※本コラムは2023年1月31日に実施したIRインタビューをもとにしております。
会社設立18期目を迎える株式会社アビストはこれまで培った技術力を礎に新たな変革を進めるべく、2022年10月より新たな組織体制に移行しました。
今回は代表取締役社長の進顕氏に変化する事業環境に取り組む会社のビジョンや取り組みについて伺いました。
株式会社アビストを一言で言うと
デジタル技術を活用し顧客のニーズに応えるソリューション提案型企業を目指し、新たな改革の実行を進めている会社です。
代表就任の経緯
私自身、元々は食品系の商社にいたのですが、会社の統廃合を経験していく中で、今後の自分のキャリアやチャレンジしたいことを改めて考え、転職を検討していました。ちょうど同じ頃、当社は東日本大震災をきっかけに人々の生活に欠かせない水を扱うビジネスを始め、販売代理店として動き出しながらさらなる拡大を構想していました。
私は前職を辞める決意をしてそれを当時の代表(現会長 進勝博氏)でもあった父に報告したところ、アビストには飲料水など食品系を取り扱ったことのある人材がいないため手伝ってくれないかと相談を受け、2012年に当社への入社を決意しました。
かねてより親族は会社に入社させない方針がありまして、実際に親から頼みを受けたのもこれが初めてのことでした。海外に行こうとも考えていたのですが、親孝行の思いも込めて2012年に当社に入社いたしました。
入社当初は新規事業開発担当部長として、飲料水ビジネスの拡大施策を練りました。当時は九州地区の水を販売していたのですが、大消費地の関東・関西圏への輸送コストに持ってくる物流費を考えると採算を取るのが難しく、また九州地区だけでは事業規模が小さすぎました。
そこで付加価値がついたものとして水素水に目をつけ、一年後に株式会社アビストH&Fを立ち上げ、初代社長に就任いたしました。その後、2018年には常務取締役社長付新規事業担当、翌年の2019年には水素水事業も兼任しつつ世の中のトレンドを受けAIソリューション事業担当としても従事しました。
そのような中、自動車業界に100年に一度と言われた変革期が訪れ、地球温暖化対策としてEV化などに各社が注力するなど風向きが変化し始めたのです。特にコロナ感染症の影響を受けた2020年以降においては当社に求める得意先の要求値は高まり続けています。
従前はパートナーとして、取引先に常駐しながら新入社員の育成をしていただくこともありましたが、環境配慮設計やEV化など難易度の高いニーズに応えられる人材がいる企業に託す姿勢が強まってきたのです。このままでは当社の持続的な発展が難しいのではと話し合う過程で、ここで改革を進めるのであれば私が先頭に立ってそのスピードを早めることが好ましいのではという話になり始めました。
そこで、2022年の4月頃からある程度一任をさせて頂きつつ、10月からは正式に現職に就任いたしました。
これまでは先代が創業社長として会社の成長を牽引してきましたが、私は全く別の業界から参画しており、同じやり方では改革を進める意図も薄れてしまいます。
18期目を迎え、蓄積された多くの技術をどのように活用するかについては、現場の意見を大切にするべきだと考えています。我々が会社としてなりたい姿とバランスを見ながら、会社の方向性を決めていくのが私の役割だと考えています。
事業内容について
3D-CADを用いた自動車の機械設計開発やシステム・ソフトウェア開発がメインビジネスです。また、変革に伴う新たな取り組みとして、デジタル推進部門によるソリューション業務、また2022年10月に新設したイノベーションセンターにて、持続的な成長のための独自技術の研究開発も始めています。
その他、3Dプリント事業、不動産賃貸業、および水素水の製造販売を行なっています。
市況環境の変化から求められる技術レベルは向上し続けており、当社では若手技術者の教育に注力しています。2022年4月度入社の新入社員から、それまで3ヶ月としていた研修の期間を1年に変更し、全社統一の研修として3D-CAD、3Dプリンター等あらゆる部門を経験させるようにしています。
また派遣先の仕事の仕方も教えることで、社内および取引先双方の理解を深めることを目的としています。我々のビジネスにおいては人材が1番の宝であり、自分たちでしっかり教育して技術の底上げをすることで高いニーズにも応えられる技術者を育ててまいります。
また、これまでは当社のチームリーダーが3ヶ月の研修を経た新人の指導も兼任していましたが、1年間の研修を経た社員が加わることで、チームリーダーはまとめ役に徹し、チーム全体の底上げを図るという本来のあるべき仕事に力を注いでいただける体制の構築にも繋がっています。
