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【4173】株式会社WACUL代表取締役社長 大淵亮平氏「テクノロジーの活用で企業の中長期的なDXのパートナーを目指す」

※本コラムは2022年11月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。

創業当時から蓄積されたデータと知見を競争力に、マーケティングDXの上流から下流まで総合的なサポートを展開するのが株式会社WACULです。代表取締役社長の大淵亮平氏に創業時の思いや中長期的な会社の目指す姿を教えていただきました。

目次

株式会社WACULを一言で言うと

データを元にしたDXのパートナーです。

SaaSサービスを突き詰めると、とにかくこれを使ってください、というように会社の姿勢が押し売りに近いものになってしまうことがあります。当社も「AIアナリスト」というSaaSのサービスが事業拡大の起点ではありますが、これはあくまでも手段の一つに過ぎません。

我々は、「最も企業様の課題を生産的に解決できる方法は何か」という視点でサービスを設計し、提供しています。そしてその過程において、事実に基づく判断と改善のご提案をするためにビッグデータやAIといったテクノロジーを活用しています。

創業の経緯

2010年に前代表との共同創業という形で会社を立ち上げました。創業から一貫して、複雑かつ難解な企業のDXやデジタル技術の利活用によるデジタル化を、データや事例を基にしたノウハウを用いてご支援することが当社の役割です。

私自身の前職でもコンサルタントとして新規事業開発や経営戦略に携わっていましたが、「デジタル化」の大変さは肌で感じていました。「やらなければならないこと」は無数にあり、また、何が成果に繋がる本質的な業務なのかを判断できない、もしくは判断する時間すらない。多くの企業がこのような状況にありました。

一方、多様なクライアント様へのご支援を通じ、その課題感には共通項が存在することもわかってきました。そこで、デジタル化やDXのための「勝ちパターン」を見つけることができるのではないか、という着想に至り、これが創業のコンセプトにつながっていきます。 また、良い組織やチームを0から自分で作ってみたいという思いも起業のきっかけとなっています。前職のお客様は会社全体というよりも大企業の中の一つの組織であることがほとんどでした。業務を通じ、大きな会社の骨組みごと改革していくことの大変さも痛感していました。であれば、自分で会社を作り、まっさらなところで骨組み作りからチャレンジする方が面白いのではないかと考えたわけです。

当社の沿革は、「研究開発期」「データ総集期」「DX期」の三つのフェーズに大別できます。

株式会社WACUL 2023年2月期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

「事例とデータを根拠にすれば本当に勝ちパターンが見えてくるのか」の実証実験を行ったのが研究開発期です。

当時は本郷三丁目にオフィスを構えていましたので東京大学の学生にもデータ入力や分析作業などを沢山手伝っていただきました。コンサルティングサービスを展開しながら個社ごとのデータを集め、型を見つける作業を進めていると、当初の仮説通り、数年で様々なことがパターン化されてきたのです。パターンが見えてきたことで、従来の労働集約型のビジネスから、システム提供へと移行させます。これが、2015年5月にリリースした「AIアナリスト」です。AI技術についても東京大学の松尾豊研究室と共同研究を行うなどして、いかにシステムでよりよい提案ができるかを突き詰めていました。

もちろん、サービスを開始してもそれがすぐに広まるわけではありません。拡大していくためには社内外の人材、および資金面での支援が必要になります。また、コンサルテインングサービスでお取引をいただいていたのは100-200社ほどでしたので、さらにデータを集めつつ、「データの確からしさ」を証明していく必要がありました。ここから先が「データ総集期」に当たります。

このタイミングでVCからの資金調達も行いました。従業員10名ほどの少数精鋭部隊から、自分たちの作り上げたノウハウを世の中に広げていきたいという思いのもと、サービス形態も経営戦略も大きく変化していきました。

3年ほど経ち、「AIアナリスト」が自動で提案するマーケティング施策の勝率も7割ほどに上昇したため、データ収集とその確からしさの証明を終了しました。以降、複雑かつ難解であったDX化を簡単に、かつ本質的に業績を上げる戦略となるように、企業様への本格的なご支援を開始し、今(「DX期」)に至ります。

