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【9327】株式会社イー・ロジット 代表取締役社長CEO 角井亮一氏「物流を核に小売業者の競争力を高めるパートナーとなる」

※本コラムは2022年11月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社イー・ロジットは商品保管、ピッキング、梱包、配送などEC通販事業者向けの物流代行サービスを中心に提供し「人々の感動体験を進化させ続ける」ことをミッションに掲げています。代表取締役社長CEO角井亮一氏に、事業の強みや今後の成長戦略についてお伺いしました。

目次

株式会社イー・ロジットを一言で言うと

流通業・小売業者の競争力を高める支援をしている会社です。物流が核ではありますが、前後のバリューチェーンの展開や運営代行等も併せて提供しています。

創業の経緯

創業は2000年です。当社のスタートはまさに偶然に偶然が重なったようなものでした。最初のきっかけは1994年から4年ほど在籍した船井総合研究所でネット通販のセミナーをしたことです。このセミナーによりネット通販事業との接点が私の中で生まれました。しかしその直後は特に事業化することもなく、同社を退職後、物流業を営んでいた実家の会社に入社しました。

私は長男で兄弟もいませんでしたので、将来は自ら起業するのではなく実家を継ぐものだ、と高校生くらいの頃から思っていました。そのために大学では経営学などを専攻しました。

実家に戻り、ある大企業の和装部門の物流改革に携わらせていただき、そのことが日経新聞に掲載されました。すると、この記事を見た複数の企業様からこのノウハウを教えて欲しいとの問い合わせがくるようになりました。その中で、ある大手商社の方がこの仕事をできないか、ともってきたのがネット通販の物流事業でした。

当時、国内のネット通販業界といえば月に100万円の売上が上がれば上出来というような、まさに黎明期でした。事業を行うには、一から人材を含めた社内の改革が必要となります。また、黎明期といえどもその変化のスピードは非常に速く、とても実家の会社ではその速さに対応することはできないと思いました。こうして、ネット通販の物流事業を始めるために新たな組織を作ることとなり、これが当社の始まりです。

ただ、創業当時はネット通販事業で業績を上げることが難しく、カタログを配達するメール便事業を行なっていました。カタログ販売元ではない、第三者がアルバイトのような形式で運送を担っていたため、コストを抑えながら売上を上げることができていました。

しかしながら、郵政民営化が進み、メール便の価格競争が起こります。徐々に価格が下落していき市場自体がなくなりそうになり、また、時を同じくしてプライバシーマークが整備され、トラブルが起これば多額の賠償金を支払う必要性が出てきました。それまで稼ぎ頭であったメール便事業は、「リスクは増えるが利益は減る」という状況に陥ってしまいました。

一方、本来取り組もうとしていたネット通販の物流事業に関しては、創業から5年が経ち潮目が変化してきていることを私自身感じていました。このような状況を踏まえ、メール便事業からは撤退しネット通販の物流事業へ本業を転換させるという経営判断を行いました。

2003年の葛飾第1物流センターの開設を皮切りに、以降毎年300~500坪規模の物流サービスを行うフルフィルメントセンター(FC)を展開してきました。現在は関東圏および関西圏を中心に全8拠点に拡大しています。

事業内容について

物流を核としてネット通販事業者の販売力を高めていくサポートをするのが当社の役割です。当社は、物流を改善することで、企業様が自社の商品力を向上させたり、商品を高く販売することが可能だと考えています。

具体的なサポート内容としては、物流業務をアウトソーシングされるEC通販事業者向けの物流代行と運営代行のサービス、および物流業務を自社運営される企業様向けの物流コンサルティングサービスの3つに分類されます。特にコンサルティングサービスについては、チェーン店を展開しておりBtoCでダイレクトに商品を届けたい企業様や、ネット通販の現場効率向上のニーズがある企業様を中心に引き合いが増加しています。

株式会社イー・ロジット 2023年3月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

当社は、大型のFCをドミナント展開させるという特徴をもっています。かつて、ワンルームマンションや車を完備しても、入社した従業員が短期間で辞めてしまうという現場の状況を実家で目の当たりにしてきました。その経験から、物流の要となる人員を確保しやすいよう、当社は他社とは異なる住宅街でのFCの展開を進めてきました。

