※本コラムは2023年2月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
不動産業界のイメージや既成概念を自社事業の成長によって変革させてきた株式会社サンセイランディック。代表取締役の松﨑隆司氏に、これまでの会社の歩みや差別化ポイント、そして今後の成長構想を教えていただきました。
株式会社サンセイランディックを一言で言うと
人と人の未来を繋ぐ先駆者となることをミッションに掲げる会社です。不動産の権利調整などの既存事業にとどまらず社会問題の解決を目指す我々の事業には、人と人との関係が必ず介在していますので、これが非常に重要であると考えています。
代表就任の経緯
宅建を持っていたこともあり不動産業界に興味を持ち、1993年に当社に入社しました。入社当初は、社長秘書などを担当していました。
その後、営業部に異動し、課長、部長と経験を積んでいきました。入社からちょうど10年後の2003年に現職に就任し現在にいたります。
これまでを振り返りますと、大きな転換点は上場による信用力とブランド力の向上でした。
実は、私の代表就任前にも上場準備期がありまして、そのまま上場させることも可能な状況ではありました。
しかしながら役員として財務等含めた会社全体を把握することが最優先と考え、一度これを見送りました。その後、8年間にわたって会社の良いところ・悪いところを見極め、2011年に上場を果たしました。
この間、まずは底地*ビジネスの基盤構築に注力しました。個人レベルで蓄積されていたノウハウを会社全体で共有し営業力を強化するとともに、このビジネスを通じて、お客様だけでなく、地主様や仲介業者様にも喜ばれる存在となることを目指しました。
- 底地:土地を「使う権利」と「持つ権利」が分かれている状態の土地のこと。
このように、関わる方々全員に喜んでいただける商売をするために、社員全員が当たり前のことを当たり前にやるように心がけました。
これは「win/win/win」の関係として現在までも当社に残る大事なカルチャーとなっています。底地※ビジネスの面白さは、物件を売却されたお客様、購入いただいたお客様の双方に喜んでいただけることです。お客様に喜んでいただき、当社も収益をいただくというビジネスモデルになるよう、心がけてきました。
ただ、底地ビジネス自体ではなかなか差別化が困難な部分もありましたので、社員教育に力を入れることでオリジナリティを出し、成長に繋げることも意識してきました。
事業内容について
土地の利用価値の最大化を目的とした底地の買取・販売と、古いアパートやビルなどの収益性が低い物件(居抜き物件)を買い取り、権利調整を行った上で再度販売する居抜きがメインビジネスです。
- 詳しい事業内容はこちら:3分でわかる事業説明
底地はB to C領域が主であるのに対し、居抜きはB to B領域が主体となっています。売却時の収益の他、保有期間中は当社が購入した物件の賃料収入がストック収益として入ります。
当社事業の入り口となります不動産の仕入が足元では順調に進んでいます。理由としてはご紹介いただける仲介業者様との、会社同士の付き合いをより意識したことが挙げられます。
また、税理士や弁護士、金融機関などの資産管理に関わる様々な事業者様とのネットワークも強化してきました。例えば金融機関においては、我々の売買や管理といったビジネスを顧客サービスの一環として提供することで、本業以外の部分でも顧客からの信頼を得ることができ、これがまさに「win/win/win」の関係性になっています。
その他、社員のノウハウやコネクションを会社としてアセット化することによって、さらに効率的な営業体制が構築できたという点も挙げられます。
昨今の事業上の変化として、大型の居抜き物件や長期保有物件の割合が増加しています。従来は投資回収の期間を一年として不動産の調達から売却までを行っていましたが、中にはもう少し時間をかけることがお客様・当社の双方にとって好ましいような案件もありました。
こうした背景から、事業のクオリティを向上させる他、業績面での平準化を図れるといった効果も出てきております。引き続き早期に売却が可能な物件に関しては適宜前倒しするなど、バランスを重視することで事業上のリスク管理も強化されています。
そうは言っても期ずれを完全に防ぐことはなかなか難しいと認識しておりますが、ここについては強化された仕入力や、それにともなう在庫物件数の増加により、可能な限り対処していけると考えております。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社事業の市場規模ですが、事実として底地は年々減少しているものの2018年時点では約87万戸ございます。これに対して我々が年間で取り扱っている世帯数は400-500戸程度でして、我々が占めるシェアは他の業者と合わせても多くないという現状ですので、まだまだ開拓の余地があります。
