開発事業とサポート&サービス事業がIT関連事業で、売上の約7割を占めます。残りの約3割がパーキングシステム事業となっています。
システム開発事業では、最新のIT技術と長年培ってきた様々な業界・業務経験を活かした、お客様の課題解決・戦略実行に最適なシステムの構築や、各種パッケージ製品の導入支援などのソリューションサービスを提供しています。
サポート&サービス事業では、基幹システムの設計から構築・運用・監視まで対応し、システム障害対応、テクニカルサポート、サービスデスク、アウトソーシングに至るまで、お客様のIT業務を幅広く確実にサポートしています。
パーキングシステム事業では、独自のIT技術を活用した駐輪場管理システムを導入することで、駐輪場運営の自動化と省力化を推進しています。
また、24時間365日対応の駐輪場サポートセンターを自社内に設け、ご利用者様へのきめ細かなサービスを提供し続けています。
事業における優位性
IT関連事業における強み
創業以来、エンドユーザーとの直接取引にこだわってきました。大手SIerからの仕事を受けることもありますが、全体の8割以上がエンドユーザーとの直接取引です。
開発から保守・運用までワンストップでサービスを提供し、お客様の業務に精通している当社ならではのきめ細かなサービスが評価され、長期にわたって取引を継続しています。
ITライフサイクルの全てのプロセスでお客様の声を直接受け取り、サービスの改善に活かせることが、当社の優位性に繋がっています。
保険業界に精通していることを強みとしており、豊富な経験とノウハウを強みに、横展開を図っています。足元ではクラウド関連の業務拡大を見込み、人材の育成・拡充にも注力しています。
開発業務においては、ERPやパッケージなどの既存ソフトウェアを利用した開発手法も取り入れており、コストを抑えつつ開発期間の短縮に繋げています。
保守・運用業務においては、従来の客先常駐から自社内で包括的なサービス提供ができるマネージドサービスへの切り替えを推進し、高付加価値なビジネスモデルへの転換を図っています。
地方拠点の活用
IT関連事業においては、大規模な災害やシステム障害など、東京で問題が発生した際にバックアップができるよう、長崎オフィス等をBCP拠点として整備しています。
また首都圏でIT人材の採用競争が激化している中、人材確保という観点でも、長崎オフィスや福岡オフィスなどにおいて地元採用を積極的に推進しています。
2011年に開設した長崎オフィスでは、現在は社員約100名(パートナーを含めると約200名)規模に成長しています。長崎県とも協力し、地元採用を強化することで地方創生にも貢献しています。
このようにリスクに強い体制構築に加え、コストメリットを活かしつつ受注規模の拡大を目指し、今後もニアショア活用を推進していきます。
パーキングシステム事業の強み
駐輪場ビジネスを始めて25年以上が経過しましたが、当社が特に力を入れているのは電磁ロック式の無人駐輪場の普及です。
24時間365日対応可能なサポートセンターを自社内に設け、無人運営ができる体制を構築してきました。
また、近年は駐輪場においてもDX化が求められており、月極駐輪場「ECOPOOL」の導入にも注力しています。
「ECOPOOL」はパソコンやスマートフォンから空き状況を検索し、利用登録から支払い、更新まで一貫してオンラインで行えるシステムです。
主に通勤・通学のお客様が利用されており、2013年のサービス開始以来、導入数は増加し続けています。
現在では他社も同様のシステムを導入してきていますが、当社は電磁ロック式駐輪場システムにおいては業界トップクラスの実績を誇り、先行優位性もあります。
また、業界で唯一の駐輪機器メーカー兼駐輪場管理運営会社でもあります。
NCDの中長期の成長イメージとそのための施策
既存ビジネスの付加価値向上
IT関連事業においては、業務ごとに設定しているサービスメニューの拡充を進め、お客様とSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を締結し、マネージドサービスへの切り替えを図っています。
これによりお客様は品質・セキュリティの向上や業務効率化を図ることができ、当社においても業務範囲の拡大や収益性の向上が見込まれます。
大手のお客様は非常に数多くのITベンダーを抱えていますが、このような施策を通じて、お客様が様々なベンダーに分散して依頼している業務を当社に集約していただきたいと考えています。
新しいビジネスの創出
IT関連事業、パーキングシステム事業に続く第三の柱となるような新規事業創出にも積極的に取り組んでいます。
新規事業アイデア公募制度を立ち上げ、昨年は13件の事業アイデアのプレゼン選考会を実施しました。
その中から最優秀賞に選ばれた事業アイデアの事業化に向け、事業計画書の作成に取り組んでいます。
M&Aによる事業基盤の拡大
昨年12月には株式会社ジャパンコンピューターサービスを子会社化しました。
同社は当社グループの企業文化との親和性も高く、顧客基盤の拡大や、新領域の獲得等によるシナジー創出を見込んでいます。
今後もM&Aなどの手法も含めて、新しい事業領域へと挑戦していきます。
人的資本経営への取り組み強化
「自律的なキャリア形成と対話を通じた組織風土の変革」という人材戦略の基本コンセプトを掲げ、人材開発と組織開発の両輪で人材マネジメントの変革を図っています。
人材開発においては、NCDグループの求める人材像「チャレンジ精神・共創・品格」を自律的に体現し、主体的に考え行動する「セルフリーダーシップ」を発揮して成長できるよう、新人事制度の導入や、キャリア支援の仕組みづくり等に取り組んでいます。
また、組織開発においては当社グループのパーパスと社員のMYパーパスとの繋がりを探求していくワークショップの実施などを通じて、エンゲージメントの向上と組織風土の変革に取り組んでいます。
このような取り組みを通じて、個性を尊重し合い、切磋琢磨する組織風土を醸成し、社員一人ひとりに当社グループで働くことに幸せを感じてもらえるような、“Well-beingカンパニー”を目指していきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
当社はソフトウェア開発の将来性にいち早く目を付け、ベンチャー企業の先駆けとして創業し、事業を拡大してまいりました。
また、かつては自転車を有料で駐輪するという文化はなく、1990年代には駅前の放置自転車が社会課題にまで発展していましたが、その社会課題を解決したい思いから、従来の常識を変える新しいビジネスモデルとしてパーキングシステム事業を開始しました。
今後も既存事業の更なる成長と、投資家の皆様にご期待いただける新しい事業の創出を目指してまいりますので、今後の当社の事業展開に注目していただければ幸いです。
投資家の皆様へメッセージ
当社は、株主様に対する利益還元を経営の最重要課題の一つと位置づけ、連結配当性向30%以上を目安に、安定的かつ継続的な配当を行う方針としております。
投資家の皆様にもワクワクしていただけるような事業を推進し、更なる成長を目指してまいりますので、引き続きご支援をお願い申し上げます。
本社所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田四丁目32番1号
設立:1967年3月16日
資本金:438百万円(2024年3月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2000年9月5日上場)
証券コード:4783