※本コラムは2023年1月30日に実施したIRインタビューをもとにしております。
シリコンスタジオ株式会社はエンターテインメント業界での長年の実績と技術力を軸に、足元では製造業などの産業界においても3DCG専業のソリューションプロバイダーとしての地位を確立させています。
代表取締役社長の梶谷眞一郎氏にこれまでの会社の沿革や今後の成長戦略について教えていただきました。
シリコンスタジオ株式会社を一言で言うと
リアルタイム3DCG技術を強みに、ゲーム企業が抱える課題をソフトウェア開発、人材供給の両面からワンストップで解決する会社です。
代表就任の経緯
大学卒業後はゼネコン会社に3年ほど勤め、学生時代はまったく触ったことのなかったコンピューターでプログラミング業務にあたっていました。当時まだ1980年代でしたが、これからは絶対に軽薄短小のコンピューターの時代がくると感じるようになりました。
そんな中、学生時代の先輩から誘われゲーム業界に転職し、当社に入るまでの約25年間はゲーム業界で様々な経験を積んできました。当社には2011年に入社し、主に管理畑でキャリアを歩んできました。
2015年にマザーズ市場に上場を果たした頃は自社で運営していたスマートフォン向けゲーム事業が業績をけん引していました。しかし、その後スマホ向けゲームのヒット作に恵まれず、ゲーム事業が業績悪化要因となっておりました。
私が管理本部長に就任した2017年当時、スマホ向けゲーム市場においては、ゲーム内容の複雑化やグラフィックの高精細化により、ゲーム開発費が増大傾向にあったことからゲーム部門の売却を試みようという話になりました。
2018年3月に第三者割当による資本増強、2018年7月に株式会社クリーク・アンド・リバー社へ事業譲渡を終え経営立て直しへの道筋がついた2018年10月に代表取締役に就任することとなりました。
以後、プロジェクトマネジメント専門部署の創設や管理体制の強化など経営基盤の強化に取り組み、事業環境の追い風もあって業績をV字回復させるまでに立て直すことができました。本来会社である以上、取引先・社員・株主といったステークホルダーがいますので利益を出すことは重要です。それは当然のことながら、私としては会社の存在意義を大事にしながら経営を続けてきました。
取引先には我々のビジネスを快く思っていただき、感謝されて正当な利益を享受する存在でありたいですし、そのような我々の仕事が社会に貢献するように経営をしなければ変な方向に進みかねません。そのために、社員には当社で働くことに安心感をもってもらうことを大事にしています。
フルリモート勤務のエンジニアも多数いる体制の中で、いかに会社に一体感を持たせるかということは今も日々考え、実行しています。
事業内容について
一つはゲームなどエンターテインメント業界を中心としたクライアントへのリアルタイムCG技術を軸とした開発推進・支援事業です。具体的にはゲーム開発環境構築支援やミドルウェア製品の開発・提供、およびオンラインゲームネットワークの構築・運営などを行っており、8割近くがエンターテインメント業界のお客様です。
一方、昨今では製造業や建設業など産業界からの引き合いが増えています。建設機械も人間が乗って操作するのではなく、ドローンを飛ばして地形を測定し、その結果に基づいてコンピューターで動かすといった研究も始まっています。
このようにAIを賢くするためにコンピュータグラフィックスでシミュレーターをつくる技術や3DCAD※で作ったデータをエンジンに取り込み、物理シミュレーションをする技術は当社の得意領域です。
現状はまだ2割と限られた割合ですが、更には伸ばすことで当事業全体も成長していけると考えています。
- CAD(Computer Aided Design):コンピュータ上で設計や製図を行うツール
もう一つは人材事業でして、ゲーム・映像業界のクリエイター、エンジニアに特化した人材派遣・紹介サービス「シリコンスタジオエージェント」を展開しています。
CG関連の先端技術をゲーム業界向けに提供する開発会社である強みを活かし、2003年の事業開始以来、大手企業から新興企業まで大半の国内ゲーム関連企業と取引があり、業績は順調に伸びています。
2022年11月期からはミドル・ハイクラス人材向けサービスを本格稼働させ、有料職業紹介成約件数を押し上げています。事業開始当初は経験値の浅い当社の社員がキャリアアドバイザーを務めることに難しさもありました。
そこでキャリアアドバイザーの教育に力を入れ業界で伝説のプログラマーと言われるような方をお招きしてエンジニアやゲーム業界についての理解度を高めていき、今日においては開発現場や人材への理解度が当事業における強みの一つとなっています。
中長期の成長イメージとそのための施策
開発推進・支援事業においては、引き合いが多く仕事が選べる状況でありますので、技術力を活かした高付加価値案件の獲得による単価アップを実現してまいります。ゲーム業界では一定の知名度があると自負しておりますが、製造業、建設業など産業界ではまだまだですので見本市などに積極出展し新たなお客様との接点を増やすとともに、ウェブサイトでの事例紹介などコンテンツを充実させインバウンドでの獲得も増やしていければと考えております。
今後の成長のためにアライアンスの活用にも積極的です。2022年6月に産業界向けにゲームエンジン活用に関する協業体制を構築する目的で株式会社アルゴグラフィックスと資本業務提携を締結しました。双方のリソースを活用した営業・開発体制を強化するとともに、CGやゲームエンジンを活用したソリューションを自動車業界のみならず、様々な業界に向けて展開し、産業界におけるDX推進に貢献したいと考えています。
ミドルウェアについては、中国をはじめとするアジア圏でのモバイルゲーム向けで商機があるものと期待しています
昨今、世間ではDXやAIの文脈で様々なニーズが生まれており、また一方でどの会社もエンジニア不足に悩まされています。当社も開発リソース拡充のためのエンジニア採用を喫緊の課題としつつ、中長期的には自社製品の開発に注力することで、案件ごとの開発体制に比べ横展開が容易となり、事業成長が進み、さらに幅広いお客様の課題解決に貢献できると考えています。
人材事業については、現場・人材への理解度と業界内での強固な信頼関係を武器にミドル・ハイクラス人材向け有料職業紹介サービスで一層の成長を目指していきます。また、人材派遣サービスでも営業力を強化し人材派遣稼働者数を増加させることで業績成長を図ってまいります。
さらに中長期的な目線では、人材面からワンストップでクライアントの経営課題を解決できる総合型人材サービスへと進化させていきます。
開発推進・支援事業のうち8割がエンターテインメント業界からの売上というと、ゲームの売上が当社の業績にも関わると思われる方も多いと思います。ですがゲーム会社がBtoCのビジネスモデルであるのに対して当社はBtoBのビジネスモデルです。
言わば、縁の下の力持ちのような存在であり、研究開発をベースにクライアントに技術を提供し、彼らの底上げを図るような立場なのです。そのため、大ヒットしたゲームを担当しているから当社の利益も飛躍的に伸びるといった期待は我々の事業体とは少し異なります。
売上の沈みはあまりなく、安定成長を目指しています。そしてその堅実的な成長を蓄積された技術がこれからも支えていくとご認識いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
繰り返しになりますが、当社はリアルタイム3DCG技術をコアコンピタンスにして、技術的に難しいお客様の課題にもお応えできるテクノロジー企業です。
また、DXやAIといった文脈でも産業界に貢献していけるポテンシャルを持っていますので期待していただけますと嬉しく思います。
本社所在地:東京都渋谷区恵比寿1-21-3 NRビル
設立:1999年11月
資本金:466百万円(2021年11月末現在)
上場市場:東証グロース(2015年2月23日上場)
証券コード:3907