※本コラムは2024年4月9日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社NEXYZ.Groupは独自のビジネスモデルで社会や環境の課題を解決していく会社です。同社は2024年4月より東京証券取引所より「その他金融業」に分類されました。
今後はエンベデッド・ファイナンス事業の事業拡大を加速させていくとともに、メディア・プロモーション事業のアクセルジャパンを推進していきます。
代表取締役社長 兼 グループ代表の近藤太香巳氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社NEXYZ.Groupを一言で言うと
初期投資ゼロをキーワードに「まだない常識を、次のあたりまえに。」していく会社です。
NEXYZ.Groupの沿革
創業経緯
1987年に当社の前身の日本電機通信を創業し、ホームテレホンの販売から始まりました。
当時は電電公社がNTTに民営化されたばかりで、ダイヤル電話からプッシュホンへ切り替えるサービスを提供していました。
そして1990年に携帯電話が登場し始めた頃、初期投資に20万円ほど必要で高額だった携帯電話を月々2,000円で提供するサービスとして「テルミーシステム」を始めました。
その後ソフトバンクのヤフーBBプロジェクトへ参画し、モデムの無料配布に加えて、初めの2ヶ月間の月額利用料を無料にすることでヤフーBBのADSLサービスを一気に普及させることに成功しました。
この経験が、現在の初期費用ゼロを中心に展開しているエンベデッド・ファイナンス事業のビジネスモデルに繋がっています。
その他にも同様の初期費用ゼロのビジネスモデルを活用して、衛星放送の普及やETCの普及にも貢献しました。
「モノ」から「価値」の時代へ
事業を展開していく中で、私は「モノ」から「価値」の時代へと移行していると強く感じていました。
例えば、冷蔵庫や洗濯機は使用用途が理解されているため、購入において比較されるのはサイズや価格でした。
しかし新たに登場した衛星放送や携帯電話のような製品は、新しいサービスであるため価値や機能が理解されにくいものでした。
実際、道ゆく人全員がサービスの詳細を把握できていないことが分かったので、例えば衛星放送では、消費者が簡単に理解できるようにチューナーの導入から視聴契約までを一つのパッケージにまとめて提供することにしました。
具体的にはテレビチューナーを無料で提供し、200以上あるチャンネルの中から特に人気の高いチャンネルを厳選し、それを月々数千円で見られる基本パッケージを用意しました。
これで消費者は追加の費用を気にすることなく基本パッケージ内で人気コンテンツを楽しむことができ、追加の番組が必要な場合はその都度料金を支払う仕組みにしました。
また番組会社には当社の基本パッケージで視聴者の獲得が見込めるため、視聴者獲得の成果報酬を当社へ支払うという形で契約し、当社は消費者に無料で提供するチューナー代金分をそこで賄いました。
これはあくまで一例ですが、私たちは発明家ではなく「発見家」として市場のニーズに対してどうアプローチしていくかの方法をこれまでにいくつも発見してきました。
そしてエンべデッド・ファイナンス事業では、LED照明の導入により1年間で渋谷区民が排出するCO₂と同等の排出量を削減し、2020年に環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定されました。
また2022年からは日本経済の成長を加速させる企業応援プロジェクト「アクセルジャパン」を開始しました。
さらに2024年4月より東京証券取引所より、エンベデッド・ファイナンス事業の売上の割合が大きくなったため、所属業種が変更され「その他金融業」として区分されるようになりました。
NEXYZ.Groupの事業概要と特徴
概要
主に2つの事業を展開しております。
まずは株式会社NEXYZ.(以下ネクシーズ)が運営するエンベデッド・ファイナンス事業では、初期投資ゼロでLED照明などの最新設備を導入できるサービスの「ネクシーズZERO」を提供しています。
このサービスでは月額サービス料のお支払いだけで最新の省エネ設備等を導入可能で、5年経過後にはサービス料がかからなくなり、企業のコスト削減に貢献しています。
