※本コラムは2023年1月12日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ゲーム配信動画というコンテンツの確立を通じ、徐々にその価値を高めてきたeスポーツの業界において、その黎明期から市場形成の役割を担ってきたのがウェルプレイド・ライゼスト株式会社です。
代表取締役の谷田優也氏に会社組織の強みや業界の目指す姿について伺いました。
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社
eスポーツに関わるあらゆることをプロデュースする eスポーツ総合商社です。
創業の経緯
卓越したスキルを持つゲームプレーヤーが世間で評価をされていないことに疑問を持ったことが最初の起業の源泉です。
創業前はマーベラス社でゲーム制作に従事するとともに、個人的趣味の範囲ですが私自身もプレーヤーでもありました。
また、2010年頃からは当時はまだゲーム配信が普及をしていない中でしたが、有志で集まってインターネット上での格闘ゲームの配信も日本語・英語に対応する形で行なっていました。
そのような中で、到底想像できないような努力をして得た特出したスキルをもつ多くのプレーヤーと出会うとともに、彼らが世間的には全く良い待遇を受けていないということに気がつきました。
プレーヤーがプロになりやすい環境や、プロの方が長く活躍できる環境をつくるためには、まずはeスポーツというキーワード自体が当たり前になり、そしてこの領域に一生懸命取り組んでいる方々も当たり前に高い評価を受けるようになるべきであると考えました。
しかし、当時この分野に取り組んでいる会社はありませんでした。
そこで、誰かが始めてある程度整備されたタイミングで入るよりも、自分自身が最初の椅子に座る側に回りたいと思い、2015年に当社を創業いたしました。
設立当初はゲームメーカーが制作したコンテンツの価値を向上させる目的で、大会の運営やまだそのゲームを知らない人が見ても楽しいと思えるような、エンターテイメントを配信という形で提供する、イベント制作から事業を開始しました。
当時は国内よりも外資系企業が日本でゲーム展開する際の相談パートナーとしての需要が先行していたのですが、創業2年目のタイミングで転機が訪れました。
当時グローバルモバイルゲーム市場で売上トップのゲーム会社が日本法人設立と事業展開を開始するにあたり、その全ての施策を当社が担当することになったのです。
一気に業界内の認知度が高まり国内の複数のゲームメーカーとのお取引もここから徐々に広がっていきました。
また社内にノウハウが蓄積されたという点においても大きなターニングポイントとなっています。
また、コロナも一つの転換期であったように感じています。
業界を問わずオフラインイベントが次々と中止の発表をする中、我々も「ステイホーム」でエンターテイメントのコンテンツを主張する必要に迫られたのです。
この点、eスポーツは選手・解説者・視聴者のいずれも自宅から参加することができるため非常に相性がよかったのです。
それまでただのゲーム大会としてされていたものが、「オンラインコンテンツ」として視聴者もポジティブに見るようになり、その目線は大きく変わりました。
これに付随する形でネットコンテンツのPV数は倍増し、YouTubeで視聴可能なコンテンツの一つとしてゲーム配信がカテゴライズされ、世間からも認識されるようになったと実感しております。
事業内容について
事業は大きく3つあります。1つ目はクライアントワークと言いまして、eスポーツ大会やゲーム番組の制作といった、広くゲームに関連するコンテンツ制作を行う事業です。
ゲームメーカーやスポンサーである事業会社からの委託を受け、個別のニーズに合わせて行うフロー型ビジネスで、現在当社の売上のうち7-8割を占めています。
当事業における私たちの強みはゲーム演出の価値にあります。毎年数多のゲームが生まれるeスポーツ業界は、トレンドやファンの変化が目まぐるしいという特徴があります。
当社も年間20-30タイトルを扱っていますが、「このゲームのことをよくわかっているな」と視聴者が納得するコンテンツを制作すること、そしてそのクオリティを担保することが継続的に求められます。
当社ではあらゆるジャンルのゲームに詳しい方を採用し、特定のジャンルに精通する人が中心となって案件を獲得し、周りが支えるという体制を整備しています。
そして、これによりどのゲームであってもコンテンツの品質を担保することが可能となっています。
我々の演出に関しては他イベント会社からも評価をいただいており、競合ではなく協業パートナーとしての関係性を構築できています。
引き続き変遷していくゲームに対応できる多様な人材を採用していくことは、事業成長の一つの軸として見ています。
2つ目はパートナーソリューションでして、eスポーツに関わる方々の価値向上を目的とした事業となっています。
具体的には、プロチームへの協賛を希望するスポンサーとの間でエージェントの役割を担ったり、他イベント制作会社の番組へのキャスティングを年間500〜600件ほど扱っています。
