※本コラムは2022年11月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
中華料理の副菜だった餃子をメインに押し上げ、酒場で提供する。この斬新なアイデアで成長してきた「肉汁餃子のダンダダン」。その運営会社である、株式会社NATTY SWANKYホールディングス代表取締役社長の井石裕二氏に、成長の秘訣を伺いました。
株式会社 NATTY SWANKY ホールディングスを一言で言うと
肉汁餃子のダンダダンを展開している会社です。飲食業界というのは、開業して3年続くのが5割程度と言われる世界ですが、「餃子」という誰もが食べている商材を核にして商売をさせていただき、かれこれ12年続いているのは、夜の居酒屋需要だけではない、ランチの定食やテイクアウトも含めたオペレーションに強みがあると考えています。
創業の経緯
副社長の田中(田中竜也取締役副社長)は、高校を卒業してすぐラーメン店で修行をしていて、そこにお客として通っていたのが私でした。それから何となく会話をするようになり、出会ってから2年が過ぎたあたりからは、一緒に呑みに行く関係になっていました。
私は大学を中退した後、21歳の時に縁があって会社勤めをしていたのですが、26歳の時に田中が独立することになったため、共同出資の形でラーメン店を開業しました。折からのラーメンブームということもあり、9.21坪、10席のお店でお昼時も常に行列ができるほど繁盛していました。
それから2年後、今度は私が焼酎のダイニング・バーを出店したのですが、軌道に乗せるまで、いささか苦労しました。田中はラーメン店をもう1店舗出して、それぞれお客様をしっかり掴んでいたのですが、3店舗目までは店舗の規模も小さく、なかなか個人店の域を抜けられなかった、というのが現実です。
また、ダイニング・バーという業態は、どうしてもお客様の層が限定的です。20~30代の方が中心なので、もっと幅広い年齢層の人にも来てもらいたいということで思いついたのが、年代や性別を超えて誰もが好きであろう「餃子」でした。
そして、この1店舗目が初日から行列になり、手ごたえを感じました。
会社として成長軌道に乗ったのは、4店舗目を出店してからです。1店舗目の3倍の売上を記録しました。他の店舗に比べて広めのフロアに、席数も多かったからということもあります。
借入返済しても残るぐらいの利益が出るようになったので、それを用いて採用や教育などヒューマン・リソースに投資するようになりました。
それまでは個人店そのもので、全員で餃子をつくり、接客をし、1日が終わったらシャワーを浴びて、また店に行くということの繰り返しでした。とても企業とは言えない状況だったのです。
それでも、売上がどんどん伸びていましたから、あまり気にすることもなく突っ走っていたのですが、ある時ふと「このままでは、どこかで限界を迎える」と思いました。
2015年には、1カ月に1店舗ずつ出店できるようになりました。ここまで来ると、たとえば3年後にどのくらいの店舗数を持ち、社員数が何名で、売上がいくらになるのかといったことが、イメージできるようになりました。
それで、他の経営者などに、成長し続けられる組織にするにはどうすれば良いのかなど教えを請い、そのなかでせめて株式を上場できるくらいまで社内体制を整えないと、と思うようになりました。これが株式を上場しようと意識するようになったきっかけです。
事業内容について
冒頭でも申し上げましたが、「肉汁餃子のダンダダン」を展開・運営しています。1店舗目を出してからしばらくは「肉汁餃子製作所ダンダダン酒場」というブランド名で展開していたのですが、2020年7月から「肉汁餃子のダンダダン」に変更しました。
餃子というと、中華料理店の副菜というイメージが強いため、創業当初は焼き餃子をメインにした居酒屋という業態が理解できないお客様もいらっしゃったようですが、徐々に受け入れられるようになりました。すると今度は「どうして店名に酒場を付けたのかという点が気になってきたのです。
「酒場」という名称が付いていると、たとえば餃子とごはんを食べたいお客様とか、小さいお子様を連れて食事をしたいお客様だと、なかなかお店に入りにくいのではないか、それによってファミリー層をはじめとして、お酒を呑まない人たちの需要を取りこぼしているのではないか、などと考えて、「酒場」の名称を外すことにしました。まさにコロナ禍の最中のことです。