また、大型かつFC間の距離を20km圏内に収めることで、需要に応じて商品やスタッフを柔軟に移動させるといった効率的な運用体制を可能にしています。 ネット通販の消費量は人口に比例しており、まだまだ関東圏は非常に重要なエリアとなります。当社のようなエリア戦略をとっている企業は他にいませんので、今後も着実にFCを拡充させ、ニーズの高いエリアの需要を確実に捉えていけると考えています。

株式会社イー・ロジット 2023年3月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

また、当社の強みとしては自社で開発したWMS(倉庫管理システム)があげられます。「イー・ロジット」という社名からも分かるように、当社は元々ITを得意領域とする会社です。創業当初は、企業様から物流システム構築のご要望を受け、仕様設計して納品することも行なっていました。

このような開発経験はもちろんのこと、当社の規模が大きくなるにつれ、様々な業種業態の企業様の物流代行をお受けしていったことで当社のシステムの品質は非常に高まり、現在では大きな差別化要因となっています。実際にシステムの反応の良さ・スピード感には定評があり、当社を選んでいただける理由の一つになっています。

株式会社イー・ロジット 2023年3月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

「賃借率向上」「生産性向上」「高付加価値サービス」を軸に、利益体質の改善を目指し従前より取り組んでいる「Vプラン」を引き続き進めていきます。

これまでFCを新設する際は、1年目を投資フェーズとして捉え赤字からスタートしていました。今後は協力会社様の外部倉庫を活用し、取扱量に応じてFC新設のタイミングを見極めることで、開設段階での黒字化を実現させます。これが一点目の「賃借率向上」の施策です。

株式会社イー・ロジット 2023年3月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

二点目の「生産性向上」に関しては、物流に応じて人件費等のコストの掛け方を変化させる「波動対応」をさらに強化していく方針です。

また、昨今の電気代や人件費高騰等の影響を鑑み、「高付加価値サービス」の提供により、料金の適正化を含めた更なる利益体質の改善を実現していきたいと考えています。

当社の事業領域であるEC市場全般については、まだ不透明な部分もあります。市場環境をまだ読みきれない部分があるため、リスク分散の施策も取っていますし、これが中長期目線で当社の強みになっていくと確信しています。

また、現在の主力事業でありますフルフィルメントサービスの前後にも当社のビジネスチャンスがありますので、このバリューチェーン展開も進めていきます。

具体的には、既存のお客様に対してのwebマーケティング支援やオウンドメディアの作成などがあげられます。一般的な企業様の物流費と広告費を鑑みると、中長期には物流事業以外の分野が、最大で売上構成の半数近くを占めることもあり得ると思います。

株式会社イー・ロジット 2023年3月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

投資家の方々からすると、物流代行といえば「ロボティクス」がキャッチーで関心も高い分野です。ですが、当社としてはまだこの分野への投資は時期尚早であると捉えています。なぜなら、まだもう一段階、人を使って物流の生産性をあげる余地は残されていると考えているからです。そのため、そのフェーズを超えた後に機械を導入する方が、より競争優位性を確立できるというわけです。

また、物流とは付加価値提供の場であり、時期が来ても完全にロボットに置き換えられることはないと考えています。過去に、ある百貨店がラッピング工程の機械化を断念したように、スピードや質の観点から人が携わるべき部分があることも事実です。この点、当社はFCのドミナント戦略から人材の採用に強みを持っていますので、まずは人を使っての生産性向上に注力し、時期と分野を見極めてロボティクスを導入するという方針で進めていきます。

投資家の皆様へメッセージ

当社は、ネット通販と物流の掛け合わせという、今後の成長が大いに期待できるセクターで事業を展開しています。投資家の皆様には、関心を持っていただくとともに、ぜひ積極的な売り買いをしていただけますと嬉しく思います。

株式会社イー・ロジット

本社所在地:東京都千代田区神田練塀町68番地 ムラタヤビル5階

設立:2000年2月14日

資本金:525,600,800円(2022年12月アクセス時)

上場市場:東証スタンダード(2021年3月26日上場)

証券コード:9327

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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