このような取り組みも奏功し、直近では設計業務での請負案件が拡大し、社員一人当たりの売上高も上昇しています。特に自動車業界のメーカー各社様は、新技術の開発に注力したいと考えており、この要求に応えられる技術力を持つ存在として、当社を評価いただいていると実感しています。
我々の技術力は、これまで顧客の顕在化されたニーズへきめ細やかに対応してきた中で、取引先の状況なども理解し、開発面では同じ困難を乗り超えてきたことで蓄積されたものと言えます。
今後はこの実績を礎として、取引先の潜在的なニーズに気づき、独自技術の開発によってデジタルソリューションを提供することが求められます。当社の技術力を源泉に、新分野への投資も継続していきます。
中長期の成長イメージとそのための施策
現在、我々が強みを持つ設計開発分野を中心にソリューション提案を実施し、顧客の潜在ニーズに応える「デジタルソリューション企業」を目指してまいります。売上的には4年後の2027年9月期にて既存事業で100億円、新規事業で25億円を目標としています。
先般発表させていいただきました通り、中期経営計画の計画期間を3年延長いたしました。持続的な発展をしていくには人材を育成し、新技術を駆使したデジタルソリューション企業になることが必要です。その分時間も要しますが派遣請負だけの会社から本気で変革に取り組んでいく我々の決意の表れとご認識いただけますと幸いです。
基軸事業である設計開発分野においては、競争の激化と要求レベルの高まりを受け、付加価値創造によるさらなる発展を目指します。特に人材については、先ほど申し上げた新卒技術者の教育の抜本的改革を継続するとともに、中途でチームリーダーになれるような経験者採用も強化し、変化の激しい時代に確実に対応するための体制を整えてまいります。
さらに、国内にとどまらず積極的にグローバルで良い技術者を採用する取り組みも進めてまいりたいと考えています。また、変革に関しては対外的な発信と同時に社員への周知徹底も重要であると認識しています。
繰り返しになりますが、設計を基軸にしたデジタルソリューションを提供するという当社の中期ビジョンの共有を徹底し、既存事業では蓄積された技術を基に顕在ニーズにしっかりと対応しつつ、デジタルソリューションやAIの研究開発により独自技術を開発・提供してまいります。
まずは自動車業界で先行して取り組んでいきますが、このような新規技術の開発・提供の成功例がつくれれば、他業界にも展開可能だと考えています。実際、足元でも他業界からお話もいただくようになっており、これまで我々が取引先と一緒になって課題解決に向き合ってきたことが強みとなり、DX化や効率化の提案においても評価していただいているのだと実感しています。
実際に大手から当社への入れ替えの事案も出てきていますので、投資家の皆様にも少しずつ変革が進んでいることをわかっていただきたいと思います。
また、当社は「デジタルでものづくりに貢献する企業」を長期ビジョンに掲げていますが、時代の変化が激しく一社のみではそのスピードに取り残されてしまう可能性があります。既存事業の付加価値創造と新たな事業領域の拡大という観点で、ものづくり企業に優良なソリューションを提供できる技術をもった会社とは積極的に資本提携や事業提携などの協業を検討していきます。
さらに、国際的な競争力をつける意味でも開発拠点のグローバル展開も視野にいれていきます。現在の当社の設計が自動車関連中心であることから考えますと、ここから国が発展し、人口も増加するアジア圏が好ましく、その中でも当社のお客様がすでに進出している国が適切であると考えていますが、具体的な選定は国の成長度合いも見極めながら慎重に精査してまいります。
人材の国際色が豊かになることで、当社の提案やアイディアも豊富になることも期待しています。
投資家の皆様へメッセージ
中期経営計画の達成とともに、その先の持続的な発展のために何をするべきかを適切に見極め経営判断をしてまいります。流通時価総額100億円以上というプライム市場の上場基準を現時点では満たしておらず、投資家の皆様には不安に思われている方もいらっしゃるかと存じます。
当社のこれまでの堅実的な成長により蓄積された技術力と、強化された組織体制を強みに、さらなる成長を実現できるよう取り組んでまいりますので、ぜひ応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都三鷹市下連雀三丁目36番1号 トリコナ5階
設立:2006年3月17日
資本金:10億2,665万円(2023年2月アクセス時)
上場市場:東証プライム(2013年12月18日上場)
証券コード:6087