また、近年では新ゲームやその周辺機器の発売の際のマーケティングにおいてもゲームプレーヤーやフォロワーが影響力のある存在となってきており、そのようなインフルエンサーマーケティングの依頼を受ける際の仲介も行っています。
加えて、コロナ禍でビジネススキームが出来上がり始めたのがクリエイターサポートです。YouTubeで収入を得る方が抱える様々な困り事を解決するためのサポート契約を結び、彼らの受け取る広告収益の一部をフィーとしていただく、ストック型のビジネスモデルです。
ゲームクリエイター特化型MCN※サービスとしてゲームプレイや実況などのゲームクリエイターの活動を多方面から支援しています。
- MCN(multi-channel network):YouTube上の複数のチャンネルと提携し、プロモーション、制作支援、視聴者の獲得や収益の分配など、契約クリエイターに対して様々な支援策を提供するサードパーティ サービスプロバイダのこと。
例えば、トップ層のストリーマーともなると月360時間という膨大な時間の配信をしています。
当然のことながら隅から隅まで全て視聴することはできませんので、面白かった部分などを抽出した「切り抜き動画」が使われることが増えています。
この切り抜き動画から適切に収益を獲得する手続きを代行したり、法人でゲーム配信を行う際に規約に則して広告主とクリエイターに収益を分配するといったことを行なっています。
3つ目はビジネスデザインでして、eスポーツを通じた自社イベントのプロデュースや、新規事業の創出を行っています。
創業以来、e スポーツ専業で会社を成長させてきた過程で徐々に事業領域の偏りがなくなってきており、当社に入社する方も多様なビジネス展開をイメージされて入っていただくようになりました。
例えば裁判官を目指しつつ、以前からeスポーツ業界にも関心があったという方がいるのですが、契約書やトラブル対応といったコンプラインス面をカバーできるなど、あらゆる職種がるつぼ化しているのが現在の我々の姿だと思います。
ゲーム業界以外のスキルが生きる社員が多方面にいるという点で、常に新たなトレンドにチャンレンジする際の大きな強みになっていると考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
上場を経て改めて思うことは、プロゲーマーの方が「このゲームをやってよかった」と思えるような、その方が自分の人生を後悔しないためのサポートをする会社でありたいということです。
例えばプロゲーマーの方が引退した後のキャリアの選択肢を拡充させることも我々の役割だと思っています。
引退後のキャリアの一つにコーチという選択肢がありますが、トッププレーヤー相手ではなくても、一般の方が今よりも少し上手くなるようにレッスンをする環境があり、またこれに対してコストを払うことが当たり前となる世界が、当社が願うeスポーツ業界の将来の姿です。
また、我々はゲーマーがかっこいいと思われる文化を浸透させるためのチャレンジを続けていく必要があると考えています。
事業戦略としては、まずはクライアントワークでeスポーツ市場におけるシェア拡大を通じた安定基盤を確立してまいります。
また、短期的にはパートナーソリューションにおけるクリエイターの数および価値の向上によりストック型収益を積み上げていく方針です。
ゲーム配信専門のMCNは当社のみであり、イベント制作などですでにクリエイターとの関係性が構築できていること、そして当社が本当に彼らの価値を向上させたいと思って取り組んでいるとご理解いただけている状態でアプローチができるという点が拡大における優位性です。
事業間の相乗効果を活かし、影響力のあるクリエイター・ゲーマー・インフルエンサーといったあらゆる方々のサポートを進めてまいります。
さらに中長期ではビジネスデザインにおける事業創出として、他業界との連携など、多様な可能性の中で大きなアップサイドを狙っていきたいと考えていいます。
投資家の皆様へメッセージ
企業やビジネスの成長には様々な見方があるかと思いますが、とりわけ今の時代は「可処分時間をどれだけ獲得できるか」が重要であると認識しています。
そして、特にZ世代を中心に、大人までもがゲーム配信動画の視聴にかなりの時間を使っているという事実があるのです。
さらにこれを生み出しているエンジンがeスポーツであり、派生したあらゆるエンターテイメントが創出されています。
こう見ると、eスポーツに対する見方も少し変わってくると思います。
現状でもこれだけ多くの人々の時間をある意味奪っているエンターテイメントがあり、そしてさらにこれを最大化しようと取り組んでいる上場会社としては、当社がファーストペンギンなのです。
だからこそ色々なチャレンジの過程で失敗もあると思うのですが、投資家の皆様には少し目線を変えていただくことで、当業界の面白さを感じていただき、応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都新宿区大京町22-1 グランファースト新宿御苑6F
設立:2015年11月19日
資本金:38,500,000円(2023年1月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2022年11月30日上場)
証券コード:9565