※本コラムは2023年1月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社テイツー代表取締役社長の藤原克治氏は、2017年の代表就任とともに事業改革を進め、衰退期にあった同社の業績を再成長期へと押し上げてきました。
リユース領域における強みや中長期の成長ビジョンについて教えていただきました。
株式会社テイツーを一言で言うと
リユースを通じて廃棄の抑止等、社会の課題解決に対応するESG創造企業です。
代表就任の経緯
新卒で株式会社東海銀行 (現株式会社三菱UFJ銀行) に入行し、8年後の2001年に転職Uターンの形で自由闊達な当社へ入社いたしました。正直申しまして、銀行時代の経験はあまり評価されず、ほぼ一般社員からのスタートでした(笑)。当初は総務・経理を中心に上場会社実務を学び、管理部門を担当していました。
また、グループの不採算事業立て直しにも従事し、事業の黒字化や事業再編なども経験しました。このように、担当者時代から経営にも近いポジションで携ってきたという経験を経て、2017年に現職に就任いたしました。
就任当初、当社は4期連続赤字の状態でした。そのため、まずは本業を見つめ直すことが何よりものミッションでした。我々のビジネスは数百円を地道に積み上げていく地味な商売です。私は店頭でレジもたたいたことのない本部スタッフでありましたが、長きに渡り末端の社員として働いていたという経験がありました。
原点回帰という意味では、以前から変えたいと思っていた会社の文化や現場の課題を改善していくことから取り組んでいきました。
直近ですと、やはりコロナウィルス感染症の影響は一つの転換点となりました。コロナ前の段階でも収益体制の改善は進んでいたのですが、まだまだ予算のゆとりがなく宣伝や販促を通じた発信は十分なものではありませんでした。そのような中で業界的には秋葉原や池袋のような都心への出店が好ましいとされていたのですが、「巣篭もり需要」により、家から近い距離にある当社のロードサイド店舗が社会で見つめ直されることになったのです。
これまで地道に積み上げてきた品揃えや売り場づくりが実を結び、多くのお客様に来ていただき、当社の店舗を知っていただける機会になったという意味でターニングポイントとなりました。一過性の出来事かとも心配していたのですが、店舗の業績は今も安定的に推移しています。
小売業として何としても出店は復活したいと考えていました。ただし、得意とする取り扱い商品のコンセプトでは、従来型の出店は厳しい状況が見えていました。それを打開するのが、コンビニエンスストアサイズの小型店の展開でした。コロナ禍の影響を受ける前ですが、信頼する営業役員と二人で京都の町を歩きながら「出店できそうな小さい物件がないかな」と散策したことを今でも思い出します。
そんな中、舞い込んできたのがショッピングモールへの出店オファーでした。リストラ渦中の大量閉店を経験したのち数年ぶりの純新規出店。投資回収に配慮しつつ、ロードサイド店で培ったノウハウを集約したこの小型パッケージ店舗は、従業員の大きな期待を胸に新たなチャレンジとなりました。
その後、ショッピングモールのニーズともマッチしたこの出店戦略は拡大し、現在に至っております。
事業内容について
本・ゲーム・トレカ・ホビー等のエンタメ商品を中心とした、実店舗での販売と買取、ECサービスを行っています。また、直近においては、自社の運営を円滑に行うために開発したトレーディングカードの自動読取査定機「TAYS(テイズ)」、デジタルサイネージ自販機「AIICO(アイコ)」の提供といったB to B事業も同業者様からの支持を受けて自然な形で拡大しております。
当社のビジネスモデルの主軸となるのはリユース事業ですが、新品・リユース品の両方を扱っている点は特筆すべき当社の特徴です。そもそも新品の売れ筋商品は、今日から欲しいだけ仕入れることができるというものではありません。言われてみると当たり前のことなのですが、長年の取引実績や信用に基づいてフェアな形で供給元から配分されます。
この点は、当社の隠れた強みです。これら魅力のある品揃えがリユース商品と重なりあうことで、当社の店舗は1店舗当たりの売上が相対的に見て高いという特徴を持っています。
リユース品については、当社は基本的に業者からの仕入は行っておりません。全て個人から集めています。そうした意味では、新品⇒リユース品の循環を商品の売買を通じた自店の力で実現しております。
また、当社の取り扱う商品は、価値変動が大きく、取り扱い困難なものが多く含まれます。売る値段、買う値段などの店舗運営のベースとなるマスターデータは本部で一括管理しており、これらリスクの高い商品を適切に扱う体制を構築していることも当社の強みといえ、このノウハウ提供もB to B取引での外販対象となっています。