次に株式会社ブランジスタ(以下ブランジスタ)が運営するメディア・プロモーション事業では、各種メディア・媒体を通じて企業や自治体のプロモーション支援をするサービスを提供しています。
具体的には著名タレントの写真や動画を1年間使い放題のPR支援サービスのアクセルジャパンや、大人の女性の旅をナビゲートする電子雑誌の旅色(たびいろ)を提供しています。
事業における優位性
初期費用ゼロのネクシーズZERO
「環境問題・エネルギー問題への対応として、2030年までに100%のLED化が必要だ」と政府は推進していますが、実際の導入率は58%程度に過ぎません。
この遅れの主な原因は、初期のコストが高く、電気代のコスト削減よりも設置工事の方が高額であるため、多くの場所ではLED照明への交換が進んでいないという現状です。
この問題に対処するために、私たちは銀行と協力して約1,000億円を投資し、エンベデッド・ファイナンス(商材付きファイナンス)事業としてビジネスモデルを構築し、設備導入時にかかる電球代・工事代を全て無料にしました。
また当社の提供するネクシーズZEROでは、設備の選定や工事の手配、アフターケアなどの全工程をワンストップで請け負います。
そしてソリューションとして提案できる設備のバリエーションは、LED照明のみならず多岐にわたり、店舗や事業所で必要とされる商材カバー率はほぼ100%、その品数は約500,000点と非常に幅広く提供できます。
これまでネクシーズZEROは飲食店・ホテルをはじめ自治体・公共施設に導入され、2024年3月末の時点で10万件を突破しました。
安定的な受注と提携パートナー
ネクシーズZEROの受注に関しては、約90%が既に設備を導入したお客様からの追加注文や、外部からの紹介です。
当社の営業担当は戦略プランナーと呼ばれており、数多くある商材やファイナンスの知識を約1年〜1年半のOJTを通じて学び、経験を積んだ戦略プランナーが対応することで、顧客ニーズに適切に提案しています。
また受注の約4割が金融機関からの紹介で、地方銀行や信用金庫など74の金融機関、あいおいニッセイ同和損保を中心に528の保険代理店と提携しています。
ネクシーズZEROは単なる融資とは異なり商材(設備導入)自体が商材を仕入れて、仕入値より高く売ることでの利益を産んでいるため、例え一部の取引で損失が出たとしても全体の利益でカバーすることが可能です。
そして金融機関からの紹介による1契約あたりの売上は従来の1.53倍で、5年間の解約率は約4分の1と非常に安定した収益源となっています。
官民問わず様々な市場で事業を展開
当社の事業の顧客は自治体・企業と幅広く展開しています。
まずネクシーズZEROは先ほどもお話ししましたが、どんな事業主にとっても必要な省エネ設備導入という切り口で、小規模店舗から大型商業施設、ホテル・旅館・ブライダル施設へ展開しています。
導入事例としては、例えば羽田空港の駐車場設備へのLED照明導入や農業設備に至るまで幅広くご利用いただいています。
そしてメディア・プロモーション事業の中核を担う電子雑誌の旅色は全国200以上の自治体との取引をしており、その他にも宿泊施設や飲食店等の様々な企業との取引があります。
また様々な雑誌を展開し、月間総読者数は500万人を超えております。
その中でも特に人気なのは創刊から17年目の旅色で、地域に根差したコンテンツで魅力を全国に伝えることで地方創生にも繋がるため、各自治体からご支援いただいています。
NEXYZ.Groupの成長戦略
事業選定における重要な基準
事業選定において、常に三つの重要な基準を設けています。
まず一つ目は「社会(業界)の現状はどうか」を把握します。
次に「その業界が抱えている課題は何か」を考えます。
最後に「私たちの力でこれらの課題を解決できるか」を考えて判断します。
そしてその分野でNo.1を目指すと決めております。現在の事業は三つの条件を満たす事業ですが、今後もこの基準に則って事業を展開していく方針です。
ネクシーズZEROの更なる販路拡大
地方戦略と地銀などの地元に根付いた提携パートナーを武器に全国での展開を加速させていきます。
人材確保という観点で、地方における採用戦略に注力しています。
例えば、東京や大阪などの大都市では人材の争奪戦が激しいですが、地方に営業所を設けることで、地元に根ざした優秀な人材を確保しています。
