※本コラムは2022年12月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。
「アプリファースト」という言葉があるほどマーケティング戦略に欠かせない存在となったスマートフォン向けアプリの開発に、まさにその黎明期から取り組み続けています。代表取締役社長の小田健太郎氏に会社の強みや今後の成長戦略を伺いました。
株式会アイリッジを一言で言うと
スマートフォンアプリの開発を中心としたOMO領域でのマーケティングを、大企業を中心に支援する会社です。アプリ開発の技術力の高さはもちろんのこと、当事業でのノウハウを活かした自社ソリューション提供する、ストック型のビジネスも持ち合わせているのが大きな強みです。
※OMO(Online Merges with Offline):オンラインとオフラインを連携させてマーケティング施策を行うこと
創業の経緯
2008年、まさにスマートフォンが世の中に登場し始めた前後で設立された会社です。私は、新卒でNTTデータへ入社、その後ボストン・コンサルティング・グループへと転職し、それぞれでITと事業開発についての業界知識とノウハウを習得していました。父親が起業家ということもあり、自分もいずれは会社を立ち上げたいと思っていましたので、この2社での経験の掛け合わせで起業をしようと考えたことがきっかけです。
特に、ボストン・コンサルティング・グループでは、ガラケー・モバイルインターネットの全盛期に事業開発に携わっていたのですが、そこに外部環境の変化が重なり、「IT×モバイルインターネットビジネスで起業しよう」と決めました。また、当時の日本ではまだスマートフォンに対する企業側の注目度も低く、スタートアップならではの施策として、大企業がいないところで先行優位性を取りに行こうという戦略もありました。
スマートフォンの大きな特徴の一つに位置情報の取得があります。そこで、画面にプッシュ通知を出すことをコア機能とし、位置情報を掛け合わせてクーポンを配信するというマーケティング支援を、大企業向けに開始いたしました。これが現在の主力ビジネスともなります、マーケティング支援ツール「FANSHIP」の始まりでございます。
サービス内容が新しかったこともあり、多くの企業様に関心を持っていただきながら当初2年ほどはこのサービスの立ち上げに注力していました。ですが、まだ市場は黎明期で、企業自身が公式アプリをもっておらず「FANSHIP」のみでは運営ができないところも多くありました。そのような中、アプリの開発からお願いできないか、という当社への依頼が徐々に増えてきたのです。
時を同じくして、2011年頃からはスマートフォンの認知度が向上したり、企業側もその重要性を高く評価するようになっていました。そこで、企業向けアプリの受託開発も本格的に事業としてスタートさせることとなり、以降この2軸で成長を続けてきた会社です。
アプリ向けのマーケティングSaaSツールの提供から、アプリ本体の開発へと事業領域を拡大させたことは、振り返りますと当社の転換点であったとも言えます。繰り返しになりますが、スマートフォンが徐々に世間から注目され始め、企業側も「消費者向けのマーケティング手法や接点として必要である」と認知し出したタイミングがまさに2011年から2012年頃のことです。この時点で、すでに当社は創業当時から先行的に積み上げてきた実績と経験を持ち合わせておりました。以後、上場を果たした2015年までの急激な成長を牽引したのも、創業当時からこの両軸をしっかりと育ててきたからこそだと認識しています。
事業内容について
OMO事業と新規事業の二つのセグメントから成り立っており、当社およびグループ会社3社が一体となってサービスを提供しています。
当社単体では、スマートフォンアプリを中心としたOMO領域でのマーケティング支援をさせていただいております。特に、店舗や駅といったリアルな場所での消費者との接点を持つ業界の大企業がメインのお客様となっています。
アプリ開発においては、最先端のニーズに対応可能な受託開発(オーダーメイドで企画・開発する、スクラッチ開発)に強みを持っています。また、開発後にはその効果を最大限に向上させていくことも当社の提供価値であると考えています。そこで、アプリに組み込むマーケティングツール「FANSHIP」を一緒に提供し、ユーザーのアプリ内での動向を可視化することで、より効率的なマーケティング施策の運営を可能にしています。