ちなみに、当社は直営店主体の運営のため、商品コントロールにおいて絶対的な統制力を持っています。以上の要件が総合的に相まって他社との住み分けができていると考えています。
現在の当社の取り扱い商品は、本・ゲーム・トレカ・ホビーと多岐にわたっており、リユース商品の中でもエンタメ領域に比重をおいて、多くのお客様を囲い込むことに成功しています。
リユース市場が3兆円規模ともいわれる中でエンタメ領域は限定的であり、古着雑貨など取り扱い商品の多様化にチャレンジする姿勢も掲げ取り組んでおりますが、その点に関しては他社との連携も効果的な視点であると捉えており、具体的には同じスタンダード市場の株式会社買取王国様との業務提携に象徴されるように、お互いの得意を補完して時代に合った変化を遂げていきたいと考えています。
足元ではトレカ市場が急成長しております。20年来扱ってきた当社の得意領域のマーケット拡大は、業績への大きな追い風となっています。また、本は売上ベースでは全体の10%程度の構成比ながら、利益面ではまだまだ大きなシェアをキープしています。売場には多くのお客様が集うので販促費的効果も大きいです。私たちのお店は一見では理解しきれない複合的な魅力に溢れています。
リユース業界のトップリーダーであれば、より大きなマーケットの商品カテゴリーを追求すべきなのですが、当社はこれまで積み上げてきた独自ノウハウの活かし方を歴史に学びながら、自分たちの目線で新たな領域を追求することに拘って行きたいと思っています。
中長期の成長イメージとそのための施策
メインビジネスであるリユース店舗領域を拡大しつつ、EC領域の強化やBtoB領域への進出を通じ、従来型のビジネスからの転換を急速に進めてまいります。
まず、店舗領域については古本市場の小型パッケージ「ふるいち」を主軸として出店を進めていきます。もともと当業界には主に採算性の観点からも小型店の展開は主流ではありませんでした。
ですが当社は、先に説明したように多様なエンタメ商材を新品・リユース品の双方で提供可能であるという強みを活かしてこの戦略を実行していきます。ロードサイド店舗と比較しても固定費のリスクには大きな違いがあり、経営効率も良いものを形にできています。
加えて、先行企業として取り組んできた実績が、出店エリアの選定においても優位性を発揮している状況です。また、スタンダード市場の株式会社トップカルチャー様との20年来の合弁会社トップブックスによるFC店舗展開も進めることで低コスト出店が可能な「ふるいち」パッケージのブラッシュアップを図って行きたいと思います。
EC領域の「ふるいちオンライン」については、物流体制の整備とネットビジネスを拡張させるためのトータルバランスを見極めて、段階的に事業を拡大していく方針です。実店舗をもった状態でのEC領域着手ですので、基本的に店舗の在庫を共有するという観点ではバッティングする取組であり、EC領域を拡大するための革新は丁寧に対応していきたいと考えています。
ちなみに、子会社の株式会社山徳は、M&Aで合流したのちに当社の企業運営手法を取り込むことでさらなる進化を果たし、ネット専業のビジネスモデルとしては突き抜けた収益モデルを実践する重要なグループ会社となりました。
当社のEC領域へのチャレンジは、逆に山徳のノウハウが重要なポイントとなっており、既存事業を含めた総合的な改革を推進してまいります。
さらに、BtoB領域への進出については、自動読取査定機「TAYS(テイズ)」、デジタルサイネージ自販機「AIICO(アイコ)」を拡販し、新たな事業の柱として育成してまいります。トレカの扱いには難しい部分が多く、専門知識が無くても自動でトレカ査定を行うことができ、買取の効率化と店舗オペレーションの平準化が実現できるこちらの機器は、総合リユース系店舗を中心に多くの引き合いをいただいております。
現在特許も申請中ですが、価格に関する情報も長年の直営店舗運営のなかで形成されたノウハウの集積であると自負しています。当事業年度(2023年2月期)末までに累計契約件数が100件を突破し、来期からは本格的に業績貢献するよう期待しています。
投資家の皆様へメッセージ
ビジネスモデルや取り扱い商品だけを見ると古い業態だと思われるかもしれませんが、当社の事業はまさに時代を先取りしたリユース活動を通じて世界の人に感動と喜びを与えるSDGsの文脈にあります。
引き続き廃棄の抑止等、社会課題の解決に一層注力し、新たな取組が本業に彩を加え、持続可能でよりよい世界を目指す一員として社業の発展に取り組んでまいりますので、どうぞ当社を応援していただけますと幸いです。
本社所在地:岡山県岡山市北区今村650番111
設立:1990年4月
資本金:1億円(2022年8月31日現在)
上場市場:東証スタンダード(1999年9月14日上場)
証券コード:7610