また提携パートナーとの連携を図るためにも地方の拠点は非常に重要です。
既に多くの金融機関からの連携をいただいており、直近頂いたある地銀様からのレポートでは当社のサービスが非常に分かりやすく導入しやすいと反響を得ているとの報告を受けています。
これは当社がアプローチできていない潜在顧客の多さや、決裁者に直接アプローチできる金融機関との連携が非常に効果的だということを表しています。
現在は金融機関の中でも地銀や信金からの紹介が主力ですが、保険代理店との連携も強化している最中です。
主に保険代理店はカーディーラーや整備工場との関わりがあるため、設備導入に関わるコスト削減のソリューションを提供できるネクシーズZEROであれば更なる顧客開拓を見込めます。
今後は地方戦略を強化し、提携パートナーとの関係性を深めていくことでネクシーズZEROの更なる拡販を目指します。
アクセルジャパンの飛躍
2022年から始まったアクセルジャパンは新たな収益の柱として成長している事業です。
まずアクセルジャパンを提供するために、当社は著名タレントの素材を撮影しフロントのギャランティをタレントにお支払いしています。
そして完成した写真や動画のコンテンツをパッケージとして企業に提供し、その使用料から収益を得るというビジネスモデルです。
これまで資金力のある大手企業しかタレントを自社広告に使えなかった課題を、中小企業にも使えるようにサービスを設計しました。
タレント側としては当社がフロントのギャランティの他に契約に応じて支払う継続的なギャランティが新たな収益源となるため、様々なジャンルのタレントに参加していただいています。
またアクセルジャパンの受注に関しては多くがWEBからのお問い合わせです。
ネクシーズZEROや電子雑誌事業の既存顧客が中小企業であるため、アクセルジャパンとのクロスセルが今後は期待できます。
今後の成長可能性については、ネクシーズでは約500名の営業人材がいます。
そしてブランジスタにおいては、クリエイティブで経験豊富なスタッフが多数おり、自社で広告デザインや編集を完結することができます。
このような豊富な社内リソースを活用して、さらにアクセルジャパンを伸ばすことができると考えています。
注目していただきたいポイント
当社は2024年4月より東京証券取引所より、事業分類として「その他金融業」として認定されました。
「エンベデッド・ファイナンス」という言葉は未だ馴染みのない言葉かもしれませんが、今後市場における重要度は高まる分野だと考えています。
私たちは商材付きファイナンスとしてネクシーズZEROを展開しており、このビジネスモデルは他の企業には無い強みだと認識しています。
ただ、直近の業績はコロナ禍の影響によって例年より多くの貸倒引当金を積み上げてきたため、利益率が停滞しているように見えてしまっているのが現状です。
今後、短期では金融機関からの連携による成約率を増やしていくことで利益率をコロナ前の水準に回復させていきます。
そして市場動向によっては貸倒引当金の戻入も考えられるので、実は潜在的な利益を持っているとご理解いただければと思います。
ぜひ当社が「その他金融業」として認められたことと、「引当金」により本来の稼ぐ力が隠されていることに注目していただけたらと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社はネクシーズZEROやアクセルジャパンなど、独自性の高いビジネスモデルを構築しています。
このビジネスモデルは、他の企業では容易に模倣できないと考えています。
また単にビジネスを行うだけでなく、環境への貢献や地方創生という観点でも社会にとって必要不可欠な役割を果たしていると自負しています。
今後、多くの投資家の皆様に私たちのビジネスと価値を理解していただくために、積極的なIR活動を通じて情報開示を行っていく所存です。
ぜひ当社の魅力を感じていただき、ご支援いただけますと幸いです。
本社所在地:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町20-4 ネクシーズ スクエアビル
設立:1990年2月21日
資本金:2,365百万円※資本剰余金を含む(2024年4月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2002年3月6日上場)
証券コード:4346