※本コラムは2023年2月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
大企業の購買・調達部門の立ち位置で、プラットフォームの提供を通じた付加価値(+α)の創出し、株式会社アルファパーチェスは堅実な成長を続けてきました。
そのユニークなビジネスモデルや成長可能性について、代表取締役 社長 兼 CEOの多田雅之氏に教えていただきました。
株式会社アルファパーチェスを一言で言うと
東証のプライム市場に上場するクラスの大企業に間接材購買のプラットフォームを提供する、ユニークなビジネスモデルを持つ会社です。
代表就任の経緯
当社は2000年11月にPEファンドにより設立された会社です。同社は日本での事業の一つとして日本の自動車部品製造の会社を何社か買収し、それを統合して競争力を高めた会社を持とうと考えていました。それ自体は実現しなかったのですが、買収を検討する際の一連の調査で、日本の会社においては特に間接材の購買工程については合理化の遅れが目立つことに気づきます。
そこで間接材の購買を扱っている会社の買収を考えるのですが、当時の日本には間接材でお客様と直接接点を持つ会社は小規模な企業が多く、適当な買収先はありませんでした。そこで、大企業向けに当領域でビジネス展開ができる規模の企業を立ち上げたというのが設立の経緯です。
初代社長が、私が前職で在籍していた日本鋼管株式会社(現JFEホールディングス株式会社)の先輩というご縁があり、お誘いを受け2002年に当社に入社いたしました。当時は設立後1年ほどでサプライヤーもお客様も少なく、売上もほとんどない状況でした。
私は経営企画部長、および営業本部長などの立場で需要に合わせたビジネスモデルへの変革に携わり、2006年、初代社長より引き継ぎ現職に就任いたしました。その後、2010年にはPEファンドの日本撤退が決まり、持ち株を現大株主であるアスクル社への売却し、現在に至ります。
当社は大企業向けに彼らの購買・調達部門の一員という立ち位置で関わることをビジネスの軸としてこだわり続け、ユニークな企業に作り上げることができたと認識しています。通販やeコマース事業者は多く存在しますが、「アマゾンエフェクト」と言われる大変革が起こっていて、競争が激しいこの領域で競争力を高めることは容易ではありません。
しかし当社は「購買」に特化することで立ち位置としては差別化されています。企業が間接材の購買に際して、やるべき手間やプロセスを当社が引き受け、より合理的かつ最適な購買(=パーチェス)を実現し、付加価値(+α)を提供するという意味で社名も「アルファパーチェス」と名付けています。
ITやeコマースの会社と違い、ビジネスモデル上、業績は少しずつ堅実に上がっていく傾向にあります。その中でもまずは2008年に半期黒字化を達成したことは大きな転換点となる出来事でした。実は代表就任時は債務超過に近い状態にありましたので、資金繰りの改善などの点でも、事業環境は大きく変わりました。
また、2010年にアスクル社のグループ傘下になったこともターニングポイントでした。事業会社同士長い目線で事業を語り合うことができましたし、双方にとって補完効果のあるWin-Winな関係を築くこともできました。上場後の現在も当社の株式を保有し続けていることも一つの証だと思います。
その後、過去10年では平均して12%の成長を継続しています。
事業内容について
MRO(Maintenance Repair & Operations)の購買に関わるさまざまなソリューションを、モノ・役務の双方で大企業向けに提供しています。
企業が購買に活用するプラットフォームですので、お客様から「購買版のAmazon」だと言われる事もあります。もちろんAmazonに規模では及びませんが、そうご認識いただくとイメージが湧きやすいかと思います。
現在、当社が独自に開拓した3000社以上のサプライヤーが常時稼働しています。これはプラットフォームを常にフェアな立場で運営してきたことで確立された事業基盤です。我々が考えているのはお客様にとって最適な購買を実現することであり、それを価格・数量・納期などの条件からお客様自身で選択いただけるような環境を整えています。
昨今通販事業者など、他サプライヤー様と当社システムとの連携も加速しておりますが、これもお客様のニーズにお応えするための施策です。創業以来20年をかけ、結果としては当社との取引がお客様の業績に貢献することを実感していただけていると思います。
企業間では購買部門同士での情報交換が良く行われているのですが、当社を既にご採用いただいているお客様が他企業にご紹介いただいているという事実にもこの成果が現れています。
サプライヤーの数が増えプラットフォームの競争力が高まれば、その分お客様の利便性が向上し、新たなお客様と取扱額も増え、我々のビジネスも成長する、このようなエコシステムが出来上がってきたことで、長い時間をかけても信頼関係を紡いでいくことが、当社の競争優位性を高める上では遠いようで近道であったと感じています。
このような経緯があり、プライム市場上場企業など既に2500社以上のお客様とお取引させていただいております。私が入社以来、20年以上お取引が拡大している先があるように、導入1年目からトップスピードで始まることはあまりありません。
