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【3995】株式会社SKIYAKI代表取締役 小久保知洋氏「多様化するクリエイターのニーズを捉え、事業成長へつなげる」

※本コラムは2022年11月30日に実施したIRインタビューをもとにしております。

すべての人がクリエイターになりうる時代となった今、株式会社SKIYAKIはファンビジネスの領域で、アーティストをはじめとしたクリエイター向けのファンクラブプラットフォームの提供を行なっています。同社の代表取締役である小久保知洋氏にマッチングサービス業界からファンビジネス業界へ転身した経緯や、会社が今後目指す姿について教えていただきました。

目次

株式会社SKIYAKIを一言で言うと

クリエイターとファンを繋ぐプラットフォームビジネスを展開する会社です。アーティストをはじめとしたあらゆるクリエイターに対し、ファンクラブやECなどのプラットフォームを提供しています。

代表就任の経緯

前職でのマッチングサービスとの出会いがファンビジネスの領域に携わることとなった大きなきっかけになっていると思います。それまで長きにわたりIT業界にいた私ですが、情報そのものにはあまり興味がありませんでした。そんな中、在籍していた会社の買収等により、たまたま関わることとなったマッチングサービスに唯一無二の感銘を受け、強い関心を持つようになりました。

インターネット上でなければ出会うことがなかったような人同士の奇跡のマッチングを多く目の当たりにしながら、10年ほど街コンや婚活パーティー、婚活サイトの運営など様々なサービス開発に従事しておりました。ですが、ある一定の時期を過ぎた頃からプロダクトの開発も一巡し、マッチングサービス業界はマーケティング戦争のような市況環境になっていきました。

また、結婚や恋愛といった市場自体も徐々に減退傾向が見え始めます。平均寿命の長期化により「家族」というフォーマットに属し続けることが必ずしも正義ではなくなったり、これまで人生の時間の大半を占めていた結婚という制度そのものの立ち位置が、人生100年時代において大きく変化してきました。そして、結婚をしない理由の上位には「自分の好きなことに時間やお金を使いたい」といった回答が目立つようにもなりました。

そんなことを頻繁に考えるようになった頃、高校の同級生でもあった当社の創業メンバーと再会し、ファンビジネスについて話を聞く機会がありました。このような時代の潮流を感じていた私としては、この再会をきっかけに、「個人個人が、自分の人生において好きなものをいかに見つけ、のめりこめるか」ということに直結する当社の事業の重要性を徐々に認識していくようになりました。また、当時、当社はアーティストを中心にファンクラブ事業を展開していましたが、「コアなファンをどう捉えるか」という観点から、スポーツや企業・ブランドなど多方面の領域にファンビジネスが広がっていく可能性があると思い、この事業に携わることを決めました。ちょうど「ファンマーケティング」という言葉もこの頃から使われ始めるようになりました。

入社後、最初の2年間はファンクラブを運営するクリエイター側が求めるものを吸い上げプロダクト開発の方針を決定していくというプロダクトマネージャーの役割を務めていました。その中で、よりプロダクト開発を中心とした組織へと会社を変化させること、会社の基盤を整えた上で継続的な企業成長を実現することを目的に、2020年、創業代表である宮瀬からバトンを引き継ぎ、当社の代表取締役へ就任いたしました。

また、「クリエイターの個人化」のトレンドを捉え、エンタープライズ向けだけではなく、ファンの規模が小さいマーケットに対してもオープン型プラットフォームでのサービス提供を進めてまいりました。この点においてはアメリカのPatreon社をベンチマークとしています。Patreon※を利用するクリエイター数25万人に対し、そのファンの数、すなわち有料会員数は800万人ほどですので、平均すると一人当たりのファン数は約30人と、規模の小さなマーケットになります。しかし、コロナ禍において、Patreonの流通金額は倍増し、個のクリエイターが活躍する小さなマーケットは急激な成長を見せています。このように、当初想定していた市場のトレンドは確実に進行していますし、当社が後発参入の立場だったという事情もありますが、このマーケットの開拓を進めたことは事業上の転換点であったと言えます。

株式会社SKIYAKI 2023年1月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

さらに外部環境としては、InstagramやYouTubeといったメガSNSの影響が非常に大きくありました。新しい文化や習慣を一社で創造するのは難しいのですが、例えば、ライブ配信機能は「インスタライブ」によって、投げ銭機能は「スパチャ」によって、クリエイター側、ファン側双方の認知が一気に高まり、広がっていったように思います。

※Patreon:米国のPatreon社が提供するコンテンツ制作をするクリエイター向けのプラットフォーム。(https://www.patreon.com/)

事業内容について

クリエイターの要望に応じ、「Bitfan」「Bitfan Pro」の二つのサービスでファンクラブビジネスをサポートしています。いずれもファンクラブやECサイト、チケット販売等の機能を一つのプラットフォーム上で提供することのできる、マルチテナント型のサービスとなっております。 「Bitfan Pro」はエンタープライズ向けに提供しており、デザインの自由度が高いのが特徴です。当社のディレクターやデザイナーのディレクションのもと、デザインや機能をカスタマイズしながらウェブサイトを作成していきます。「Bitfan Pro」はアーティストによる利用が中心ですが、最近ではキャラクターやスポーツチームなど多様な領域でも導入が進んでいます。一方、「Bitfan」は、先ほども申し上げた「クリエイターの個人化」のトレンドを受け強化しているサービスで、オンラインでサインアップが可能、かつ無料でサービスをスタートできることが特徴です。アーティストにも多く利用されていますが、YouTuberやTikToker、格闘家、eスポーツチームなど、利用するクリエイターの属性は多種多様です。