また、居抜き物件に関しましては築30年以上の木造借家戸数が約160万戸あり、さらに新規で30万戸の賃貸用住宅が毎年着工されています。こちらは将来に渡って増えていくものですので、既存事業における成長の余地が十分にあると考えております。
在庫増加に伴いこれまで以上に販売が重要となりますので、お客様のニーズを的確に捉えた上で、迅速に対応するための組織体制の強化を進めてまいります。
具体的にはマニュアル化やDX化、および人材育成の仕組み化となります。何よりも社員1人1人のレベルアップが重要であると考えておりますので、問題点の洗い出しや改善がより早いサイクルでできるような育成体系を導入し生産性向上に務めてまいります。
また収益だけではなくお客様からの満足度など総合的な営業力での評価制度などの人事制度改革を実施し、社員が会社の理念を体現できるような環境づくりを目指していきます。加えて、意思決定を早くするという目的のもと、本部長に加えて副本部長も配置いたしました。丁寧に早くやることが重要であり、お客様側の喜ぶことを最大限どれだけの短い時間で実現できるかが、我々の重視する点です。
その他にも、地域ごとに異なる物件の特徴やニーズに合わせ、Webマーケティングを活用したPRの強化も行うことで、ビジネスの拡大を目指していきます。
我々の事業領域は、相続発生などでニーズが顕在化するまで意識しにくいところがあると思います。しかし、先ほど申し上げた市場規模からしても不動産に関連するお困り事を抱える、当社のお客様になりうる方々もまた多くいらっしゃいます。
そのような方々を一人でも多くお手伝いさせていただくには、底地に対する潜在ニーズを喚起するため、証券会社や銀行など、様々な業界とのパートナー関係を強化し、マーケット全体の広がりを持たせていくことも重要であると考えています。
また、事業領域を拡張させることでさらに強固な基盤を構築していきたいと考えております。
その一つがすでに岩手県八幡平市にて行っている観光活性化への取り組みです。人口減少に伴う空き家増加や後継者不足などの問題が地方では特に進行していますが、これらの地域には不動産会社もまた少ないという問題があります。
不動産の有効活用については我々のノウハウを活かすことができ、単に売買だけではなく不動産に関するあらゆるお困りごとを解決するという観点では「人と人を繋ぐ」という当社の理念に通ずるものがあります。またこれは社会問題として全国にある課題だと認識しておりますので、事例を作りながら横展開していきたいと考えております。
また、社員のアイデアを活かした新規事業の展開も進めております。その中でも、女性社員からの発案により、ライダーハウスの事業を展開することになりました。
ライダー向けの宿泊施設にはニーズがあるものの、クオリティの高い施設が少ないという課題がありました。そこで、よりクオリティの高い施設を提供することで、ニーズに合った新しいビジネスを展開することを目指しています。
今年中にオープンを予定しており、成功すればこれについても横展開していく計画です。立地が有効活用できる施設もあり、これもニーズが一致するところがあるため、八幡平の事業と同様に、地域のまちづくりに貢献することを目指しています。
これらの新規事業の展開により、多様なニーズに対応し社会に貢献していくことを経営ビジョンの一環としております。
投資家の皆様へメッセージ
当社は不動産に関する様々なお困りごとに対して、既存の権利調整だけではなく、街作りや自治体との連携を通じた災害対策のお手伝いをすることで、社会貢献にも取り組んでいます。どのビジネスにおいても、人と人との関係を築くことが大切であり、まさに当社がこれまでの歩みの中で注力し、強化してきたポイントであります。
ただ、特に新規事業については現段階で数値化するのが難しく、まだその成長可能性をイメージすることが難しいかもしれません。これからお示しする新規事業の展開によって、より多くの投資家の方に当社の強みを理解していただけるように努めていきたいと思います。
不動産業の既成概念にとらわれず、当社が取り組む課題や目標に注目していただけると幸いです。
本社所在地:東京都千代田区丸の内2-6-1 丸の内パークビルディング21階
設立:1976年2月
資本金:833,723,600円(2022年12月31日現在)
上場市場:東証スタンダード(2011年12月13日上場)
証券コード:3277