各社で取引のフェーズが異なり、それぞれにまだ伸び代があるというのもまた、我々の強みです。 当社が何をやっている会社なのか、間接材の購買代行とは何なのか、まだピンと来ない方がほとんどだと思いますので、我々としては昨年の上場をこれからターニングポイントにしていきたいと考えています。
当社は間接材の購買改革を通じ日本の産業の変革と再活性化に貢献するという企業理念をもっていますが世の中にインパクトを与えるだけの規模には徐々に近づいていると感じています。
知名度・信頼度の向上とともに、サプライヤーネットワークの拡大、顧客基盤の強化、当社の実力の向上を含め、この理念の実現に向け、今まさに勝負をかけている時期と捉えていただければと思います。
中長期の成長イメージとそのための施策
新規顧客獲得、および既存取引先への商材拡充と企業グループ内での横展開による取扱高の拡大を通じ、売上の成長を実現してまいります。
新規顧客獲得については、我々が対象とするのは年間売上ベースで数千億円規模以上の大手企業グループになります。現在は年に2〜3の大手企業グループを新規顧客として獲得していますが、それから1グループ増えるだけでも加速度的な成長を実現することができます。
個社ごとにサービスカスタマイズもしており準備には一定の期間を要しますが、信頼関係を軸に着実に増やしていきたいと考えています。ビジネスモデルから見ても取引が始まるとそこから長期的に関係性が続くという意味で新規顧客獲得は事業成長のベースになる部分ですので獲得し続けることが重要であると認識しています。
このように当社のユニークな成長ドライバーとして、既存の顧客の取扱高が毎年増加していくという点が挙げられます。これを実現する一つ目の施策が商材の拡充です。これについては自社によるサプライヤーの開拓と、顧客が繋がりを持つサプライヤーを新規顧客開拓とともに増やすこともできます。
とある企業の実態調査をしたところ、間接材の発注金額は全体購買金額の3%程度に過ぎないのに対し、発注件数では30%を超えていました。汎用的で安価という特徴があり、その分発注件数が増えるため、我々のプラットフォームにアクセスする回数も必然的に多くなります。
そうするとお客様の方から、「この商材を購入できるようにして欲しい」というニーズもどんどん出てきますので、それに合わせて当社が拡充していくという形です。さらに我々にとって大変ありがたい事は、実際のお客様のニーズを伝えてサプライヤーと交渉できることです。
また場合によっては、当社のお客様が直接契約の場に立ち会っていただけることもあります。
もう一つの施策は子会社・関連会社への横展開です。お客様からしても一つのサイトで纏めると管理がしやすく、また集中購買のメリットも享受できます。ここについてはこれまでお客様自身がグループ内で口コミ的に紹介してくださるなど、取引実績が新たな取引を呼ぶことで拡大を続けてきました。
また、製造業はサプライヤーの協力会が存在する場合が多く、最近では資本関係がなくとも取引のある関係会社に、当社のシステムを推奨していただくケースも増えています。このようにお客様が主体となり自己増殖していく、このエコシステムが完成しつつあり、今後の成長の源泉となっていくと考えます。
加えてプラットフォームの強化にむけたIT投資をここ2、3年積極的に行っておりますが、今後投資をさらに加速・拡大し、プラットフォーム自体の競争力を上げていく方針です。
これは少し長期的な目線の話になりますが、企業の基幹システムパッケージとして大手製造業でも多く採用されている『SAP ERP 6.0』の標準保守期限が2027年で終了する予定であり、「2027年問題」として各社がこの対応について既に検討を始めています。通常、基幹システムと購買プラットフォームは連携運用されており、今回のシステム入替もしくはアップグレードの際には、高確率で購買システムの見直しもされると考えています。
ここに我々の大きなチャンスがあります。当社としては過去の実績と今のプラットフォームの競争力からもお声がかかれば採用していただける自信はありますし、足元では引き合いも出始めています。上場とこれからの事業成長で知名度を高め、このチャンスもものにしていきたいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
ユニークなビジネスモデルを提供し、我々のプラットフォームは日本を代表するような大企業に数多く採用いただいています。
また、一昨年と昨年は17%成長という高水準での売上の成長率を実現しています。
購買プラットフォーマーとしてのユニークなビジネスモデルで収益基盤を確立している点、そして今後さらに成長を加速していける会社であることに、ぜひ注目していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都港区三田一丁目4番28号 三田国際ビル15階
設立:2010年11月1日
資本金:523百万円(2022年12月31日現在)
上場市場:東証スタンダード(2022年12月26日上場)
証券コード:7115
記事の内容に関するお問い合わせ先:ir@alphapurchase.co.jp