株式会社SKIYAKI 2023年1月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

「Bitfan」では、ファンクラブ機能の他にも、音楽サブスクリプションサービスと連携してどの楽曲がファンによく聴かれているかを把握するといった、ファン行動の可視化を行うことで、クリエイターのマーケティング活動をサポートする取り組みを進めています。正直なところ、現段階では可視化したファンの行動をどのように活用するべきかの正解には辿り着いていない状況ではあります。しかしながら、特に今はファンに差をつけることへの障壁がなくなっていますし、クリエイター側にも昔から応援してくれるファンを大切にする傾向がありますので、ファン行動を可視化することには意味があると考えています。

我々としてはファン活動の可視化が目的なのではなく、これを手段として用いて、結果的に「クリエイターがいかにコアなファンを集められるか」という点に注力し、時代の潮流に合わせた機能を提供していくことが重要であると考えております。

株式会社SKIYAKI 2023年1月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

また、クリエイターの属性やそのファンの規模を絞らずに、多様なニーズに対して機能開発を行う点が当社の強みですが、これを実現できる理由として、当社の組織風土が挙げられると思います。多くの企業は営業かエンジニアか、そのどちらかの部門にパワーバランスが偏ってしまう傾向にありますが、当社は両部門の人員数がちょうど半分ずつくらいでして、開発方針がどちらかの部門の意見に偏ることがありません。当社の場合、組織としての収益性は維持しながらも、クリエイターからの要望に可能な限り応えようとする「クリエイターファースト」な組織風土がちょうど良い塩梅で醸成されています。

中長期の成長イメージとそのための施策

まずは、当社のプラットフォームを活用してくださるクリエイターの方々のジャンルを拡大していくことが重要だと考えています。そのためには、クリエイターの属性ごとに求められる機能も異なりますので、当社の組織の強みを活かし、一つ一つの領域でフィットする機能を開発し、成功事例を作っていく作業が必要になります。時間のかかる作業ですが、「クリエイターの個人化」のトレンドを考えると、今後、ファンビジネスの領域で事業を続けていくためには欠かせない作業だと思っています。拡大を目指すジャンルは多くありますが、例えばスポーツチームなど、中長期的にある程度のボリューム感で横の広がりが期待できる分野には、特に注力していく方針です。

株式会社SKIYAKI 2023年1月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

また、一部の人が高額なお金を支払うといったことはどの領域でも起きていますが、現在の日本のファンビジネスにおいては、コアファンと言われるこのような方々の層が薄い現状があると思っています。ここに対して、当社は機能の拡充やサービスの利便性向上を通じて、クリエイターの皆様に「Bitfanを使えばチケット申込もグッズ購入もライブ配信も全て賄えるよね」と思っていただき、Bitfan上のたくさんの機能を利用いただくことで、ファン1人あたりの顧客単価も上昇させていくことができると考えております。

その他、コロナ禍でECサイトの売上が増加したのは特需的な部分もありましたが、顧客単価を上昇させるためにはマーチャンダイズからECまでを一気通貫で提供できるよう、サービスをより拡充する必要があるとも思っています。

株式会社SKIYAKI 2023年1月期 第3四半期 決算説明資料 より引用

さらに、NFTをはじめとするWeb3の分野は、ファンビジネスと技術的な親和性が非常に高く、すでにクリエイター側からはニーズも出てきています。一方で、この分野に対するファン側の認知度や理解度が十分ではなく、「ファンが本当に喜ぶコンテンツなのか」「コストと見合っているか」などを考慮すると、現時点では取り組みを焦る必要はないとも考えております。

また、特にNFTは金融系の文脈で投機的な側面が語られることが多く、セカンダリーマーケットでの売買等に目がいきがちですが、我々としてはこうした文脈で当領域に参入することは視野に入れていません。状況が一段落し、文化として世間一般に浸透することがまずは重要だと思っています。まさにインスタライブやスパチャが世間に広まったように、メガSNSによる影響力で文化が形成されてゆけば、当社としても本格的にこの領域に参入することを検討していきたいと考えております。

投資家の皆様へメッセージ

繰り返しになりますが、「クリエイターの個人化」のトレンドは間違いなく進行しており、それに伴いこれからのファンビジネスのニーズは会員数といった規模ではなく、コアファンの獲得へとシフトしていくと確信しております。実際に個人クリエイターが活動資金を、ファンからの直接課金で賄い、生計を立てているような事例も出始めています。

ただ、このトレンドが浸透する時間軸を想定することが非常に難しいことも事実です。スピード感はないかもしれませんが、ここ数年、「クリエイターの個人化」が少しずつ拡大していることを、当社は身を以て実感しておりますので、このマーケットの拡大・成長をぜひ待っていただければと思います。

株式会社SKIYAKI

本社所在地:東京都渋谷区道玄坂1-14-6 ヒューマックス渋谷ビル 3F

設立:2003年8月

資本金:593百万円(2022年12月アクセス時)

上場市場:東証グロース(2017年10月26日上場)

証券コード:3995

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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