それまでは順調に売上、利益ともに伸びていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は無視できず、2020年6月期は最終利益が赤字、2021年6月期は営業利益が赤字で、経常利益と最終利益は黒字を維持できたものの、経営的には苦しい状況になりました。
ただ、それまで業績が好調だったから、敢えてやらなかった施策が結構あり、それを試せたという意味では良い機会だったと考えています。具体的には、テイクアウトに力を入れるとか、毎月ドリンクメニューを変更するとか、ビールを半額にするといったことも試してみました。あと、これまであまり力を入れて来なかった広報にも注力するようにしました。
これらのことを試した結果、いろいろと効果が見られたので、今後もテイクアウトなどには力を入れていきます。
ここ最近としては、徐々に需要は戻ってきています。ただ、そのなかで淘汰が始まっているので、いろいろな工夫をして成長していかなければと考えています。
もともとは餃子居酒屋という色彩が強く、居酒屋需要を取り込んできたわけですが、お客様が私たちに期待して下さっているのは、居酒屋需要だけでなく、たとえばテイクアウトやランチ利用など、プラスアルファも結構あり、そのオペレーションが上手く機能していることによって、コロナ禍でも店舗数を増やせたのだと確信しています。
あと、この2年半の間でチャレンジしたこととしては、アニメ・アイドルとのコラボレーションもあります。
たとえば「五等分の花嫁」というアニメ映画やTOKYO IDOL FESTIVALとのコラボレーションがそれです。
これによって普段、ダンダダンを利用していらっしゃらない方への訴求を狙いました。正直、現段階ではダンダダンのみのブランド力では、日本全国規模で認知度を広めるのが難しいと思われるので、色々なコラボをして認知度を上げていきたいと考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
現時点で店舗数は100店舗を超えているのですが、これからの目標としては400店舗を目指したいと思います。
特にこれから力を入れていきたいのは、ほとんど出店していなかった関西圏への進出です。大阪府、兵庫県の乗降客数が1日あたり3万人の駅が、大阪府内で121駅、兵庫県内で55駅あるので、これらが出店の候補地になります。
これまで関東圏を中心にして出店してきたため、関東圏の出店余地はかなり狭まってきているのですが、関西圏はまだまだ未開拓の地なので、これから十分に出店する余地があると見ています。非常におおまかな話ではありますが、関東の半分くらいのマーケットが、関西地区にはあると見ています。
また四国や九州でも、積極的に出店していきたいと思います。
あと、もうひとつの成長ドライバーとしては、出店を直営店だけでなくフランチャイズ店を増やしていくことです。これについては動画配信やWebを用いた告知を展開しており、フランチャイズの加盟店を希望する会社を増やしていこうと考えています。これに加えて、すでに運用を開始している「独立支援制度」により、独立志向の強い社員を対象にして、フランチャイズ店として独立をサポートするようにしています。年間1店舗、あるいは2店舗くらいずつ増やしていきたいところです。
そう遠くない未来、餃子はラーメンと同じになると考えています。餃子は中華料理の副菜というイメージでしたが、私たちは正直、餃子を中華料理とは考えていません。もちろん出自は中華料理ですが、日本に入ってきて、日本流のアレンジを加えることによって、日本料理になったと考えています。まさにラーメンと同じです。
今、「日本の焼き餃子」は欧米人の間でも注目されていますから、将来的には海外進出も視野に入れていくつもりです。
投資家の皆様へメッセージ
まずは食べてみていただきたいと思います。他にも餃子をメインにした飲食業態が、私たちの後から出てきていますが、餃子という差別化が難しいものでありながら、私たちが12年にわたって続けて来られた理由が、何となくお分かりいただけるものと思います。つまり高いクオリティの餃子を量産できるところに、私たちの差別化要因があるのです。
本社所在地:東京都新宿区西新宿1-19-8 新東京ビル7階
設立:2001年8月1日
資本金:766,422,380円(2022年2月1日現在)
上場市場:東証グロース(2019年3月28日上場)
証券コード:7674