事業内容について

企業のマーケティングDXのパートナーとしてご支援するには、ある種何でも相談できなければならないこともあり、様々なサービスを増やしていますが、サービスラインとしては「プロダクト事業」「インキュベーション事業」「人材マッチング事業」の3つに大別されます。

プロダクト事業では、「AIアナリスト」というマーケティングデータを自動分析し、改善施策を提案する、まさにコンサルタントを機械化したSaaSサービスを軸に、「AIアナリスト」の提案施策の実行を代行する「AIアナリスト・シリーズ」等で構成されています。

当事業の強みは37,000超のサイトと連携し、月間50億セッション以上を継続して獲得している圧倒的なデータ量にあります。業種やサイトのパターン等を元に類似サイトを判断し、そのサイトの過去のデータ変遷や数字の傾向から、AIが自動で解決策を考えて施策を提案することができます。

株式会社WACUL 2023年2月期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

他社のツールですと、データの分析と可視化までの機能で、施策を考えるのはツールの利用者である人間で、分析の手間を減らす“人間の手”となりますが、当社では「成果を出すためにこうしてください」という施策提案のスタンスを取りますので、コンサルタントのように“人間の脳”を助ける側面が強いという特徴があります。

また、「AIアナリスト」でご提案した解決策の実行・実装をご支援するサービスを「AIアナリストSEO」「AIアナリストAD」など、シリーズ展開しています。施策は決まっても、なかなか自分達では実行する時間がとれないという企業様のニーズに対し、より総合的なパートナーとしてSEO対策や広告運用、制作などをサポートしております。

株式会社WACUL 2023年2月期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

インキュベーション事業では、祖業でもあるコンサルティングサービスを提供しております。マーケティングのご支援は何もマーケティング事業部の中だけで解決するものではありません。そのため、顧客ターゲットの精緻化や事業KPIの設定などの戦略的なものから、チーム体制やオペレーション構築といった組織面まで、総合的なDX化のコンサルティングを行っています。

元々、インキュベーション事業はその名のとおり、研究開発・事業開発をミッションとしてスタートしていました。その際に業種業態を問わず多様なデータを集めましたので、「特定の業界が得意です」というような偏りはありません。ただ、顧客を獲得するまでのプロセスをみると、ECで購入ボタンを押して終わりというECのようなBtoCに比べると、BtoBの方がマーケティングでリードを獲得して、営業につなぎ、商談をしてとオペレーションのプロセスが長い分、全体最適などの改善余地が多くあります。そのため、直近ではBtoB企業様からご指名をいただくケースが増えております。

特にコロナ禍においては、展示会やテレコールといったアウトバンド型の営業ができず新規受注がぴたりと止まった企業様が多くいらっしゃいました。そこで、デジタルを活用したマーケティングに乗り出そうと意思決定をしたBtoB企業様も多く、インバウンド型のマーケティングと営業の支援が強い当社の需要が高まっているという事実もございます。

人材マッチング事業では、フリーランスのマーケターと企業様の人材マッチングのご支援を「Marketer Agent」というサービス名で展開しております。「AIアナリスト」やコンサルティングサービスがクライアントに対して外部からの運用支援であるのに対し、当事業はクライアントへ内製化のご支援を行うという位置付けになります。

「AIアナリスト」などプロダクト事業を運営する中で、代行してくれるのもいいが内製化をしたいが人材が足りなくて困っている、というご相談を企業様から受けることも増えていました。コロナ禍において力のあるフリーランスマーケターも増加していたのですが、彼らは営業力がないとそもそも企業様と接点を持つことも難しいという状況があり、当事業の立ち上げに繋がっていきました。

開始から1年ほど経ちますが、マッチングの精度には高い評価をいただいております。デジタルマーケティングの世界は技術の進化が早いからこそ複雑で、企業様や人材業を営む会社では「どんな人材が今の課題に強いのか」や「その人材への報酬はいくらが適切なのか」ということが分かりません。プロダクト開発に門外漢の人がエンジニアを採用しろと言われても難しいように、デジタル人材の採用も難しいのです。実際にマーケティングの支援を行っている当社だからこそ、必要な人材の要件定義と価値判断を的確に行うことができるというのが一番の理由です。

