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【5026】 株式会社トリプルアイズ代表取締役 山田雄一郎氏・取締役CFO 加藤慶氏「技術力と社会実装力の二刀流を人材戦略でさらに強化する」

※本コラムは2022年11月7日に実施したIRインタビューをもとにしております。

創業者が上場準備中に突然他界されるという困難に立たされた株式会社トリプルアイズ。新たに中心メンバーとして挑むことになった代表取締役の山田雄一郎氏と取締役CFOの加藤慶氏に、「経営を引き継ぐ」上で意識されたことや今後の成長戦略について教えていただきました。

目次

株式会社トリプルアイズを一言で言うと

(山田氏) 「技術力と社会実装力の二刀流」と表現していますが、この二つを併せ持っていることが当社の特徴であり、他社にはない強みだと考えております。

お客様に新たに生まれたニーズを実現させる技術力はもちろんのこと、それをすでにある業務フローやデバイスで使っていただけるように、お客様先の現場で徹底的な運用支援を行えることが当社の独自性です。

代表就任および上場までの経緯

(山田氏) 最初に当社に参画することになったのは、私の家族とともに旅行した三島での、前代表で創業者の福原さんとの偶然の出会いがきっかけでした。事業や会社の構想について話を伺い、その熱意に感銘し、「一緒に挑戦したい」と思い2020年8月にCFOとして就任しました。

それ以前は、監査法人に計15年ほど在籍し、特に省庁向けのコンサルティング業務に9年ほど携わりました。制度改革や経営改革の絵を描き、それをいかに実行するかという過程において、これからの未来の日本を見据えて、IT人材やテクノロジーによる具現化こそが価値になるだろうと当時から肌で感じていました。これも福原さんとビジョンが一致したところです。

しかし、私が入社してから約半年後に福原さんが亡くなられてしまいました。当時、上場準備を進めていた時期です。緊急招集した取締役、執行役員から全員一致で選任され2021年の3月に代表取締役に就任いたしました。

もちろん会社経営は初めてでしたので苦労の連続でした。ですが、前職に文化や価値観の異なる社内外の100人単位のチームをまとめ上げ、新規プロジェクトを推進することを経験し、人をまとめるという点では通ずるものがあるように感じております。

また、当時従業員は200名ほどでしたが、まだ顔を合わせたことのない方も多くいました。どのようにして社員の信頼を得るかを考えた結果、「なるべく私自身を社内にオープンにすること」を意識しました。「山田のつぶやきチャット」なるものを作り積極的に社内に発信をしたり、動画配信などをしていました。

役員に対しては密度の濃いコミュニケーションを重視しました。当時から事業上や経営上の課題を話し合い、当社の向かう方向性を確認し合うことを継続しています。今では取締役と執行役員で「合宿」と題し、月に1度、5時間徹底的に議論する場を設けています。

大変なことがあったからこそ周りの役員に支えられ、社長という役割を担えてきたと感じております。

(加藤氏) 私は福原さんとの面識はなく、社外取締役の紹介で2021年の7月に当社に入りました。

まず、福原さんがこれまで長きにわたり築かれてきたものに対しては、会社経営をしていく上で非常に大切なものを残していただいたと感じております。

その一方で、創業者が強いカリスマ性を持って経営をするスタイルではなくなった当社は、よく言えば民主的、悪く言えば強い牽引力が発生しにくい中で経営をしなくてはなりませんでした。

そのような中、取締役と執行役員が一体となり、協調しながら運営をしているのが当社の特徴であると思います。協調の経営とは、コミュニケーションを多くとることだと思っております。先にあげた役員での合宿もそうですし、取締役の三人も週1回の定例プラスアルファで頻繁にミーティングを行なっています。

創業者を失うというハードシングスがあり、まとまりやすい状況であったとも言えると思います。ですが、誰よりも一番IPOをしたかった福原さんの思いを、引き継いだ自分たちで必ず成し遂げるという強い気持ちで、今年5月の上場を実現しました。

事業内容について

(山田氏) 主にシステムインテグレーションとAIソリューションの二つの事業を展開しております。SI部門は15期目に入り、通信、金融、サービス、流通と幅広い業種の企業様とお取引をいただき、創業以来当社の堅調な売上を支えています。

AIソリューションを担うAIZE部門は、囲碁AIの研究開発から2014年に生まれた最先端の画像認識プラットフォーム事業です。店舗での決済や企業様の勤怠、空港や商業施設におけるデータ管理等に月額課金サービスとしてご利用いただいております。

株式会社トリプルアイズ 2022年8月期 決算説明会資料 より引用

多くのAI ベンチャーが新たなサービスを生み出せても、それをきちんと実装して社会に広めていくという困難なプロセスに直面しています。

その点、当社には囲碁AIを中心とした研究開発でグローバルに最先端技術を競ってきたという実績があり、また、システムインテグレーションから会社が始まり、AI部門が展開していったという経緯があります。

昨今、AIの先端研究に関する情報はオープンになっています。その中で囲碁AIで世界と戦う中で培った、知り得る研究情報をいかに活用するかというノウハウに強みを持っています。繰り返しになりますが、技術力×社会実装力の二軸が最大の特徴です。