このように受託開発とソリューションの両輪を伸ばすことのできる会社はなかなか少ないと認識しています。また、受託開発で各業界の最先端のニーズと常に向き合い続けているからこそ、ソリューションとして落とし込む際にも質の高いものを提供できており、ここにも両輪を兼ね備えるがゆえのメリットが生まれているのです。
先ほど申し上げた通り、当社は大企業を中心に事業を展開してきましたが、足元では受託開発で培ったノウハウを元にパッケージ化を進め、中堅企業への縦展開も進めています。特に、LINEミニアプリが好調で、LINEユーザーであれば、別途ダウンロードすることなくアプリ機能を利用できる特長を活かして、公式アプリよりもライトなユーザー層に向けて、ポイントや来店履歴の管理を行う機能などを主に提供しています。
また、マーケティング支援の領域をより広範にカバーしていこうという戦略のもと、2018年に株式会社Qoilが当社のグループに参画しています。昨今では店舗・インターネット上の双方でスマートフォンアプリが重要な顧客接点となっているのですが、企業視点では、マーケティング施策は何もアプリの分野だけではありません。同社が加わることで店舗などリアル側の企画や制作といった領域を含め、販促支援をよりトータルでサポートする体制が構築できています。
さらに、OMO事業に次ぐ第二の柱とさせていきたいのが、新規事業として取り組んでおります「デジタル地域通貨事業」です。特定の地域でご利用いただけるスマートフォン専用のデジタル通貨で、サービス開始依頼、順調に推移してきました。足元では、コロナ禍でより地方経済の活性化がうたわれるようになり、時流も追い風となっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
まずは引き続きアプリ開発とその効果の最大化を追求し、業界ごとのノウハウをしっかりと蓄積していきます。特にアプリ開発は、小売店や商業施設、鉄道、金融機関などで、リアルでもお客様に商品を購入していただくためにはどの様な仕様にしていくべきか、という視点で進めていきます。
IT人材の需給バランスの崩れから他社も含め人材採用は年々難しくなってきています。その中で当社は、拠点がなくともフルリモートで働くことのできる体制を整えることで、地方採用を強化し、採用の対象者を拡大させてきました。今後は、M&Aの活用を含めて優秀なIT人材の確保を進めることで、体制面からも当社のプロフェッショナルサービスを一層拡大させていきます。
また、消費者だけではなく、店舗や顧客情報の管理を行うことができる、スタッフ専用の情報端末(従業員向けアプリ)にもビジネスを展開していきます。さらに、クライアント企業への支援を一層強化するため、例えば消費者の店内行動をデータ化するといった業務システムに近い分野にも裾野を広げていきます。当社のクライアント企業は、消費者とリアルな接点を持っているからこそ、まだDX化の余地が多く残されていると考えています。
また同時に、特に足元順調なフィノバレーでのデジタル地域通貨事業を中心に、新規事業の収益化を実現していきます。件数ベースではまだ10数件ほど導入された程度ですので、まずは日本全国、どこでも当社が支援するデジタル通貨が使われている状態を目指します。我々の一番の目的は「特定のエリアにおいて、この通貨が循環を続けることで、その先にある地域活性化支援に繋げること」ですので、成し遂げたい目的ために経済振興をサポートする自治体の数を増やしていくという考えです。
アプリ開発という側面では、「都度受注による、フロー収益が積み上がっていく会社」だ、という印象を受けるかもしれません。ですが当社は、「FANSHIP」を中心に現状でも42%のストック収益(23年3月期2Q実績)を積み上げていますし、先に申し上げました戦略を通じ、SaaS企業として今後も着実に伸ばしていきます。
投資家の皆様へメッセージ
スマートフォンアプリを活用したOMO領域のマーケティング支援においては、 黎明期からイノベーターかつリーディングカンパニーとして成長を継続してきました。また、DXという文脈では昨今の企業側のニーズは一段と高まっております。
当社は、さらに拡大していく市場で、引き続きリーディングカンパニーとして大企業を中心に取り組みを続けていきます。また、ビジネス的観点でもマーケティングツールの提供を通じ、ストック収益がしっかりと積み上がっていくモデルを作っていますので、ぜひ魅力的な企業と思って、ご興味を持っていただければ嬉しいです。
本社所在地:東京都港区麻布台1-11-9 BPRプレイス神谷町10F
設立:2008年8月29日
資本金:1,183百万円(2022年9月末現在)
上場市場:東証グロース(2015年7月16日上場)
証券コード:3917