株式会社WACUL 2023年2月期 第2四半期 決算説明会資料 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

我々の目指す姿は、コンサルティングファームとして立ち上がった創業当時から変わらず、日々企業様のビジネス環境が変化する中で、その時々に応じたベストな提案をする“企業様のパートナー”であり続けることです。パートナーであることとはつまり、中長期的かつ多面的にご支援を継続させていただけるということです。当社はそうした企業様を増やしていきたいと考えています。そのための成長戦略として、“攻め”と“守り”に分けてお話させてください。

まずはいかに中長期的かつ多面的な支援をするかという“攻め”の面についてです。当社が企業様に対してとるスタンスは、例えば、今はすでに興味を持ってサイトを訪れてくれている人を逃さないようにサイト改善が最優先でも、どこかのタイミングではそもそも興味を持ってくれる人を増やすための広告戦略に重点をシフトしていくべきですよ、といったご提案や、中期的には内製化していくことがベストですよというように、「今はこれをやってください、逆にこれ以外はやらなくていいです」と言います。これが広告代理店ならば広告を売りたいので広告を売りますし、SEO業者ならSEOをいつまでも勧めるでしょう。けれど、当社は“企業様のパートナー”として、今やるべきこと/やらなくてよいことを率直にお伝えします。その結果、企業様と中長期的なお付き合いにつながっていくものと信じています。

サービス品質としての評価は売上高という指標に現れますが、それは四半期や年間といった一定期間を切り取った結果にすぎないと思っています。それよりも企業様のパートナーとして中長期的に多面的にご支援をするという部分に注力しますので、中長期的な指標としてのLTVや、多面的な指標としてのクロスセル率の伸長に注目していただきたいと考えております。

この点では規模の小さい企業様ですと景気に左右されて中長期的な関係性が作りづらかったり、多面的なマーケティングを必要としていなかったりするケースもありますので、注力していくのは中堅以上の企業様ということとなっているわけです。

コンサルティングサービスを機械化し、戦略という上流に関与している当社だからこそ下流に位置する広告運用やSEO、制作などのサービスをクロスセルできるのですが、まだまだこうしたサービスのラインナップを拡充させていく必要はあると考えております。そのため、特に引き合いの強い実行・実装という下流の支援分野で、上流にあたる「AIアナリスト」の改善提案に沿ったメニューの開発も進めていきます。

株式会社WACUL 事業計画及び成長可能性に関する事項について 2022年4月12日 より引用

また、“守り”の面では、他社様との差別化による独自のポジションを確立させていく戦略をとっています。

データを活用するという特徴のほか、当社は具体的な提案を含むアクションまでを能動的に行う、というサービス提供のスタンスをとっています。市場全体としては、データ連携ツール上で考え方の基盤のみを与える会社や、人的サービスに特化するコンサルティング会社が非常に多い状態です。

そのため、当社は新しい市場を創出していくような立場でもあります。先ほどの話に戻りますが、長期的にどうお客様と関係性を築いていくのかを考えているのが我々です。ですので、企業様が具体的にどんなアクションを取ればいいのかというところまで課題を「分かる化」することをやり遂げていきたいと思いますし、これができれば、市場を席巻しているような会社様にも負けないポジションになっていけると考えております。

株式会社WACUL 事業計画及び成長可能性に関する事項について 2022年4月12日 より引用

投資家の皆様へメッセージ

投資家様を含めた当社のステークホルダー全員が、当社と中長期的なお付き合いをした結果、ポジティブになっている状態を目指し、堅実に事業を成長させつつ、しっかりと収益基盤を確立させていく所存です。グロース市場全体としても難しい時期ではありますが、長い目でお付き合いをいただけますと嬉しく思います。

株式会社WACUL

本社所在地:東京都千代田区神田小川町3-26-8 神田小川町三丁目ビル2F

設立:2010年9月27日

資本金:532,306千円(2022年8月末時点)

上場市場:東証グロース(2021年2月19日上場)

証券コード:4173

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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