株式会社トリプルアイズ 2022年8月期 決算説明会資料 より引用

(加藤氏) 当社は、従業員226名のうちエンジニアが約8割を占めています。創業者の福原さんもそうだったのですが、我々は成長の源泉としてエンジニアの数を重要視し、人員を拡大させる戦略を取り続けています。

しかし市場全体で見ると、求人倍率は、他職種の平均が3倍から5倍であるのに対しエンジニアは10倍と、深刻な人材不足の領域です。また、特に中途採用は過当競争のような状態です。

そのため当社では新卒を採用し社内で育てるという方針をとっております。AIZE部門の高い成長率を維持していけるよう、最終的にはAIエンジニアの育成を目指し、まずはSI部門で経験を積んでいただきます。実績が伴ってきた段階で「AT20」と名付けた独自教育コンテンツによる研修を実施し、成長領域に携わる人材を増やしていきます。

株式会社トリプルアイズ 2022年8月期 決算説明会資料 より引用

このような戦略的な人材の配置転換に伴い、足元でSI部門の単価が減少していますが、当社としては問題ないと認識しております。新卒採用は現在毎年25名程度、来期からは30名程度に拡大させ、まずはその方々をSI部門に配属させます。そして経験豊富な人材はAIZE部門へ移りますので、単価は必然的に下がるわけです。

人材育成の成果は、いきなり業績に現れるわけではありませんが、3年〜5年という中長期的なスパンで数字にしっかり反映されていきます。ですので、採用が順調にできているかどうかも、当社の成長ドライバーの一つとして是非注目していただきたいと考えております。

中長期の成長イメージとそのための施策

(山田氏) まず、当社の事業領域は今後市場がさらに加速して成長していきます。具体的にはSI部門に関わる国内DX市場は2025年まで3.4兆円、AIZE部門においても顔・表像認識AIの市場は2019年から2025年にかけて約3.2倍に成長します。この確かな需要を捉えていくことが会社成長につながっていきます。

また、それ以外にも法律改正などにより新たにビジネスチャンスが創出されることがあります。直近ですと、道路交通法の改正でアルコール検知器を使用しその内容を記録することが義務付けられるようになりました。当社では「AIZE Breath」というアルコール検知クラウドシステムを今年の5月にローンチしており、引き合いが急増しています。社会のニーズにスピード対応できるのが当社の強みです。

株式会社トリプルアイズ 2022年8月期 決算説明会資料 より引用

さらに、2025年にはネット上のクレジットカード決済の際の生体認証が義務化されることもあり、AIZE部門への需要は今後一層高まっていくでしょう。

また、互いの特徴・強みを活かしシナジーを発揮できるような他社様との業務提携も積極的に仕掛けていきます。

SMS認証最大手のアクリート社とは、当社が持つリアル認証(顔認証・検温)とアクリート社のデジタル認証(即時SMS配信)の強みを掛け合わせ、安心かつ利便性の高い認証サービスの提供をスポーツイベントなどで実施しています。

その他にも、予測分析AIベンチャーのゼノデータ社との提携では、導き出されたデータがなぜ正しいのかを立証する、「説明可能なAI」の共同開発を目指すなど、AI企業同士での連携も強化していきます。

(加藤氏) どのように日々変化するニーズに適応しサービスを提供していくのかについては、先にあげた技術力・社会実装力に加え、AIモデルにも根拠があります。


株式会社トリプルアイズ 2022年8月期 決算説明会資料
 より引用

AIモデルをオープンソースで作るベンチャー企業様も多い中、当社ではオリジナルモデルを作成しています。実は既存のAIモデルは汎用性がなく、少し要望が異なるとお客様のニーズには応えられないというケースが多々あります。

その点、当社はクライアント様の要望に応えられるものがなければ自分たちで論文をサーベイしてモデルを作成するノウハウも持っておりますので、社会のニーズに柔軟に対応できるわけです。

モデル設計や研究開発だけを行う企業様もありますが、開発から実装まで一気通貫でやりつつモデル設計にも強みを持つところが成長の源泉であると言えます。

このような強みを活かし、特に小売・物流・倉庫といったリアルな人が集まる業種を中心に、顔認証サービスを拡大させていきます。

投資家の皆様へメッセージ

(山田氏) 世界も市場も大変な状況にあり、様々な変化が起こっていますが、当社はDXおよびAIという確実に広がっていく市場に向けて進んでいる会社です。

減益予想を出し、今後の見通しを不安に思う投資家様も多いかと思いますが、技術力×社会実装力によるこれまでの実績とエンジニアの育成実績などを踏まえ、会社の成長には強い自信があります。

配当政策も今後検討しておりますので、中長期的に期待していただければ嬉しく思います。

株式会社トリプルアイズ

本社所在地:東京都千代田区神田駿河台三丁目4番地 龍名館本店ビルディング12階

設立:2008年9月3日

資本金:13億8987万円(2022年8月31日現在。資本準備金を含む。)

上場市場:東証グロース(2022年5月31日上場)

証券コード:5026

※本コラムは情報提供を目的としたものであり、個別銘柄の推奨や、金融商品の紹介、周旋を行うものではございません。

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執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。投資家とIFA(資産アドバイザー)とのマッチングサイト「わたしのIFA」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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